SDGsGoal2(飢餓をゼロに)アースデイに考える食糧問題

アースデイに考える食糧問題

【サンディエゴ(カリフォルニア)IPS=エンリケ・ギリ】

先週末、世界中で“アースデイ”キャンペーンが開始され、芝生の上の集会からメディアが取り上げた企業スポンサーによる音楽イベントまで様々な催しものが繰り広げられた。 

1970年、米国において“アースデイ”がスタートした時には、地球温暖化もほとんど問題にされず、緑の革命により持続可能な食糧確保も約束されていた。 

しかし、農業科学技術国際評価(IAASRD)が発表した最近3年間の食糧安全保障に関する報告書によれば、“南北”農家の暮らしは悪化の一途を辿っているという。 

食糧および燃料価格の高騰や異常気象に直面し、もしIAASRDの調査結果が正しければ、今後数10年の間に持続性の中味が試されることになろう。

 同報告書は、2050年には30億人増加する地球人口を養うため、グローバル食糧ネットワークの変革が必要であると主張する。 

殺虫剤行動ネットワークの上級科学者でIAASRD報告書の著者の1人であるマリシア・イシイ・エイトマン博士は、同報告書は、各国政府および国際機関に対する警報と言う。 

同氏はIPSに対し、「地球の食糧システムの存続には、アグロ・エコロジー農業および平等公正な貿易が不可欠」と語った。 

同報告書はまた、食糧安全保障の前線に立つ活動家、NGO、科学者が提唱する基本に戻るアプローチが必要とされている。既存の投資集約的な大規模ビジネス農業はすぐに無くなることはないだろうが、世界の食糧供給を変える多くの画期的プロジェクトが進行中である。 

ガーデニング開発(DIG):病院食の質は悪いとされてきたが、西アフリカのある施設の場合、状況は特に酷かった。ピース・コー(平和部隊)の活動家でヘルスケア・ワーカーのスティーブ・ビリンジャーは、HIV/エイズ患者の容態が栄養不足で更に悪化するのではないかと心配した。そこで、同僚のサラ・コッチと共に、患者に基本的なガーデニングの技術と料理の方法を教えるDIGを思いついたのである。彼らは、セネガルの医療施設に3つのキッチン・ガーデンを作るところから始め、今では各ガーデンから月600ポンドの食糧を得ている。 

彼らはまた、強制移住により農村生活から切り離され、都市の中で失われてしまった技能であるホーム・ガーデンの作り方をセネガル都市居住者10数人に訓練した。ホーム・ガーデンは、持続性の源だけでなく、1日1ドル以下の生活を余儀なくされる家庭の補助収入にもなる。DIGは、南アフリカ、できればアジアの孤児院にも拡大の計画である。 

ブルックリンのティラピア:世界の魚需要拡大と伴に、魚の養殖がブームとなっている。喧騒の大都会に住んでいることにはおかまいなく、マーティン・シュレイブマン博士は、ニューヨークのブルックリン大学キャンパスで丈夫な魚、ティラピアを養殖する決心をした。もう何年もそうしている。シュレイブマン氏は、例えば打ち捨てられた倉庫などを養殖所に改造することで、ティラピアを地域の経済発展に役立てようとしている。 

ティラピアの養殖の利点は明らかだ。ティラピアは成長が早く病気に対する抵抗力も強い上、飼育するのに場所をとらない。この魚は肉食ではなく、鮭の養殖で問題となっている魚肉合成餌の使用をせずに済む。タンク内でティラピアを飼うことで、魚の糞が隣接地に流れ出すことによる汚染を回避できる。

輸入魚が安いため、シュレイブマン氏のティラピア・プロジェクトは、目下のところ広く受け入れられていないが、同氏は、魚の養殖が都市部の持続に貢献できることを証明した。 

オルガノポニコス:40年に亘る米国の輸出入禁止措置と1989年のソ連崩壊でキューバの経済は大打撃を蒙った。卵、肉、野菜といった必需品が不足。その上、キューバは、近代農業経営に必要な化石燃料、肥料、殺虫剤を輸入するための現金も無くなった。 

餓死を避けようと、キューバは、崩壊した全国のインフラストラクチャーから化石燃料、作物補助に頼らない食糧システムを生み出し、都市農業を開始した。 

今日、キューバには数千のオルガノポニコス、つまり低コストで安全な食品を生産する都市型農園が点在する。ハバナの食糧の多くは地元産で賄われている。この過程で、キューバは、堆肥、自然殺虫剤、益虫などを使用する基本回帰型の農業技術を復活させ、毎年確実な収穫を行っている。 

スマート品種改良:数十年に亘る研究の結果、科学者達は、病気、日照り、害虫に対する抵抗力といった長い間眠っていた特質を有する植物を発見している。遺伝子組み変えに頼らずに、これらの特質を生かしたり殺したりすることが可能である。 

農家は、数千年に亘り望ましい結果を生み出すため品種改良を重ねてきた。その結果、トウモロコシやリンゴ、トマトといった主要作物が生まれたのである。植物ゲノムのより良い理解によってこの作業のスピード化が図れる。ナデム・ケダーが初めてこの技術を導入し、つたで熟し、搬送の間は熟性を停止する新種のトマトである「ビーフステーキ・トマト」を誕生させた。 

これはトマトに限らない。長期の日照り、高温/乾燥に強い作物にスマート品種改良を加え実用化することが可能である。科学者達は、農業経営学者および食糧安全活動家の双方を満足させる方法で、強い作物を作りだす方法を追及している。 

“公共利益科学センター”(Center for Science in the Public Interest)のバイオ技術政策部長でIAASTD報告執筆者の1人であるグレッグ・ジャフィー氏は、「生産の面では飛躍的な進歩があった。しかし、いわゆる農業産業が大きな位置を占めており、現在および将来の食糧維持のためには、持続性へのより大きな配慮が必要だ」と語っている。 
 
南北間の不平等な農業技術移転や貿易が継続されれば、地球全体の食糧需要が増大する中、生物多様性や自然保護の面で、これまで保護されてきたものの多くが失われる。アースデイを祝う人々は、この事を忘れてはならない。(原文へ) 

翻訳=IPS Japan浅霧勝浩

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