【 アチャム郡=ダヌ・ビシュワカルマ】
2016年12月20日、ネパールの西部に位置するアチャム郡のティミルサイン村に住む45歳のダマラ・ウパディヤが、生理中という理由で窓のない小屋に隔離され、寒さをしのぐために焚いた火の煙で窒息死した。
同じ日、同郡のガジャラ村の15歳のロシュニ・ティルワさんが「チャウ」と呼ばれる「生理小屋」の中で窒息死した。
2018年1月11日、アチャム郡のトゥルマカドのガウリ・ブダさんがチャウ小屋で窒息死した。
2018年6月10日、22歳のパルバティ・ブダが生理小屋でヘビに咬まれて死亡した。
2018年6月18日、バージュラ郡のアガウパニ村で、35歳のアンバ・ボハラさんと幼い息子のスレシュくん、ラミットくんが、生理小屋の火災で死亡した。
2019年12月1日、22歳のパルバティ・ブダ・ラウトさんが生理小屋の中で窒息死した。警察は彼女を小屋に強制的に追いやった義理の兄を逮捕し、裁判所は彼に45日の禁固刑を言い渡した。
そのパルバティ・ブダ・ラウトの悲劇的な死の後、カトマンズの内務省は、全国的な怒りを受けて、カルナリ州とスドゥルパシム州全域で生理小屋の撤去運動を開始した。
同省は2つの州の19の郡に対し、すべての生理小屋を捜索し、破壊するよう指示した。1万棟以上の小屋が壊され、そのほとんどがアチャム郡にあったと報告され、100の地方自治体が「チャウ・フリー」を宣言した。
しかし、パンデミックの後、多くの小屋が再建された。地元の人々は、月経中の女性は不浄であり、家にいることは、収穫の失敗や病気、家畜の死といった神の怒りを招くと信じているからである。
アチャム郡のセルパカ村に住む40歳のトゥリ・サウドさんは、何十年も生理中は生理小屋で過ごしてきた。現在、彼女には2人の娘と2人の義理の娘がいるが、全員が毎月、生理中の5日間、裏庭にある同じ小屋で過ごす。
その小さな小屋には窓がない。土の床はモンスーンの間ずっと湿っており、藁で覆われている。同時に月経になることが多く、トゥリさんと家族の他の女性たちは狭くて暗い空間を共有しなければならない。
アチャム郡の生理小屋取り壊しキャンペーン中に、トゥリさんの月経小屋も取り壊された。彼女は村の他の小屋の破壊にも協力した。
しかし、チャウパディの習慣や月経にまつわる汚名を改めることは、生理小屋を破壊よろも遥かに難しかった。トゥリさんが生理になったとき、彼女は以前生理小屋があった場所にテントを張って5日間過ごした。
結局、テントは居心地が悪いので、一家は別の泥と藁葺きの小屋を建てた。トゥリさんが恐れているのは、生理小屋に自分を隔離しないと、家族の誰も家に入ってこなくなり、自分が作った料理も食べられなくなるのではないかと心配している。
実際、同調圧力は社会全体からだけでなく、生理の不浄ついての迷信を信じている村の年配の女性たちからきている。
「村の他の女性たちが生理小屋に行くのをやめるなら、私もそうするつもりよ。」とトゥリさんは言う。「閉経が待ち遠しい。」
トゥリさんの隣人である40歳のデウサリ・アウジさんも小屋を再建し、そこで生理期間を過ごしている。彼女は5人の子供を出産した後、それぞれ数週間、その小屋で過ごした。出産直後の母親もこれらの小屋に隔離される。
「これは私たちの習慣であり、もしそれをやめれば近くのお寺にいるカーリー女神を怒らせることになる。」とアウジさんは確信を持って言う。
アウジさんは、母親と義理の姉が同じ時期に生理になると、狭い小屋を共有している。「息をするのも眠るのも大変です。でも、私たちはその苦難に耐えなければならないのです。」
女性たちの多くの死は、山間部の厳寒の冬の中、窓のない閉ざされた空間で火を焚くため、窒息が原因で起こっている。
ラム・バハドウール・サウドさんの妻と娘は、4年前に家族の生理小屋が取り壊された後、家の中で生理期間を過ごすようになった。しかし、彼の家族は村人から村八分にされたため、彼は取り壊された小屋を再建せざるを得なかった。
カマルバザール郊外に住む14歳のニシャ・ネパリは、学校でリプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)について学び、生理を小屋で過ごすことのリスクを学んだ。しかし、彼女は毎月生理期間の5日間、家族によって小屋に隔離され、学校に通うことができないでいる。
