【モスクワ|キシナウIDN=スター・ケン・クロメガー】
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は、戦争で荒廃したウクライナから国境を越えて隣国のポーランド、バルト三国、モルドバ、ルーマニア、ハンガリー等に流出した難民数を約500万人を記録している。
UNHCRの統計によると、4月初旬の時点で、500万人以上がウクライナから逃れた。ポーランドには350万人近く、ルーマニアには58万6,942人、モルドバには38万1,395人、ハンガリーには34万9,107人の難民が逃れている。
2月24日に始まったロシアのいわゆる「特別軍事作戦」によって、ウクライナでは凄まじい残虐行為が横行し人道的状況が悪化しており、米国や欧州連合(EU)加盟国は支援を呼びかけている。
ウクライナ情勢を受け、欧州、特にポーランドやバルト地域では大量の難民が流入している。ロシアはウクライナと長大な国境を接しており、ウクライナはEUや北大西洋条約機構(NATO)への加盟を求めてきた。
ポーランド当局は、これまでウクライナで高まる人道危機を繰り返し指摘し、このままでは最大800万人の避難民が発生すると警告してきた。ルーマニアやウクライナと国境を接するモルドバ(面積は九州とほぼ同じ)にも、難民が流入している。モルドバはウクライナと同じくロシアが一方的に独立を承認した地域を領土内に抱えている他、ともに黒海に面している。
米国は、ウクライナ難民の流入による危機に対処するため、先にモルドバに約束した2000万ドルの援助に加え、さらに5000万ドルを提供すると、4月1日にモルドバを訪問したリンダ・トーマス=グリーンフィールド国連大使がモルドバのナタリア・ガブリリタ首相との共同記者会見で語った。
「最近、ウクライナ難民が流入する勢いはおさまってきている。しかし、難民数は既にモルドバの対応能力を超えており、私たちは難民がここから他の欧州諸国に直行できるようなトランジット回廊の設立を他の国々と協議しています。」とガブリリタ首相は語った。
ロシアのウクライナへの軍事侵攻が始まった2月24日以来、39万人以上がウクライナからモルドバに到着している。そのうち4万8000人の子どもを含む10万人近くがモルドバ領内に留まっている。
欧州連合はモルドバに対し、融資および助成金の形で1億5千万ユーロのマクロ金融支援活動を行った。「ブリュッセルで発表されたプレスリリースによると、「この支援は、現在の地政学的状況におけるモルドバの回復力を強化し、国際通貨基金(IMF)のプログラムに明記されているモルドバの国際収支のニーズを補填することに貢献するものである。
このマクロ経済支援は、モルドバの経済安定化と改革アジェンダを支援することを意図している。この援助は、2022年から2024年にかけて実施される予定。総額のうち、最大1億2000万ユーロが「有利な融資条件での」中長期融資として、最大3000万ユーロが助成金として提供される予定だ。
しかし、4月上旬、マイア・サンドゥ大統領は、モルドバは中立の立場を維持し、ウクライナ紛争をめぐるロシアに対する欧米の制裁には加わらないことを改めて繰り返した。隣国の紛争がモルドバの経済状況に影響を及ぼしているというのが、彼女の言い分である。
サンドゥ大統領は、「現在、ウクライナ、ロシア、ベラルーシの市場にはアクセスできていません。紛争の結果、これらの国々への輸出入は事実上ブロックされています。」と述べ、輸出入に関する規制が行われている可能性についてコメントした。
その上、モルドバはロシアからの燃料供給に強く依存している部分が多い。「天然ガスも電気も入手できない状態に国を放置しておくことはとてもできない。モルドバ国民のため、そして5万人の子供を含む10万人のウクライナ難民のためにも、そんなこと(=対ロ経済制裁に参加すること)はできない。」とサンドウ大統領は語った。
最新の動向としては、ロシアとウクライナの和平交渉がこの4月にもオンラインで継続している。ロシアの地元メディアは、プーチン大統領とウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領の具体的な会談日程を決める前に、合意文書のすべてのパラメータが徹底的に準備されると報じている。
様々な解釈や評価によれば、ロシアとウクライナは、ウクライナの中立的地位と安全の保障に関して、各々の立場を近づける可能性があるという。
国連、欧米諸国と国際社会は、ロシアが民主主義と独立国の主権、及び国際法を無視していると非難している。
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、NATOが(冷静終焉した東西ドイツ統一時に)東方拡大しないとした約束を守っていないことに危機感を抱き、連邦議会上院と下院の承認を得て2月24日にウクライナの「非軍事化」と「非ナチ化」を目的とする特別軍事作戦に乗り出した。
しかし世界の指導者たちは、すべての国が国際法を尊重し、その範囲内で行動しなければならないこと、そして、内政不干渉、国家主権と領土保全の尊重という原則に深く導かれる必要があると主張している。(この原則を逸脱した)ロシアは現在、米国とカナダ、欧州連合、日本、オーストラリア、ニュージーランド、その他多くの国々から制裁を受けている。(原文へ)
*モルドバは、ウクライナの首都キーウ近郊などで多数の市民がロシア軍によって殺害されていたことを受け、4月4日を追悼の日とし、首都キシニョフにある政府庁舎に半旗を掲げた。またモルドバには、1990年に一方的に分離独立を宣言し、ロシア軍が駐留している「沿ドニエストル地方」があり、ウクライナに侵攻しているロシア軍の動きを警戒している。
INPS Japan
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