ニュースカザフスタン、宗教間対話の世界的拠点として台頭

カザフスタン、宗教間対話の世界的拠点として台頭

【アスタナINPS Japan=アイマン・ナキスペコワ】

民族間・宗教間の対立が高まる中、宗教・文化間の対話を促進してきたカザフスタン独自の経験が世界的に注目を集めている。世界伝統宗教指導者会議の第8回大会を前に、国際宗教間・宗派間対話センター議長顧問であり大使のブラート・サルセンバエフ氏が、アスタナ・タイムズとのインタビューで語った。

Bulat Sarsenbayev, Ambassador and Advisor to the Chairman of the International Center for Interfaith and Interreligious Dialogue

「カザフ首都が世界と伝統宗教の指導者の対話の恒常的な開催地、そして求められるプラットフォームとなったのは偶然ではない」と、同氏は述べた。サルセンバエフ氏は同会議の目標推進を担うコミッショナーも務めている。

この会議は2003年に創設され、普遍的価値の促進や宗教・文化・国家間の理解強化を目指している。キリスト教、イスラム教、ユダヤ教、仏教などの宗教共同体の支持を受け、短期間で世界的な対話の場として確立された。会議の間の活動を支えるため、事務局も設置された。

サルセンバエフ氏は「20年以上にわたり会議を開催してきたが、各大会はその時代が直面する課題を扱ってきた。だからこそ、これまでの7回はいずれも充実し、真に代表的なものとなった」と振り返った。

また、2022年の第7回大会でカシムジョマルト・トカエフ大統領から「2023~2033年の会議発展のためのコンセプトを策定せよ」との指示があったことを想起。2023年に事務局が採択したこの文書に基づき、「善意大使制度」や「青年宗教指導者フォーラム」を創設したと述べた。

過去20年間で、この会議は規模と範囲の両面で拡大してきた。初回の会議には17の代表団が集まったが、今年は100を超える代表団が参加すると見込まれている。

「世界と伝統宗教の指導者たちがこの会議に参加している。必ずしも最高位の指導者とは限らないが、それぞれの信仰共同体において意思決定を行える影響力のある人物たちだ。また、政治指導者や国家元首、国際機関の高いレベルでの関与も重要であることを指摘した」とサルセンバエフ氏は述べた。
議題の拡大
In an interview with The Astana Times, Bulat Sarsenbayev highlighted the roots of the Congress of Leaders of World and Traditional Religions, its new agenda, and the enduring importance of mutual understanding and dialogue. Photo credit: The Astana Times

第8回大会のテーマは「Dialogue of Religions and Synergy for the Future. (宗教間対話と未来のためのシナジー)」となる。サルセンバエフ氏は「対話だけでは十分ではない。共同行動こそが課題解決につながる。」と述べ、協働の重要性を訴えた。

第8回本会議に先立ち、9月15日の作業部会と16日の事務局会合で議題や手続きを最終決定する予定だ。事務局会合はカザフスタン上院議長のマウレン・アシンバエフ氏が主宰する。

Mr. Miguel Ángel Moratinos/ UNAOC
Mr. Miguel Ángel Moratinos/ UNAOC

サルセンバエフ氏はアシンバエフ氏の発言を引用し、「21世紀初頭に世界宗教指導者の英知によって、人類は『文明の衝突』というシナリオを回避できた。」と指摘した。

今回は並行イベントも拡充される。第2回となる青年宗教指導者フォーラムでは世代間の継続性を重視し、「宗教指導者は高齢者が多い。若いリーダーをこのプロセスに参加させたい。」と語った。

また、初めて専門家グループが招集され、独立した視点から宗教間対話を分析する。さらに新たな善意大使が任命され、国連文明の同盟(UNAOC)高等代表のミゲル・アンヘル・モラティノス氏が議長を務める宗教施設保護の特別セッションも行われる。

「第8回会議はより集中的であり、従来型の形式から脱却する新たな段階を示している。参加者を十分に巻き込み、次の行動を明確にするため、並行イベントを取り入れてプログラムを多様化している」とサルセンバエフ氏は述べた。
現代的課題への対応

同氏は、このフォーラムが世界の宗教間対話を「対立から理解へ」と転換させたと強調した。
「ここに集う人々は議論で争うためではなく、互いの立場を共有し理解するために来ている。それ自体が大きな成果だ」と述べた。

Photo: The 7th Congress of Leaders of World and Traditional Religions was held in Astana on 14–15 September 2022 Credit: Katsuhiro Asagiri, President of INPS Japan
Photo: The 7th Congress of Leaders of World and Traditional Religions was held in Astana on 14–15 September 2022 Credit: Katsuhiro Asagiri, President of INPS Japan

最も重要な成果の一つは、宗教指導者が一貫して「過激主義やテロは宗教と無関係」と明言してきたことだという。
「真の宗教は本質的に過激でも急進的でもテロ的でもない。そのようなレッテルを利用する者は信仰を悪用しているにすぎない」と語った。

さらに、デジタル化の進展による新たな課題も指摘した。

「多くの人々が仮想現実の中で生活し、社会の分断を招いている。精神性と道徳教育を守ることが極めて重要である。まさにそれこそが、このデジタル時代における宗教指導者の役割である。彼らは技術の専門家ではないが、精神性を担う存在なのだ」とサルセンバエフ氏は述べた。

サルセンバエフ氏は、会議を「世界の宗教指導者が共同体の灯台となる場」と位置づけ、その影響力は信徒にとどまらず、政府や議会の意思決定にも及ぶとした。

「平和とは単に対立がない状態ではない。対立は常に存在する。平和とは理解である。そして理解は、善意ある人々が解決を探り、橋を架け続ける努力の中から生まれる。それこそが本会議の本質だと私は信じている」と結んだ。(原文へ

INPS Japan

Origiinal URL: Kazakhstan Emerges as Global Hub for Interfaith Dialogue – The Astana Times

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