【ヤウンデ(カメルーン)IDN=ヌガラ・キラン・チムトム】
アフリカの森林に生息するゾウたちは、森を破壊するネガティブな存在と考えられてきたが、この大食漢たちは危機にある気候問題を救う重要な役割を実は果たしていると考えられるようになってきた。
アフリカの森林に生息するゾウは、かつて食事を通じて森林を破壊すると見られていたが、それが森林を健全に保ち世界的な気候問題の対処にも役立つものであると科学者らは考えている。
NGO「リバランス・アース」の共同創設者であり、1976年からゾウを研究しその保護を図ってきたイアン・レドモンド氏は、イタリアの生物学者ファビオ・ベンガジ氏がコンゴの熱帯雨林で行った比較研究について言及した。
「ベンガジ氏はコンゴ盆地の熱帯雨林2カ所を比較した。一つはゾウがいる森であり、もう一つは数十年前に象牙密猟者によってゾウが絶滅させられてしまった森だ。すると、ゾウのいる森では、地上の生物量、すなわち、森林における木の重量が7~14%多いことが分かった。」
森のゾウは直径が30センチに満たない木々や植物を一般的に食する。これらの木々は最終的に死に絶えるが、その結果として、より成長が遅く炭素吸収量の多い木々が水分や栄養分、光を得て、生存競争に勝つことができるのだという。
研究者らは、ゾウが長年にわたって小さな木を食べてきた森林がどのような姿になるかをモデルで予測した。彼らによれば、ゾウがいる森では、木の量が減ってそれぞれの木の密度が増し、地上の生物量が多くなったという。
レドモンド氏は、そのような森林ではより多くの炭素が吸収されるとIDNに説明した。研究者によると、現実の世界では、ゾウのいる森では、そうでない森と比較して、木々の密度が1平方メートルあたり75グラム増すという。
「ゾウは、食物を選って食べることで、食べた植物を消化し大量のフンをする。ゾウ1頭あたり1週間に平均でおよそ1トンのフンをする。森を歩き回りながらフンをすることで、それは第一級の有機肥料となる。つまり、ゾウが実際上行っていることは森の『雑草取り』だ。炭素吸収量の少ない木々や草、ツル植物を食べ、より炭素吸収量の大きい大型の木の栄養になるようなフンをするということだ。これが長期的にもたらす効果は、森林が炭素を吸収する能力を向上させるということである。」とレドモンド氏はIDNの取材に対して語った。
しかし、コンゴの森林のゾウは急激に減少している。東南アジアにおける象牙需要が当地において密猟を加速させているが、研究者らは同時に、もしゾウが生きていたらそれがどの程度の利益をもたらしたのかということについて知識が十分でないことも理由の一つであるとしている。
コンゴの森林にはかつて110万頭のゾウがいた。しかし、森林破壊と密猟によってかつての10分の1以下の頭数になってしまった。
ベンガジ氏は、もしゾウの頭数が以前と同等に復活したならば、森林1ヘクタールあたりの炭素吸収量は13トン増すことになるだろうと試算している。つまり、アフリカの森林のゾウは1平方キロメートルあたり6000トン以上の炭素吸収に寄与するということであり、これは25万本の木が吸収できる炭素量に匹敵する。
森林のゾウのもたらす経済的価値に関するパイオニア的研究を行った国際通貨基金のラルフ・チャミ博士は、ゾウを生かすことによって密猟者も地域社会も諸国も大きな経済的利益を引き出すことができると指摘している。
「密猟者には選択肢がある。ゾウを殺してカネを生み出すか、ゾウを生かして長期的にもっと多くのカネを得るか、という選択だ」とチャミ博士はIDNに取材に対して語った。
森林のゾウがもたらす経済的価値について試算したところ、ゾウ1頭当たり175万ドルにもなるとチャミ博士は述べている。ゾウを1頭殺して密猟者が得る平均4万ドルに比べるとはるかに高額だ。
「密猟は自暴自棄になった人の最後の手段です。密猟者は市民科学者になり、象の世話をするように再訓練を受け、象の密猟で得られるお金をはるかに上回る年俸を稼ぐことができるかも知れません。」と、チャミ博士は語った。
レドモンド氏は、自身の組織は「地球のバランスを取る」ことを目的としていると語った。地球の生態系的なバランスは崩れており、森林の破壊や産業の拡大、採鉱、道路や鉄道の敷設によってさらに状況は危機的になっている。
「森林は単に木が生えているところではありません。生態系そのものなのです。」とレドモンド氏は語った。森のゾウたちは、その生態系において極めて重要な役割を担っているのである。(原文へ)
INPS Japan
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