【イスタンブールIPS=ヒルミ・トロス】
この300年間で12回もの戦争を交わした長年の仇敵だと考えられていたロシアとトルコが、最近急速に歩み寄っている。
先週トルコを訪問したロシアのウラジミール・プーチン首相は、トルコのエルドアン首相と実に20もの協定に署名した。合計で400億ドル相当の取引である。
中でも注目は、ガスパイプラインのナブコとサウスストリームは「競合的」ではなく、「相互補完的」だと宣言されたことだ。欧州と米国が支援するナブコは、トルクメニスタン・カザフスタン・アゼルバイジャンの天然ガスをロシアを通過せずに欧州に運ぶ(2014年に供用開始予定)。サウスストリームは、ロシアからトルコ領土の黒海を経由して欧州までガスを運ぶが(2016年開始予定)、そのポイントは、ウクライナを通過しない点にある(現在、ロシアから欧州向けのガスの80%が同国を通過)。
ロシア・トルコ間の貿易は現在年間380億ドル規模。この8年間で8倍に伸びた。トルコにとってロシアは最大の貿易相手にまで成長した。
2007年にはトルコで「ロシア文化年」が開かれ、翌年には逆にロシアで「トルコ文化年」があった。トルコへの観光客数は、ドイツに続いてロシアが第2位に入った。
トルコは欧州共同体入りを50年にわたって望むなど、長らく欧州よりの姿勢を見せてきたが、エネルギー問題は対ロシア外交に新たな次元を持ち込みつつある。
しかし、英字紙『ハリエット』(Hurriyet)のコラムニスト、ユスフ・カンリ氏は、トルコがロシアに急接近し始めたことで、トルコの地政学上の重要さを欧州が改めて認識することになり、逆に欧州とトルコの距離は縮まるのではないか、との見方を示している。 (原文へ)
翻訳/サマリー=IPS Japan