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ニュースクーデターの指導者たちは国連演説に正当性を求めようとしたのか

クーデターの指導者たちは国連演説に正当性を求めようとしたのか

【ニューヨークIDN=タリフ・ディーン】

最近のミャンマーにおける軍事クーデターやヨルダンの宮廷クーデター未遂は、かつて多くの国、とりわけアフリカ、ラテンアメリカ、東南アジアにおいて、軍がクーデターで政権を掌握した時代を彷彿とさせるものだった。

少なくとも一人の政治指導者(タイ王国首相)が、国連総会に出席中に政権の座を追われた。演説を終えた首相は、突然ホームレスで帰る祖国がなくなり、とある中東の国に亡命申請することになった。

この中東の国はそれまでにも国を追われた政治指導者らを数人受け入れてきた実績があることから、ある新聞社は、その国の空港ターミナルの到着ラウンジには、「VIP及び追放された世界の政治指導者専用」を書かれたエクスプレスレーンがあると揶揄する漫画を掲載したものだ。

UN Secretariat Building/ Katsuhiro Asagiri
UN Secretariat Building/ Katsuhiro Asagiri

また、国連会期中に一国の首相が追放される事態を目のあたりにしたある政府関係者は、国連を訪れるすべての政治指導者に皮肉を込めて、国連訪問中に本国でのクーデターを防ぐためにも、「国連代表団にはもれなく自国の陸海空の長官も加えるべきだ」とアドバイスする一幕さえあった。

残念ながら、軍事クーデターには、多くの人命損失が伴うものだ。ミャンマーの国連カントリーチームは、「2月1日の軍事クーデター以来、引き続き人命が失われていることに深い懸念を抱いている。」先週時点で、拘留中の人々も含めて少なくとも224人が治安部隊により殺害されたとされている。しかし、国連人権高等弁務官事務所によると、女性や子供も含む数百人が重軽傷を負っていることから、実際の犠牲者の数は250人を上回っているとみられている。

ミャンマー以外では、今年2月に、ハイチとアルメニアで2つの無血クーデター未遂が発生している。いずれも支持が広がらず政権転覆には至らなかった。

最近出版された国連に関する本に、歴代国連事務総長のなかで唯一コフィ・アナン(1997~2006)氏が国連総会に対して、非民主的な手段や軍事クーデターで政権をとった政治指導者を国連総会で演説させないよう強く働きかけたエピソードが詳述されている。

ある国連高官が言うように「軍事指導者らは国連総会で演説することで自らの正当性を求めているのだろうか。」

2004年にアフリカ連合の前身にあたるアフリカ統一機構(OAU)がクーデターの指導者をアフリカ首脳会議に出席させない方針を発表した時、アナン事務総長はこの決断を世界各国の軍事独裁者を罰する未来のモデルケースとして評価した。そして、この考えを一歩進めて、国連の最高決定機関である国連総会がOAUの決定を良き前例として、軍事政権の指導者に総会で演説することをいつの日か禁止するようになることを望むと語った。

アナン事務総長の提案は史上初のものだったが、事務総長ではなく加盟国が支配する国連で採用されることはなかった。しかしアナン氏のこうした動きにより、国連に駐在する外交官らは、いつの日か自らが軍事指導者が率いる本国を代表することになりはしないかという思いに苛まれることになった。

Joint Special Envoy Kofi Annan spoke with the media at the United Nations Office at Geneva following the June 30, 2012 Meeting of the Action Group for Syria./ By US Mission in Geneva -, Public Domain

ガーナ人で歯に衣を着せないアナン事務総長はまた、「道路や医療体制が崩壊しつつあり、子どもたちが通う学校には本も机も教師もいない、そして電話も通じないような状況でも、数兆ドルもの公的資金が一部のアフリカの政治指導者らによって隠匿されている。」と語った。また、民主的に選出された政権を軍事力で転覆させたアフリカの政治指導者らを激しく非難した。

言うまでもないことだが、国連は「慈悲深い独裁者」と「無慈悲な独裁者」の区別をしない。しかし、日頃複数政党制民主主義と自由選挙を説き勧めている国際機関として、国連は今でも、国連総会の期間中は軍事指導者に対しても接待し、議場で発言することを許可している。

パレスチナ解放機構の指導者ヤ―セル・アラファトは国連で演説をしたが、イラクのサダム・フセインやシリアのハフェズ・アルアサドやバシャール・アルアサド親子、北朝鮮の金日成や孫の金正恩といった最も論争の的になっている独裁的な指導者らは、国連で演説するには至っていない。

スーダンの前大統領オマル・ハサン・アル=バシールが戦争犯罪で起訴されたとき、米国にビザを拒否され2013年9月の国連総会ハイレベル会合に出席できなかったことがあった。当時の国連スーダン政府代表部は国連法務部に対して、「民主的に選ばれた大統領が、国連―米国間の合意に違反して米国がビザの発行を拒否したために国連総会に出席する機会を奪われた。」と申し立てた。

