SDGsGoal7(エネルギーを皆にそしてクリーンに)|モンゴル|遊牧民を含む公正な移行計画を加速するには

|モンゴル|遊牧民を含む公正な移行計画を加速するには

【ウランバートルIPS=アートリー・ダー】

若き気候活動家ゲレルトゥヤ・バヤンムフは、気候活動家としての原点を今も振り返っている。幼少期、彼女はモンゴルとロシアの国境から南へ20kmに位置する祖父母の村を訪れていた。そこでは、遊牧民たちが伝統的なゲルで暮らしながら、太陽光発電によって電力を得ていたのを目にし、喜びを感じたという。 「隣人がソーラーパネルとバッテリーを持っていて、明かりをつけたりテレビを見たりしていました。今では冷蔵庫もあるんです」と彼女は語った。

彼女は、遊牧民たちが自らの生活様式を意識的に選び、気候危機の時代にふさわしい再生可能エネルギーの導入を進めていると感じたという。 「この体験が、私が気候活動家になった理由です」と語った。

Credit: Wikimedia Commons

だが、彼女の理想とは裏腹に、その太陽光発電システムの実態は異なっていた。 「後に知ったのですが、あのソーラーパネルは、政府が全国の10万世帯の遊牧民に太陽光発電を導入する国家プログラムの一環として、部分的に補助されていたのです。」

彼女が目にした光景は、政府による再生可能エネルギー政策の一部だったのだ。このプログラムは2000年に導入された「10万ゲル太陽光発電プログラム」で、遊牧民の生活様式に合った携帯型太陽光発電システムを提供することを目的としていた。

モンゴルの人口の少なくとも30%は遊牧民である。2000年以前は、多くの遊牧民が電力へのアクセスをほとんど持っていなかった。2005年までに、政府は複数の国際ドナーの支援により、3万世帯以上にこの技術を導入した。

しかし、その全面的な電化の取り組みは、次第に停滞し始めていた。2006年、国会の環境・食料・農業常任委員会による中間監査報告書には厳しい指摘が並んだ。

初期段階では、配布プロセスに管理が及ばず、対象外の住民への配布や発電機の未納、資金の不正使用、契約期間内のローン返済の失敗など、数々の問題が明らかになった。

それでも2006年から2012年の第3フェーズでは、世界銀行など国際的な支援を得てプログラムの実施が拡大された。

「当初は、こんなに早く再生可能エネルギーの移行が始まったことに希望を抱きました。1999年にはすでに始まっていたなんて。でも中間監査報告を読んで、初期段階と同様に運営がずさんだったことを知って失望しました。最後は国際パートナーの支援があって、なんとか完了できたのです。」とゲレルトゥヤは語った。

ゲレルトゥヤは、若者への気候意識の啓発と実践的スキルの普及を目的とするNGO「グリーンドット・クライメート」の共同創設者であり理事でもある。

Map of Mongolia. Credit: Wikimedia Commons

このNGOのモットーの一つは、「若者と国民の気候変動に対する態度と行動を変える」ことである。過去1年で同団体は50万人以上のモンゴル人に影響を与え、若者たちを主体的な気候活動家へと育ててきた。

「過去1年の間に、私たちは50万人以上のモンゴル国民に働きかけることができました。若者たちによる気候行動は10万件を超え、CO₂は70万㎏、水は25リットル、電力は8万kWh以上の削減につながりました。次の目標は、100万件の行動を達成し、より強固なコミュニティを築くこと、さらに50件以上の協働型気候プロジェクトを立ち上げることです。」と、2023年のOne Young Worldサミットで語った。

現在のエネルギー体制下における遊牧民の状況

モンゴルはエネルギー生産の90%を石炭に依存している。政府は、「国家エネルギー政策2015-2030」に基づき、2030年までに再生可能エネルギーの比率を30%に引き上げることを目指しており、温室効果ガス排出量を22.7%削減することも約束している。しかし、2020年の時点で、エネルギー部門は国内の総排出量の44.78%を占めている。

ゲレルトゥヤの団体は、近年モンゴルのエネルギー体制を継続的に調査している。2024年時点で、モンゴルの電力供給は主にCHP(熱電併給)プラントと、ロシアおよび中国からの電力輸入に依存している。再生可能エネルギーの比率はわずか7%にとどまり、中央エネルギーシステムが国内の電力需要の80%以上を占めている。

「私たちの調査では、約20万世帯が中央電力網の統計に反映されていませんでした。これらは、20年前にソーラーシステムを初めて導入した遊牧民家庭、あるいはその子孫たちと考えられます」

ゲレルトゥヤは、モンゴル統計情報サービスとエネルギー規制委員会の家庭数データを照合し、統計から漏れている世帯数を特定したという。

化石燃料経済への逆行 モンゴルは再生可能エネルギー比率を2030年までに30%にするという目標を掲げているが、現時点でその実現にはほど遠い。

2020年の国別削減目標(NDC)では、「2030年までに温室効果ガス排出量を22.7%削減」とし、条件付き対策(CCSや廃棄物発電など)によっては27.2%、さらに森林吸収などの措置を加えることで44.9%までの削減が可能としている。

「石炭依存経済を脱炭素化する代わりに、モンゴルは炭素吸収や森林吸収といった手法に重点を置くようになっています。つまり、数々の約束や政策、再生可能エネルギー推進の努力にもかかわらず、実際は『現状維持』に終始する恐れがある。これは悪政と停滞、そして悪循環の表れです」と彼女は指摘した。

モンゴルのエネルギー部門への提言

ゲレルトゥヤのNGOは、2025年の「アース・マンス」キャンペーンに積極的に参加し、COP30で提出されるNDC3.0に向けて若者からの提案を募っている。

彼女は、いくつかの提言を共有した:

需要側では、電力網に接続されていない世帯が、安価で高効率となった新しいソーラーシステムに更新・改善する必要がある。

また、2024年の世界銀行『モンゴル国気候・開発報告書』によれば、モンゴルの家庭用電気料金はコスト回収価格よりも40%低く、2022年には補助金がGDPの3.5%に達していた。このため、エネルギー効率の改善や再生可能エネルギー投資が進みにくくなっている。

SDGs Goal No. 7
SDGs Goal No. 7

この状況下では、電力網に接続されている家庭がエネルギー使用に対して適正価格を支払い、再生可能エネルギーの導入を支える仕組みが必要である。また、市民は短期的利益にとらわれず、より良い政策とその実行を求める責任ある投票行動が求められる。

供給側では、現在「エネルギー復興政策」の下で進行中の6件の化石燃料関連プロジェクト(国際的なものも含む)を即時停止すべきである。

次に、老朽化し非効率かつ過剰に補助金に依存した電力インフラを大幅に改善する必要がある。国連開発計画(UNDP)も同様の指摘をしている。

さらに、現在30%にとどまっているエネルギー供給能力の活用率を高めること。インフラの非効率が主因とされている。

加えて、再生可能エネルギーの総容量を現在の5倍に拡大し、需要に対応する必要がある。これは、最大需要時に必要なエネルギー量の15倍を意味する。最終的には、石炭火力を段階的に廃止し、完全に再生可能エネルギーへと移行すべきである。(原文へ)

INPS Japan/IPS UN Nureau Report

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