【ブダペストIPS=ゾルタン・ドゥジジン】
天然ガスの供給が停止した中欧およびバルカン諸国では、工場は製造を中断し、学校は休校になり、給水管は凍り、経済はマヒ状態だ。西側が招いた金融危機との苦闘の後には、東側からの経済的な打撃が待っていた。
ガスの供給停止は、ウクライナとロシアが2009年のガスの価格とウクライナの料金支払い遅延に対する罰金問題について合意に至らなかったことが原因である。欧州向けのロシア産ガスの80%がウクライナを経由しており、ボスニア、チェコ、スロバキア、ハンガリー、ブルガリア、クロアチア、マケドニア、セルビア、ギリシャが窮地に陥っている。
ハンガリーのジュルチャーニ首相はウクライナとロシアの戦闘の流れ弾に当たるようなもので承服しがたいとしながら、ガスの使用に制限を設けた。ハンガリーでは暖房の90%はガスを利用しており、暖を取るには経済活動を休止しなければならない。閉鎖した工場もあり、農家は家畜の凍死を心配し、中小企業は製品の質と量への影響を懸念している。
中欧諸国の経済の鍵となる自動車メーカーまでが生産中止に追い込まれつつあり、そうなると国の経済自体に甚大な被害が及ぶ。チェコとハンガリーには小規模のガス備蓄があるが、備蓄のない国は対処に苦しみ、スロバキアは非常事態を宣言し、ガスによる発電がほとんどのため、10日以内に供給が再開しなければ全土で停電という事態もありうるという。
一方で美談もあり、モルドバのヴォローニン大統領は、独立を図っているドニエステル地域の社会施設や病院が危機に瀕したために、少ないエネルギーを分け与えた。電力の供給停止により寒さと闘っているセルビア北部のノビサドに対し、ハンガリーはガスの貸し出しに応じた。またドイツやオーストリアも貸し出しを行っている。
ウクライナとロシアがガスの供給を回復しても、バルカンおよび中欧諸国のガス供給システムが完全に復旧するには数日かかる。影響を受けた国々はロシアのガスプロム社かウクライナに補償を要求するかもしれない。ハンガリーのエネルギー企業Emfesz Kftはすでにウクライナのガス公社を訴えると発表している。ロシアとウクライナはEUの監視団の受け入れには合意したが、早期の解決は難しそうだ。
ロシアとウクライナのガスをめぐる争いの影響を受ける中欧・バルカン諸国について報告する。(原文へ)
翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩
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