【レイキャビクIDN=ロワナ・ヴィール】
米軍は2006年に、アイスランドにあるケフラビク国際空港に附属する基地(同国南西端)を放棄し、撤退したとみなされていた。
しかし、マイク・ペンス副大統領の今年9月初めのアイスランド訪問、マイク・ポンペオ国務長官の2月の訪問といった最近の出来事は、それとは違う動機を明らかにしている。
ポンペオ国務長官は同国滞在中に安全保障問題について協議し、同国の祝日である6月17日には、「アイスランドは北大西洋条約機構(NATO)のゆるぎなき同盟国」であり、「アフガニスタンでの『確固たる支援任務』と『ISISに対抗する有志連合』にアイスランドが協力していることに感謝する。」との声明を発した。
ペンス副大統領の訪問に先立って、核兵器を搭載したB-2ステルス爆撃機がアイスランドに飛来している。米国の欧州空軍/アフリカ空軍の8月の報道発表は「アイスランドでの戦略爆撃機の運用によって、ケフラビク海軍航空基地をB-2の前進配備地として利用することが容易になり、ますます複雑化する安全保障環境において我が国とその同盟国に安心を供与し、抑止し、防衛するために、B-2が信頼性をもって関与し、準備態勢を整えることができる。」と述べている。
同爆撃機が、エンジンを切らずに航空機に給油することを意味する「ホットピット給油」の訓練のためにアイスランドに送られたことは明らかだ。
改革党の党首でアルシング(アイスランド国会)外務委員会の委員でもあるトールゲルドゥル・カトリン・ギュナルスドッティル氏は、この爆撃機が核兵器を搭載していないとの確認を同委員会は得ていないが、なぜそれがアイスランドにいるのか、核兵器を搭載しているのかを確認することが重要だと述べた。
2016年に策定されたアイスランド国家安全保障政策は、「軍縮と平和を促進するという我が国の国際公約に従って、我が国とその領海には核兵器が存在しない状態にしなくてはならない。」と記している。
アイスランドのグドゥロイグル・トール・トールダルソン外相との会談中、ペンス副大統領は、米国はアイスランドの防衛を強化し安全を確保する決意であり、ケフラビクの保安地帯はこの点で重要な要素だと述べた。
同氏はアイスランド滞在中、2006年の基地閉鎖決定は正しかったかとメディアから質問された。彼は直接答えず、同基地の職員と話をし、状況についてドナルド・トランプ大統領に報告したいと述べた。
米軍がアイスランドを撤退して以来、基地跡地のほとんどはハイテク産業のために再開発された。しかし、保安地帯となっている一部の土地は、依然として立ち入り禁止になっている。アイスランド沿岸警備隊の管轄下にあるが、ペンス副大統領の同国訪問に帯同した『ワシントン・ポスト』の記者はこの地区についてこう書いた。「灰色で窓がない。高度に安全が保たれている。ホワイトハウスの意向に沿って、軍やNATOの活動が多くみられる。」
ペンス副大統領は「司令センターを簡単に視察した。センターはアイスランドや北極海の空と海の動きを追跡するスクリーンであふれている。ここは、海軍ケフラビク航空基地の一部なのである。」しかし、記者団は立ち入りを禁じられ、「副大統領は機密情報に関するブリーフィングを受けることができた」。
アイスランドは、自らの軍隊は持たないがNATOに加入しており、1951年にアイスランド防衛協定に署名している(現在も有効)。トランプ大統領は最近、アイスランドはNATOの予算に十分貢献していないと不平を口にしている。
だが他方で、アイスランドは、基地跡地の保安地帯にある施設を更新して1000人の兵士が居住できるようにし、格納庫を2棟更新して2飛行大隊(戦闘機18~24機)を一度に収納できるように、3000億クローネ(33億7000万ドル)を拠出することを約束している。
この増強ははじめ、現在とは異なる政党が政権にあった2016年に議論され合意されたが、その詳細が明らかになってきたのは最近のことである。
現在、国会の第二党は、軍隊とNATOに敵対的な左翼緑運動党である。
2018年の文書によると、レイキャビクの米国大使館は「ケフラビク海軍航空基地が2006年に突如として閉鎖されたことで、米国・アイスランド関係は根本的に変わってしまった。米国はアイスランドの防衛に責任を持つ点で法的な縛りがあるが、その約束を物理的に表現する手段は消滅した。」
大使館は、金融危機以後のアイスランドの政治状況が「平和主義的な政治の傾向を強化」し、「現在の政府は、一般的に言って米国との緊密な連携を望んではいるものの、『左翼緑の運動』の指導層は、安全保障問題に関する米国やNATOの方針にあまり前向きではない。連立政権内でこの問題が微妙であることを特に認識したうえで、この領域におけるコミットメントを維持する綱渡りを強いられるだろう。」と述べている。
確かに、国会の中で唯一の反NATO政党である左翼緑運動党は、旧基地の一部分を再開発する予算を認めたことで、批判の嵐にさらされている。しかし、カトリン・ヤコブスドッティル首相がペンス副大統領に語ったように、彼らは反撃を始めており、旧基地の開発が将来的に進むようなことがあれば、まずは国会で民主的かつ透明な形で議論がなされねばならないだろう。同党は今後数カ月以内に、この方向での提案を出す予定でいる。
保安地帯を管轄するアイスランド沿岸警備隊は、海洋の安全や、アイスランド周辺の海洋の監視、法執行をその任務としている。安全や防衛の問題がこの地帯内で議論されたものの、ペンス副大統領はまた、ロナルド・レーガン大統領とソ連の指導者ミハイル・ゴルバチョフ氏が1986年に会談し、最近失効した中距離核戦力(INF)全廃条約への第一歩を築いた場所である「ホフディ」でも会談を行っている。
この場所でペンス副大統領は、レイキャビクのダグール・B・エガートソン市長と会談した。エガートソン市長は、INF条約の失効を「残念に思う」と述べた。その歴史を考えれば、エガートソン市長はこの建物を軍縮に関する議論を将来的に行う場所として提供したわけである。「なぜなら、もし核兵器の問題に関連して人々がふたたび協力することがあるとするならば、ホフディは最高の場所になるはずだ。」とエガートソン市長は説明した。
ペンス副大統領はこのアイディアを否定しなかったが、「もし新しい協定を作るならば、中国や、さらにはインドが議論に参加しなければならないと米国政府は考えている。」と語った。
トールダルソン外相との会談でペンス副大統領は、北極海におけるロシアの軍事行動の強化に懸念を示し、ヤコブスドッティル首相とも安全保障問題について話し合いたいと述べた。首相は、北欧貿易同盟評議会の会議に出席していたスウェーデンから戻って、すぐにペンス副大統領と会談した。
ペンス副大統領は後にこうツイートしている。「今日のNATO管制センターの訪問はとてもよかった!ケフラビク航空基地からのNATOの作戦に関するアイスランド沿岸警備隊司令官のすばらしい説明に感謝。
ヤコブスドッティル首相には別の大事な問題もある。アイスランドは北欧での軍備増強に反対する政策を掲げるだけではなく、気候変動やジェンダー平等、LGBTQ+の権利が政権の重要課題だと首相は述べている。ロシアの北極海における活動よりも気候変動の方が大事だという立場だ。(原文へ)
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This article was produced as a part of the joint media project between The Non-profit International Press Syndicate Group and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.
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