【カイロIPS=アダム・モロー、カレッド・ムーサ・アルオムラニ】
「イスラエルのこととなると、カイロを含め大半のアラブ諸国政府の立場は、国民世論と真っ向から対立する。60年を経て、アラブ人民は依然としてイスラエルとその政策に反対する。」イスラエル建国60周年に際し、著名な歴史家でシオニズムに関する百科事典の著者Abdel Wahab al-Masiri氏は述べた。
エジプト最大の野党勢力ムスリム同胞団のEssam al-Arian議員は「イスラエルはパレスチナの地の犯罪的な占領によって建国され、それは今でも変わらない。1948年の建国はパレスチナの元来の住民の民族浄化でもある」と述べている。
1979年エジプトはイスラエルと和平条約を締結、シナイ半島の返還も実現した。それから30年、両国は正式な外交関係を維持しているものの、パレスチナ人民に対するイスラエルの政策に怒りを覚えるエジプトの世論はその後も変わらない。
5月11日には、ムバラク大統領がイスラエルのペレス首相に建国記念に祝意を示す電報を送ったことが報じられたが、al-Masiri氏は「ムバラクのペレスに対する祝い状は、アラブ諸国政府のイスラエルに対する従属を露呈するもの」と断じた。
また5月11日にカイロのエジプト・ジャーナリスト・シンジケートで開かれた会議では、大統領の祝意に対する批判とともに、イスラエル建国は「近代史における人類に対する最大の犯罪」と評し、ユダヤ人国家建設の柱であるシオニズム非難が行われた。
カイロでは5月15日、パレスチナとレバノンの対イスラエル抵抗グループと連帯して数多くの抗議デモが行われた。あらゆる方面の反政府勢力からデモに参加した人々はイスラエルの国旗を焼き、イスラエル大使のカイロからの追放を要求した。但しデモの規模は、政治デモに対する政府による武力鎮圧をおそれて、限定されたものとなった。
しかしその一方でエジプト政府は、メディアによる批判を懸念して、テルアビブに本拠を置くエジプト・イスラエル友好協会の代表団のエジプト訪問を土壇場でキャンセルしたことが報道されている。
イスラエルを巡る政府と国民世論の対立について報告する。(原文へ)
翻訳/サマリー=IPS Japan