INPS Japan/ IPS UN Bureau Report|開発|食糧援助があなたの傍の小さなスクリーンに

|開発|食糧援助があなたの傍の小さなスクリーンに

【ロンドンIPS=サンジェイ・シュリ】

あなたは干ばつの被害を受けた地域上空を旋回している飛行機のコックピットにいます。そして数千人もの飢餓に苦しむ人々が地上で待っています。彼らの命はあなたの行動にかかっているのです。飛行機を山の急斜面に移動させ最初の救援食料を投下してください。

(画面が切り替り)その救援食料を搭載したトラックがぬかるむ危険な道を進んでいますそして――あなたが運転するトラックと食料を待ち望む飢餓に苦しむ人々の間に――反乱兵が現れます。

 
あなたは、仮想現実の世界に構築された食料支援任務の真っ只中にいるのです。

ローマに本部を置く世界食料計画(WFP)が公開した世界の飢餓問題をテーマとした最初の人道援助ビデオゲーム「食料部隊:Food Force」は、インターネットから無償でダウンロード可能でウィンドウズ、マックどちらのパソコンでもプレイが可能である。その目的は、世界における食糧支援の必要性を、子供たちが理解できる言語で認識を高めることにある。

このゲームは、ソニーのプレイステーションが提供する最新ゲームのような複雑さには太刀打ちできないかもしれないが、ゲームに熱心な子供たちの興味を惹きつけるには十分な内容を持っているとのことである。

「コンピュータゲーム業界は常に進化しており新たな技術が常に導入されている。しかしこのFood Forceは、これだけ洗練されたレベルのゲームとしては初めてのものとなります」と、WFPロンドン事務所のグレッグ・バローはIPSに語った。「このゲームには三次元の立体キャラクターが登場し、音楽パッケージも備え付けられている。プレーヤーは、ゲームを通じて人道援助活動が直面する様々な挑戦を疑似体験し、そこである程度洗練された作業をこなしていけるように作られている。

「市販のゲームソフトに慣れている子供たちでも、Food Forceを同様のレベルのゲームと認識するでしょう」とバローは言う。

このゲームの対象年齢は、8歳から13歳で、シェイラン(Sheylan.)という架空の島を舞台に、食糧支援が必要な人々に救援食料を届ける6つのミッションが収録されている。

プレーヤー達は、Food Forceの緊急援助要員を駆使してゲームを進めていく。これらのキャラクターは飛行機やヘリコプターを操縦し、武装した反乱軍兵士達と援助物資輸送車列のルートについて交渉をし、時間制限内に食料調達の兵站パズルを解く。そして最終的には、創意工夫して、目的地のコミュニティーに対して長期的な食料の安全を確保できる体制を構築していく。

プレーヤーはそれぞれのミッションをクリアする毎に点数を獲得でき、世界中のプレーヤーと比較することができる。

Food Forceは、木曜日(4月14日)にボローニャで開催された世界児童書フェア(the International Children’s Book Fair)で発表され、現在英語版が利用可能であるが、その他の言語版についても近く公開予定である。

WFPは、学校の教師がこのゲームに関心をもち、授業で活用しながら食糧問題を取り上げて行くことを希望しているFood Forceのゲームウェブサイト(http://www.foodforce.konami.jp/)にはダウンロード可能な教師用パッケージも用意されている。

「Food Forceは、両親が安心して子供達に自宅でプレイするよう励ませれる作品であり、また、教師が授業の中で使用したいと思うような作品です」と、4月14日の発表のなかでWFPのニール・ギャラガ広報部長は語った。「多くの父兄が、ビデオゲームで描写される血や暴力に子供たちが晒されていることを問題にしています。その点Food Forceは、楽しくアクション満載の(従来の問題あるビデオゲームに代わる)選択肢になると思います」

世界食料計画は世界最大の人道支援機関で、毎年80カ国以上の平均9000万人の人々に(内、5600万人は空腹に喘ぐ子供たちである)食糧援助物資を届けている。

また、ゲームウェブサイトが提供するものはゲームに留まらない。このサイトを通してプレーヤーは、クリックの先に飢餓の現実があることを知る。そして、そのサイトを通じて、世界で飢餓に直面している人々に少しばかりの貢献をする機会が与えられるのである。

「このゲームの開発にはかなりの時間を要しました」と、バローは語った。「WFPは多くの手段を通じて、飢餓対策上直面する様々な挑戦について説明してきました」「このゲームは、市販の商用ゲームに夢中になっている世界の全ての子供達を対象に、彼らが飢餓問題に対する認識を高めていくことを目的としています」

WFPは今回のゲームに対する反響を詳しく分析して後続のゲーム開発を進めるかどうか検討したいとしている。「私たちはこのゲームがどの程度成功するのか、そして、どのくらいの子供たちと教育機関が関心を持って活用してくれるかを知りたい」と、バローは語った。

「今日、子供たちとのコミュニケーションには最新の技術が欠かせない」と、ギャラガは語った。「世界の先進国の子供たちは、いつ餓死するとも分からない状況の中で床につくのがどのようなことなのか理解できない。Food Forceはハラハラドキドキするダイナミックなゲーム展開で子供たちの興味を引き出し、エイズ、マラリア、結核による死亡者の合計を上回る犠牲者を出している『飢餓』に対する理解を深めることを目的としています」(原文へ

翻訳=IPS Japan浅霧勝浩

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