【スバIPS=シャイレンドラ・シン】
フィジーの首都スバで、チベットでの死者を出した軍隊の弾圧を非難し、中国大使館の外で平和的な抗議活動を行った17人が逮捕された。フィジーの市民運動組織と主要労働組合は、この逮捕を非難している。
非難する人々は、9日の逮捕は憲法に違反しており、抗議活動を行った人々(現在は釈放されている)を起訴する根拠はないと主張している。
フィジー政府は現在、中国から2億2,800万ドル相当の融資を受けるために協議中であり、中国政府のチベット政策を支持している。
隣国のトンガのタウハ・アハウ・トゥポウ5世国王も、先週の中国公式訪問の際に、中国のチベット騒乱への対応を支持すると表明した。
フィジーとトンガは、他の太平洋諸島の国々と同様に中国から多大な支援を受けており、政府は中国の「一つの中国」政策を堅持している。
新華社通信によると、温家宝中国首相に海南省へ招待されたトゥポウ国王は、「中国の問題は中国だけが対処できるもので、他国からの干渉は容認できない」と語った。
フィジーとは異なり、トンガからは、国王の見解に反対して一般市民が抗議した、あるいはデモを行ったという報告はない。
バヌアツもトンガやフィジーのように中国からの多額の無利子融資を求めていて、チベット問題には口を閉ざしている。メラネシアの国、バヌアツからは中国の軍隊による弾圧に関する抗議活動やデモなどの報告は聞こえてこない。
インドにあるチベットの亡命政府は3月10日に始まった抗議活動を鎮圧するために中国の軍隊が侵攻して数十人が死亡したと述べており、世界中からの批判を招いている。
先週スバで逮捕された人々の中には、フィジー人権委員会の委員でフィジー女性危機センター(FWCC)のシャミラ・アリ代表も含まれていた。
アリ氏によると、同氏らのグループは中国の軍隊によってチベットで殺害された人々を追悼する徹夜の座り込みを行っていたが、プラカードを掲げたり、通行人の妨げになったりするようなものはいなかった。
アリ氏は「逮捕は言論の自由を記したフィジー憲法に違反している」とし、「チベットの人権侵害に抗議する平和的な座り込みには何の問題もない」という。スバの中国大使館はプレスリリースで警察の行動を支持すると述べた。
軍の有力者であるバイニマラマ首相が率いるフィジーの暫定政府は、逮捕に関して沈黙したままでいる。
2006年12月5日にクーデターで権力についたバイニマラマ首相は、チベットで騒乱が発生し、それに引き続き軍事的弾圧が行われた直後に中国政府に書簡を送り、先のラサでの暴動における中国政府の対応を支持すると表明した。
書簡では、中国は国家の平和と安全を守るために適切な手段を取る必要があったとされ、チベット問題は国内問題であり、中国が対処する問題だと明言された。
けれども市民運動組織の激しい抗議と、多くの怒りに満ちた手紙が投稿記事に掲載されるのを受け、バイニラマラ首相は暫定政府の主張を守勢する立場に追い込まれていた。
同首相は、政府の主張は法律の範囲内で平和的に問題を解決するという点で非常に明確で筋が通っていると述べ、この問題は「フィジーにとって長期的な友好国である」中華人民共和国の国内問題であるとしていた。
古くからフィジーの緊密なパートナーだったオーストラリアやニュージーランド、主要大国である米国や英国は、フィジーのクーデターを非難し、その体制に制裁を科したが、中国はクーデターに関して非難を行わず、フィジーとの友好関係を維持してきた。
フィジーは2億2,800万ドル以上に相当する中国からの融資を交渉中であり、すでに1億1,300ドルは国内の地方道路の整備資金として承認されている。
大手労働組合は逮捕を非難し、抗議活動家を支持すると声明を出した。
フィジー諸島労働組合評議会のアター・シン事務局長は、逮捕が言論の自由の権利を侵害しているとし、抗議活動家は起訴されてはならないと述べた。
フィジー女性の権利運動のタラ・チェティ広報官も逮捕された1人だったが、警察の行為は不当だと述べた。「こうした無益な逮捕により、チベットでの仲間の活動家との連帯を示す静かな平和的抗議活動が、とんでもない出来事のように仕立て上げられた」とチェティ氏はいう。「フィジーの憲法と国際法で守られている言論の自由や平和的集会の自由という人権の侵害は、特に現在、フィジーが選挙で選ばれていない政府によって統治されているため、問題である」
逮捕された人々は、公の集会を統制する法律を順守するため、個別のグループで座り込みをしようとしていた。尋問はグループごとに行われた。チェティ氏によると警察が逮捕者を虐待することはなかった。
「非合法の集会を行ったことで逮捕され、そのうち数人は起訴されている。けれども現場の警察官はどのような法律に違反しているとされているかについて当初は混乱しているようだった」とチェティ氏はいう。
市民憲法フォーラム(CCF)は抗議活動を行った人々に対する起訴を取り下げるよう要請している。
「CCFは平和的な市民グループが静かなデモを行って逮捕されたことを憂慮する。こうした市民は国の平和を脅かしていなかったし、何の業務の支障にもなっていなかった」とCCFのヤバキ牧師は語り、さらに「フィジー暫定政府がチベットで中国政府が犯した人権侵害を容認しているように見えるのは非常に遺憾である」と述べた。
「フィジーの歴史にとって大事なこの時期に、政府はフィジーへの中国からの支援の約束のために中国政府寄りの立場をとっているように見える」とヤバキ牧師はいう。
「CCFはフィジー政府に、表現の自由、移動の自由、不当な捜査押収からの自由などの、基本的人権を尊重する姿勢を示すよう求めている」(原文へ)
翻訳=IPS Japan
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