一方、国連総会で演説した軍事指導者の中には、キューバのフィデル・カストロ、リビアのムアンマル・アル・カダフィ大佐、マリのアマドゥ・トゥマニ・トゥーレ(1991年のクーデターで政権を掌握したが後に大統領に選出された)、ガーナのジェリー・ローリングス(1979年のクーデターで政権を掌握し前政権の首脳を処刑したが、後に民主的な選挙で民間の大統領として選出された)などがいる。

かつてインターナショナル・ヘラルド・トリビューンが指摘したように、ローリングスは「アフリカの元軍事指導者の中で、史上初めて、有権者に複数政党制の下で自身の後継者を選ばせた人物だった。」

Jerry John Rawlings

一方、カダフィ大佐は2009年9月に国連総会への歴史的初訪問を果たした。ロンドン・ガーディアン紙は、カダフィ大佐が一般演説を行った際の模様を「カダフィ大佐は、国連総会での15分間の持ち時間を6倍以上も上回る1時間40分にわたる演説を強行して、国連主催者側を失望させた。」と報じている。

ガーディアン紙はさらに、「カダフィは風変わりかつ残忍で極端な言動をする人物という評判のとおり、各国代表団の前で国連憲章を投げ捨てたり、国連安保理をアルカイダのようなテロリスト組織呼ばわりしたり、イラク戦争の責任を負わせるためジョージ・ブッシュ大統領やトニーブレア英首相を裁判にかけるよう呼びかけたり、アフリカの植民地に対する補償として7.7兆ドルを要求したり、豚インフルエンザ(2009年新型インフルエンザ)はワクチンを売るために軍の研究所で造られた生物学兵器だと主張したりした。」と報じた。

2020年10月、ニューヨークタイムズは少なくとも10人のアフリカの文民指導者が権力の座から降りることを拒否し、大統領任期を3期目や4期目、中には生涯権力に留まるために7期目を可能にするような憲法改正に着手した、と報じた。

こうしたアフリカの指導者にはギニア(3期目に立候補中)、コートジボワール、ウガンダ、ベニン、ブルキナファソ、中央アフリカ共和国、ガーナ、セイシェルの大統領が含まれる。現職の大統領が退陣するのはニジェールのみである。

タイムズ紙は、全ての軍事クーデターを非難して、ギニアビサウのウマロ・シサコ・エンバロ大統領の「3期目はクーデターと同じだ。」という言葉を引用した。

先週(4月19日)、「アフリカ最長の独裁者の一人」と称されるチャドのイドリス・デビ大統領が(反乱軍との銃撃で)急死し、息子で37歳のマハマト・イドリス・デビが新大統領に就任した。しかし、4月24日のニューヨークタイムズ紙によると、チャドの野党はこれをクーデターと非難している。なぜなら、同国の憲法によれば、現職の大統領が死亡した場合は、新たに選挙が実施されるまで国会議長が暫定大統領を務める規定になっているからだ。

Photo: Idriss Deby Itno who died on April 20. Source: Afrik.com

タイムズ紙はまた、東南アジアの一部の国々も軍事独裁体制が敷かれていると指摘している。

前回のクーデターの首班で元陸軍司令官のプラユット・チャンオチャは、現在も政治的に不安定な同国の首相の地位にある。カンボジアでは、アジア最長の与党指導者と称されるフン・センが政治王朝を打ち立てている。そしてフィリピンでは、ロドリゴ・ドゥアルテが数千に及ぶ超法規的殺人の指揮を執っている。

米国は中国の権威主義的な政権がイスラム教徒のウィグル族その他の少数民族や宗教的少数派に対してジェノサイドを行っているとする公式見解を発表した。

報道によれば、東南アジアのある国で、長期にわたって権威主義的な政権を率い、選挙操作でも知られるある大統領は、「私は投票する権利を付与すると約束はしたが、それらの投票を数えるかどうかということについては何も言っていない。」と語ったという。」

一方ロシアでは、CNNの報道によると、ウラジーミル・プーチン大統領が自身の任期を最大2期伸ばして2036年まで続投することを可能にする法改正案に署名した。

4月上旬、ソマリア議会の下院は(今年2月に任期満了を迎えている)大統領の任期を2年間延長する決議を行った。ソマリア上院はこの決定は違憲だとして、国際社会の介入を求めている。

これについてコメントを求められた国連のステファン・ドゥジャリッチ報道官は、先週記者団に対して、「私たちは最新の動向を見てきました。私が今言えることは、国連はソマリアで起こっていることに深く憂慮しており、現在、事態の推移を精査しているところです。」と語った。

またドゥジャリッチ報道官は、ミャンマー情勢について議論した最近の東南アジア諸国連合(ASEAN)の会合について、「ASEANは国際社会が望む、ミャンマーに民政を復帰させるという目標を実現するうえで、大変重要な役割を担っている。」と語った。(原文へ

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