SDGsGoal17(パートナーシップで目標を達成しよう)2030年までの持続可能開発目標を支援する新たな統合的資金調達制度の構築へ

2030年までの持続可能開発目標を支援する新たな統合的資金調達制度の構築へ

【国連IDN=タリフ・ディーン】

2030年までに極度の貧困と飢餓を根絶することを柱とした国連の持続可能開発目標(SDGs)が資金調達面から大きな困難を抱えている。

SDGsは、ロシアのウクライナ侵攻による経済的影響、そして最も重要なのは、世界の富裕国と貧困国の双方に壊滅的な影響を与えているコロナ禍など、いくつかの要素が折り重なって、その実現が危ぶまれている。国連は、今年で既に3年目に突入した新型コロナウィルス感染症のパンデミックは、「国連の歴史の中で最大のグローバルな課題の一つ」と述べている。

新型コロナウィルスは600万以上の人々の命を奪い、依然として2030アジェンダの達成に向けた進展を暴力的に阻み続けている。2020年には1億人以上の人々が極度の貧困に陥り、それまで20年間続いていた貧困の減少傾向を反転させてしまった。

世界銀行は、今年は2.5億人が極度の貧困に陥る可能性があり、3億2300万人近くが深刻な食料不足に見舞われる可能性があると予測しており、まさにSDGsの最初の目標が消滅の危機にさらされている。

国連経済社会理事会の議長であるボツワナのコレン・V・ケラパイル大使は、「コロナ禍は、開発の進展に好影響をもたらしていた傾向にダメージを与えました。最も貧しく、脆弱な立場にある人々が、コロナ禍の悪影響を最も受けています。」と語った。コロナ禍による経済的衝撃、そして現在はウクライナ戦争によって状況はさらに悪化した。最貧国は多額の資金を借金返済に回し、コロナ禍への対応や、持続可能な復興支援への投資を行うことができずにいる。

国連の経済社会理事会(ECOSOC)が主催する3日間のSDGs資金調達に関するハイレベルフォーラム(4月26~28日)で、アミナ・モハメド国連副事務総長は、「SDGsは緊急の救済を必要としています。開発のための資金調達はその解決のための不可欠な要素だが、これまでのところ世界的な対応ははるかに不足しています。」と警告した。

2022 Financing for Sustainable Development Report: Bridging the Finance Divide (FSDR 2022)/ United Nations

国連が最近発表した『持続可能な開発のための資金調達:2022年版レポート―資金調達の格差を埋める』は、世界の最貧国の6割が、2015年の水準の倍となる債務苦に陥っているか、高いリスクを抱えていると警告している。途上国の高い債務返済コスト(金利は富裕国の最大8倍)は、既に脆弱な国家財政をさらに圧迫している。

SDGsには、質の高い教育、ジェンダーエンパワーメント、格差の是正、安価でクリーンなエネルギー、持続可能な都市いった目標も含まれている。

政府首脳、副大統領、外務大臣、開発協力担当大臣、大使などが参加した今回のフォーラムの最大の成果の一つは、統合的国家資金調達枠組み(INFF)が創設されたことである。INFFは、国連経済社会局、国連開発計画(UNDP)、経済協力開発機構(OECD)、欧州連合、イタリア・スウェーデン両政府が新たに共同で始めた新たに旗振り役となる取り組みである。

このファシリティーは、「国際的なパートナーを結集し、80以上の政府に対して、持続可能な開発目標(SDGs)に向けて重要な投資を行うための支援を調整し、拡大する」ことが期待されている。INFFの概念は、国連加盟国が2015年に「アジスアベバ行動アジェンダ」において初めて提示したものである。持続可能な開発のために官民による資金調達を強化する国家主導のアプローチである。

国連経済社会局(DESA)の劉振民事務次長は、「現在の危機への即時対応とより良い再建の両方において、INFFが重要な役割を担っていることは明らかです。」と語った。

Mr. Liu Zhenmin, Under-Secretary-General/ UN photo

「INFFの立ち上げは、適切な時期に行われました。今、私たちはこれまで以上に、金融格差に橋をかけ、最も必要とされるところを支援するためのパートナーシップを強化することに焦点を当てなければなりません。」と語った。

劉事務次長は、「グローバルな課題にはグローバルな対応が必要ですが、最終的には資金フローが保健、教育、インフラ、その他国レベルでのSDGs投資に充てられる必要があります。」と付け加えた。

UNDPのアヒム・シュタイナー事務局長も同様に前向きである。「2030アジェンダの実行に必要なだけの資金は世界に存在するが、その配分が適切ではない。途上国の人口は世界の84%を占めるが、世界の資本のわずか2割しか途上国には存在しないのだ。」