「小屋には明かりがないので、宿題もできません。」と、家族でネパールに戻る前はインドで育ったニシャさんは言う。
地元の教師であるスリジャン・ダカル・クンワルさんは、女性たちが近くの寺院の神々を怒らせることができないと固く信じているため、生理小屋に自らを隔離し続けていると説明する。
アチャム郡に住むカドガKCは、政府によって古い生理小屋が取り壊された後、怒りを感じ、2人の義理の娘のために新しい小屋を作った。
KCはシャーマンであり、生理中の女性に触れると健康を害すると信じており、一度生理中の女性に触れられたことが自分の慢性的な病気の原因だと考えている。
「誰が何を言おうと気にしない。私の家の生理小屋はここにある。」と彼は言う。「なぜ自分の神の言うことを聞かずに、他人の言うことを聞かなければならないのか。」
チャウルパティ村のバサンティ・サウドさんのような地元選出の役人でさえ、月経期間を家族の生理小屋で過ごし、実際には以前よりも状況が良くなったと信じている。
サウドさんはその理由をこう語る。「私たちの小屋が取り壊される前は、小屋は遠くにあったのですが、今はそうではありません。今はどの家族も自分の小屋を持っています。」
アチャム郡のチーフ・ディストリクト・オフィサーのシバ・プラサド・ラムサル氏は、法律や取り壊しキャンペーンだけでは、深く根付いた信仰を変えることはできないと認めている。そのため、彼の事務所は迷信に対する意識を高めることに集中している。
アチャム警察署長のイシュワリ・プラサド・バンダリ氏は、小屋の取り壊しを再開し、再建されないようにするためには、コミュニティの支援が必要であることに同意している。
活動家たちは、生理小屋に隔離されなくても、ネパール全土の多くの女性が教育を受けた家族でさえ、何らかの形で差別や汚名に苦しんでいると指摘する。生理に対する差別は犯罪であるだけでなく、女性の深刻な健康リスクでもある。
栄養士のアルナ・ウプレティさんは、産後や生理中の少女や女性に牛舎での生活を強いることは、事故や感染症を引き起こしやすく、バランスの取れた食事が必要な時期に栄養不足になりがちだと言う。
根深い文化的信念は根絶するのは難しく、州政府や地方政府も社会的な反発を恐れて抜本的な改革を推進することに消極的である。抑圧的な月経差別が最も蔓延している地域は、ネパールの首相を5度務めたシェル・バハドゥル・デウバ氏のような有力な政治家の選挙区でもある。
尊厳ある活動家であるラダ・パウデル氏は、この慣習を終わらせるためには地方政府が動員されなければならないことに同意している。
小屋でのレイプ
過去17年間でスドゥルパシム州で生理小屋で死亡した16人の女性のうち、14人がアチャム郡で死亡している。窒息やヘビ咬傷による死亡の他に、月経中の女性がレイプや性的暴行の被害者になったケースもある。
6月、アチャム郡で若い少女が生理小屋で寝ているときに親戚にレイプされた。近隣の人々が彼女を意識不明の状態で発見し、マンガルセンの地区病院に搬送した。
警察に告訴されたが、それは暴行から19日後のことだった。小学生の少女は、母親が亡くなり、父親が再婚した後、母方の祖母に弟と一緒に育てられていた。
「彼は6か月前から私をつけまわし、一度私が一人で家にいるときに入ってきて、私に無理やり迫った」と少女は最近のインタビューで語った。警察はレイプ現場となった小屋を取り壊し、事件は裁判中である。
法律
チャウパディは2005年にネパールの最高裁判所によって禁止され、その3年後には女性・児童・社会福祉省がこの慣習を禁止するガイドラインを策定した。
2017年の国家刑法第168条3項では、「月経中または出産時に女性を生理小屋隔離すること、または同様の差別、不可触、非人道的な扱いなどを女性に強いること、または強いられることを禁止する」と規定している。このような犯罪を犯した者は、3か月の禁固刑、3,000ルピーの罰金、またはその両方が科される。(原文へ)
This article is brought to you by Nepali Times, in collaboration with INPS Japan and Soka Gakkai International, in consultative status with UN ECOSOC.