【ハバナIPS=パトリシア・グロッグ】
2008年キューバは活発な外交政策を展開し、実り多い成果を得た。2月にキューバの大統領に就任した前大統領フィデル・カストロ氏の弟ラウル・カストロ氏は初の公式訪問国としてベネズエラとブラジルを選び、ラテン・アメリカ諸国やカリブ海諸国と統合する意思を表明する一方で中国やロシアとの外交関係も維持する構えを見せた。
12月16日から17日にかけてブラジルで開かれた初の統合と開発に関するラテン・アメリカおよびカリブ海諸国首脳会議においてキューバは地域の21カ国が加盟する政治討議と調整フォーラムであるリオグループに正式加盟を認められた。
この地域が完全に統合を全うするにはキューバを排除している米州機構を解体し、米国の介入を受けないラテン・アメリカの組織を設立することが必要だと考えられている。1962年に米国の圧力を受けた米州機構はキューバが共産主義国であることを理由に同国の排除を決定した。メキシコ以外の中南米地域の政府はすべてキューバとの外交関係を断交した。
その後の50年間は1998年に当時大統領だったフィデル・カストロ氏が認めているようにキューバはメキシコを除いた地域の全ての国における武装革命運動を支援してきた。1975年に米州機構は加盟国にキューバとの外交、通商、領事関係を断行するよう求めた1962年の決議を修正した。これによりエルサルバドル以外の国々との関係は次第に正常化に向かうことになる。
1990年代には国連人権委員会でキューバを非難する姿勢がとられたため再び中南米諸国との対立が表面化した。メキシコとの関係においては2000年から2006年までのフォックス氏のメキシコ大統領在任期間中は険悪であった両国関係も後任のカルデロン氏が大統領に着任してからは親交が深まり、2009年には相互の公式訪問が予定されている。
キューバは現在ではエルサルバドルとコスタリカの2カ国とは領事関係を持つのみにとどまっているものの他の全ての中南米諸国との関係は良好である。また2008年の国連総会では米国による禁輸解除措置に対して多くの賛成票を(賛成185カ国、反対3カ国)得ている。
1990年代以来、キューバは医療や教育の分野で中南米、カリブ海諸国と協力を強化している。1999年に創設されたキューバの医大には中央アメリカの27カ国から集まった学生が学び、2005年には1612人の医師が卒業し、母国で非営利の活動を行うことを志している。このような姿勢はキューバによる地域貢献の証であるとして評価されている。フィデル・カストロ自身も武装蜂起は革命の目的を果たすのに、もはや現実的手段ではないと1993年に述べている。現在84歳のフィデルしは大統領職を辞し、与党共産党の第一書記を務めている。
ラテン・アメリカ諸国やカリブ海諸国と統合する意思を見せたキューバ現政権について報告する。(原文へ)
翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