【オハイオ州オバーリンIPS=サム・カサノス】
「慈善資本家」も多くの伝統ある財団も、気候変動などの地球規模の問題に非常に熱心に取り組んでいる。これまでは、慈善団体の環境への取り組みは自然保護に偏り、体系的でないと批判されていたが、最近は変わってきている。
エコノミスト誌のライターでマイケル・グルーン氏との共著「Philanthrocapitalism: How the Rich Can Save the World(慈善資本主義:金持ちが世界を救う)」(近刊)の著者のマシュー・ビショップ氏は、「慈善家は従来の問題に加えて気候変動問題に関心を持ち始め、特にIT関連の慈善家は革新的な方法を模索している」という。
慈善資本主義という新語は、慈善に市場原理を持ち込んで問題解決に当たる姿勢を表している。環境にやさしい技術の研究開発への投資、環境に配慮したオフィスビルの設計、市場本位の社会変革活動を行う組織への寄付などにより、新たな世代の慈善家は環境問題に取り組む。政府に温暖化防止条約への加盟を促し、条約を産業に配慮したものにする働きかけも怠らない。さらに従来の環境団体への寄付も多額で、2007年には20億ドルに上った。
慈善資本主義が社会と環境に大きな変革をもたらす可能性について、ボストンのノースイースタン大学のダニエル・フェイバー教授は、「変革に必要なのは草の根の活動であり、慈善家が投資の短期的回収を目指すのは問題だ」と批判的である。ビショップ氏もこの点は同意し、変革に向けて政府を動かすには市民のための情報構築と市民による政府への圧力が必要だという。
政府や企業への働きかけに有効なのはインターネットである。環境団体のコンサルティング会社を起業したイーサン・オーギネル氏は「環境関連団体と慈善家が協力してインターネットを利用した意識改革活動が効果をあげている」という。たとえばアポロ連合は、石油依存をやめてクリーンエネルギーを利用するプログラムへの米政府支援金を求めるキャンペーンをネット上で行い、エネルギー問題の理解に大きな効果をあげている。
インターネットの革命的影響を認めつつ、フェイバー教授は組織の資金調達は慈善団体の政治的基準に左右されると指摘する。たとえば環境の公正の問題に取り組み、草の根の運動を重視しているジェシー・スミス・ノイズ財団は資金調達に苦労している。
慈善団体の環境問題への取り組みについて報告する。
翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