「このギャップを埋めるため、INFFは各国に対して、必要とされる技術、専門知識、ツールを提供して、革新的な資金の流れを可能にする大胆な戦略を実行することになる。各国はこれにより断固とした気候変動対策を採用したり、自然・識字・医療・衛生といった主要分野における未来志向の投資を行うことが可能になる。」

同フォーラムで首脳、閣僚、高官代表が採択した成果文書では、次のように警告している。「私たちは、十分な資金を動員することが、持続可能な開発のための2030アジェンダを実施していくうえで依然として大きな課題であり、進捗が国内および国家間で均等に共有されておらず、既存の不平等などがさらに拡大していることへの重大な懸念を表明する。」

「2030アジェンダとパリ協定の成功は、資源を調達し、さまざまなアジェンダが補強しあうための仕組みを作りだす私たちの能力にかかっている。」

「私達は、第3回『開発のための資金調達に関する国際会議』、及び、2030アジェンダの完全かつタイムリーな履行に向けて努力を強化し続けるという決意を再確認する。さらに、社会経済的な影響を初めとして、コロナ禍の影響と闘うための多国間協力と連帯を強化するというコミットメントを再確認した。」

「成果文書」へのリンクは次の通り。

一方、悪化する金融危機と戦う試みとして、国連のアントニオ・グテーレス事務総長は、「食料、エネルギー、金融に関する世界危機対応グループ」を設立した。ハイレベルの政治グループと称されるこのグループの目標は、「食料不足やエネルギー、金融をめぐる複合的な危機『究極の嵐』を抜け出すこと」にある。

Amina J. Mohammed/ UN Photo
Amina J. Mohammed/ UN Photo

モハメド副事務総長によると、「グローバル危機対応グループ」の最初の報告書は、「2022年持続可能な開発のための資金調達報告」と共に、次のような行動を即時取るように勧告しているという。

第一に、資金をあらゆる主体から迅速かつ柔軟に調達すること。

(1)国際社会は、政府開発援助の公約を履行し、長期的な持続可能な資金への迅速なアクセスを支援すること。

(2)国際金融機関は柔軟性とスピードを重視すること。迅速かつ不必要な条件を課すことなく資金を提供できる緊急金融メカニズムを即座に実行に移すこと。

(3)IMFのラピッド・クレジット・ファシリティ(RCF)及びラピッド・ファイナンシング・インストルメント(RFI)の利用限度額も引き上げ、累積的な制限を緩和すること。

(4)対外的に強い立場にある国々は、未使用の特別引出権を、IMFの「貧困削減と成長トラスト」や新たに設立された「強靭性と持続可能性トラスト」などを通じて、必要としている他の国に回すこと。

(5)新たな資本投下が、地域レベルも含めて多国間開発銀行のために必要とされている。

(6)多国間銀行は、国際市場において途上国が直面している高い資金借入コストの問題と、信用評価機関の役割の問題に対処する緊急措置を採ること。

第二に、「厳しさを増す債務のリスクの問題に対応する必要がある」。G20は債務支払猶予イニシアティブ(DSSI)を再稼働させ、満期を2年から5年先延ばしすること。

債務処理のための共通枠組みは、スケジュールの透明性とどのような債務をカバーすべきかを明確にすることを含む改革が、切実に求められている。また、債務サービスの支払い停止、債権者間の平等性確保の実施、民間および非パリクラブ債権者の加入を含める必要がある。

第三に、多くの国が依然として予測不可能なパンデミックに見舞われている中、コロナワクチンと治療法への公平なアクセスに投資する必要がある。

「コロナ対策への公平なアクセスを加速するための世界規模の協働の枠組み」(ACTアクセラレーター)と「COVAXファシリティ」に全面的に資金を提供する必要がある。各国は、このパンデミックを終わらせ、将来に向けて回復力を強化するために、技術的専門知識と知的財産を共有し、歩み寄らなければならない。

COVAX
COVAX

すべての国々が、雇用を十分に提供しながらの復興において、社会的保護と投資を提供・拡大し続けねばならない。

最後に、気候対策の資金調達を緊急に強化し、そのうちの半分を気候変動適応策に振り向けねばならない。

そのためには、国家予算や税制をSDGsやパリ協定と整合させ、グリーンウォッシングに対処し、国際金融システムにおけるインセンティブを見直すことも必要だ。

「私たちは、強い政治的意思、大望、リーダーシップに支えられたグローバルな連帯を必要としています。先進国は、途上国の気候変動対策に毎年1000億ドルを動員するという公約を早急に果たすべきです。」とモハメド副事務総長は付け加えた。(原文へ

INPS Japan

This article was produced as a part of the joint media project between The Non-profit International Press Syndicate Group and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

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