地域アフリカ治安部隊による有権者への投票妨害、報道抑圧に混乱した人民議会選挙

治安部隊による有権者への投票妨害、報道抑圧に混乱した人民議会選挙

【カイロIPS=アダム・モロウ】

木曜日(12月8日)のエジプト人民議会選挙の決選投票は、有権者と治安部隊との衝突と抑圧報道により混乱した。

独立系の新聞、アルマスリ・アルヨム紙の見出しには「停戦」の文字が躍り、「選挙の最終日に都市部で「市街戦」が発生し、9人が死亡し数十人が負傷した」と報じられた。

多数の報道が、治安部隊と私服警官とで有権者が投票所に出入りすることを執拗に阻止し、野党候補者が当選しそうな選挙区では、投票所周辺が封鎖されたとしている。

第1回と第2回の人民議会選挙で野党勢力が躍進したことがこの騒乱を招いた。最終日の投票結果を勘案すると、野党候補は前回のわずか40議席から、人民議会444議席の中のほぼ100議席を確保する見込みである。

 決選投票当日、投票を妨げられた有権者は強硬な抗議活動を行い、警察は群集に向かって催涙弾とゴム弾を使用した。

ナイルデルタのダカハリーヤ県の衝突では2人が死亡し、同じくナイルデルタのシャルキーヤ県では3人が死亡した。北部の地中海沿岸都市ダミエッタでも同様の衝突でさらに3人死亡した。

アルマスリ・アルヨム紙の報道によると、ムスリム同胞団が優勢なダカハリーヤ県のBedway村には3000人以上の兵が配備された。結局11月9日から始まった3回の人民議会選挙では12人もの犠牲者が出た。

第1回と第2回の人民議会選挙では多くの不正が報道されたが、選挙監視団は最後の投票日には国の治安部隊が極めて乱暴なやり方で投票に来た有権者を追い払った事実があったという。

ムスリム同胞団の有力者であるAbdel Moneim Abul Futouh氏は、「抑圧は昨日の決選投票で最高潮となり、治安部隊は投票に訪れた人に実弾を放ち、催涙弾を使い、有権者が投票所に入ることを妨げた」と述べた。

カイロの人権機関Cairo Institute for Human Rights Studiesは、「市民社会組織によって現場での深刻な現象が目撃されて報告されており、今回の選挙とその結果には公正と自由とが欠けていることが確信される」という声明を発表した。

政府はムスリム同胞団の支持者が暴力を扇動しているとして非難してきたが、多くの人はこの非難に疑問を抱いている。野党、特にムスリム同胞団の候補者が優勢な地域では、国の治安部隊が騒乱を引き起こすのを見たと証言する人もいる。

「この騒乱はムスリム同胞団に責任があるとは思えない」と、2人のムスリム同胞団の候補者がすでに対立候補に圧勝している首都カイロの低所得者層選挙区に住むタメル・サイード氏は述べ、「悪いのは、有権者に投票をさせない人たちだ」とした。

選挙監視団の多くは、第1回と第2回の人民議会選挙で、非合法だが容認されているムスリム同胞団が予想以上に躍進して76議席も勝ち取ってから、政府が強硬手段をとるようになったという。

Abul Futouh氏は「第1回の人民議会選挙からムスリム同胞団の候補者が落選するよう政府は圧力を強め始めた。昨日の決選投票でムスリム同胞団の候補者が何人か落選したのはこの政府の圧力のせいだ」と述べた。
 
 この圧力疑惑にも関わらず第1報によると、ムスリム同胞団は第3回目の人民議会選挙でさらに12議席を獲得し、合計すると人民議会で全議席の1/5ほどの88議席を占めることになったとされている。

国営の報道機関によると、長期政権を維持しているホスニ・ムバラク現大統領が率いる与党国民民主党(NDP)は300から330議席を確保する見込みである。選挙前の388議席からするとかなりの減少だが、引き続き国民民主党(NDP)は立法支配に必要な2/3以上の議席を占める。

従来エジプトの最大野党といわれ新自由主義を掲げてきたワフド党を含めて、他の非宗教政党は合計で14議席しか確保できず、その弱さを露呈した。

最終結果はまもなく公表される予定である。しかし、政府主導の行政裁判所によって「法的問題」が指摘された選挙区での19議席をめぐる追加選挙はこれから行われると予想される。さらに10議席が憲法での規定に従って大統領により任命される。

投票率はエジプトのほぼ3200万人の有権者の平均で34%であるとの公式発表があったが、もっとも公正な選挙監視団によると投票率は25%よりも低いとされている。(原文へ

 翻訳=IPS Japan

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