【ジュネーブIDN=ラメシュ・ジャウラ】
信仰を基盤とする多様な団体および個人が、ジュネーブの国連欧州本部に集まった各国政府代表に対して、世界から核の大惨事の危険を取り除き、人類のために持続可能な開発を推進することを訴えて、道徳的な義務と倫理的規範をあらためて確認している。
キリスト教、クウェーカー、イスラム教、ヒンズー教、創価学会インタナショナル(SGI)など様々な宗派の20の団体・個人が4月25日、ジュネーブの国連欧州本部で開催されている2020年核不拡散条約(NPT)運用検討会議第2回準備委員会での市民社会によるプレゼンテーションの場において、共同声明を発表した。
「核兵器を憂慮する宗教コミュニティー」を代表してSGIのヘイリー・ラムゼイ=ジョーンズ氏が読み上げたこの共同声明は、これまでのNPTのあらゆる取り決めに従うとともに、「核兵器のない世界という共通目標に向けて」「具体的かつ測定可能な成果」を2020年NPT運用検討会議に向けて生むよう求めた。
仏教系NGOであるSGIは60年以上に亘って、核兵器の廃絶に向けて取り組んできた。
共同声明の賛同者らは、1945年の広島・長崎への原爆投下がもたらした壊滅的な人道上の結末を想起するよう求めている。「それ以降、人類は核兵器による黙示録的な破壊の影のもとで暮らし続けることを余儀なくされています。」と共同声明は述べ、「ひとたび核兵器が使用されれば、人類文明のこれまでの成果が破壊されるだけでなく、現世代は傷つき、将来の世代もこの上なく悲惨な運命へと追いやられるのです。」と警告している。
共同声明の賛同者らは、信仰者として全人類が安全と尊厳の中で生きる権利を求め、良心と正義の要請を心に留めるよう努力し、弱き者を守り、現在と未来の世代のために地球を守る責任を果たす決意を共有している。
共同声明はさらに、「核兵器は、こうした価値観や約束事を蔑ろにするものです。私たちは、ある特定の国や民族の利害を、人類や地球全体の利益に優先させるような安全保障観を決して受け入れることはできません。核兵器の恐ろしい破壊力を鑑みれば、核兵器の廃絶は、真の人間の安全保障への唯一の道だといえます。」と述べている。
信仰者として、信仰を基盤とした多様な団体・個人らは、5月4日までジュネーブの国連欧州本部に集っている諸国政府に対して、次のことを求めている。
・世界のヒバクシャ(核兵器のすべての犠牲者)の声に耳を傾け心に刻み、核兵器のない世界を達成し維持するという明確な約束を再確認する。そして、核兵器禁止条約の根拠は、核兵器の使用がもたらす壊滅的な人道上の結末を防ぐことにあることに留意する。
・すべての枠組みは相互に補完し合うものであり、各分野の前進がその他の分野の前進へと繋がることを認識する。核兵器禁止条約の発効、包括的核実験禁止条約(CTBT)の発効、核分裂性物質の生産停止並びに世界中の備蓄の廃絶(FMT)、核兵器生産施設の不可逆的な解体、核兵器の精度の向上・多様化・使用への敷居の低下を企図するプログラムの中止、新たな核兵器開発競争の防止、備蓄核兵器の廃絶は、その他の有効な取り組みとともに、NPTで規定された目標と約束と完全に一致しており、その実現に資する世界的な事業である。
・NPTと核兵器禁止条約には、核兵器禁止条約への立場がいかなるものであれ賛成が可能な、核兵器の移転、他国の核兵器の取得の援助等といった、両条約に共通する中核的禁止事項が存在することを認識する。
これらを念頭に、共同声明は「NPTに定められた、核軍縮交渉の完結に向けた義務履行の具体的かつ実際的な一歩として、すべての締約国がそうした禁止事項の強化に関する建設的な対話を行うこと」を求めた。
核軍縮の課題が停滞している事実は、この熱烈な呼びかけの重要性を高めている。ロナルド・トランプ政権の「核態勢見直し」は、核兵器使用のハードルを下げかねない新型核兵器の生産計画にも言及しているからだ。
このような行動は、これまでこのNPTのフォーラムでなされてきた約束と真逆の立場に立つものであると共同声明は主張し、「持続可能な開発目標(SDGs)の達成に振り向けられたならば、その大きな前進をもたらすことができるであろう額の資金・資源が、核兵器の近代化計画のためだけに費やされようとしています。その資金により、生活必需品の提供、環境保護、女性や少女、そして未来の世代の健康の促進、さらには、世界中の戦争や対立のリスクを軽減することができるのです。」と述べている。
2020年NPT運用検討会議第2回準備委員会の会期(4月23日~5月4日)で発表された今回の共同声明は、2014年以来、今回で9回目となる。「核兵器を憂慮する宗教コミュニティー」は、2014年から16年にかけて開かれた「核兵器の人道的影響に関する国際会議」の場で共同声明を発表してきた。また、2017年5月の2020年NPT運用検討会議第1回準備委員会(ウィーン)や、同7月にニューヨークで核兵器禁止条約が採択された際にも発表してきた。
パックス・クリスティのジョナサン・フレリックス国際代表は4月25日の共同声明に関して「私たちはいまや核兵器禁止条約を発効させる機会を手にしました。禁止条約に署名・批准する国が増えるたびに、核兵器に対する悪の烙印と非正当性が強まっていくのです。」と語った。
SGIの石渡一夫平和運動局長はさらに、「宗教コミュニティーの役割は、人々の価値観や考え方に働きかけるものであり、その点で重要な役割を果たしています。市民が、核兵器によらない安全保障を選択する必要があります。」と語った。
石渡局長はまた、4月25日、2020年NPT運用検討会議第2回準備委員会の議長を務めるポーランドのアダム・ブガイスキー大使にSGIの声明を手渡した。ブガイスキー大使は市民社会による取り組みへの感謝を表明した。
今回の第2回準備委員会は、昨年7月に核兵器禁止条約が採択されて以来、非核保有国・核保有国・核依存国が参加する初の討議の場である。SGIは、核兵器のない世界というNPTに内包された究極の目標に沿う具体的な結果を生み出せるよう、建設的な議論を行うとともに、市民社会、特に世界の被爆者の声に耳を傾け続けるよう、締約国に求めた。
共同声明には次の諸団体・個人が署名している。
オールソウルズ核軍縮タスクフォース:アンソニー・ドノバン、ビバリー・ジョンストン(パックスクリスティ・インターナショナル)、ブルース・ノッツ(ユニテリアン・ユニバーサリスト国連事務所長)、クリスチャン核軍縮キャンペーン、上級上長者協議会、エラ・ガンジー(ガンジー開発トラスト)、フランシスコ会行動ネットワーク、寺崎広嗣(SGI平和運動総局長)、マリク・マジャヒド(サウンドビジョン)、世界的関心のためのメリノール事務所、ムスリム平和フェローシップ、ムスタファ・チェリッチ(ボスニア・ヘルツェゴビナ・イスラム共同体最高指導者、世界ボシュニャク会議議長)、パックス、パックス・クリスティ豪州支部、パックス・クリスティ・インターナショナル、パックス・クリスティ米国支部、ユニテリアン・ユニバーサリスト協会、統一メソジスト教会ジェネラル・ボード・オブ・チャーチ&ソサイェティ、世界教会協議会。(原文へ)
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This article was produced as a part of the joint media project between The Non-profit International Press Syndicate Group and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.
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