【ウランバートルIDN=アラン・グア】
モンゴルの元国連大使で現在はNGO「ブルーバナー(青旗)」の議長を務めるジャルガルサイハン・エンクサイハン博士は、「北東アジアに非核兵器地帯を創設し、北朝鮮に対して、統合的で信頼できる『ミニ・マーシャルプラン』を提供することは、朝鮮半島のみならず東北アジア地域全体の安全保障の向上や発展にとってウィン・ウィンの関係をもたらす。」と確信している。
米国と北朝鮮の両国が、「核兵器に依存しない抑止をはじめとして、朝鮮半島における安全保障上の脅威を解決するための大胆な考え方をする必要があります。」とエンクサイハン氏は国際フォーラムで語った。
国際政策フォーラムは、グローバル平和財団、アクション・フォー・コリア・ユナイテッド(AKU)、ワンコリア財団、ブルーバナーが共催して9月30日にモンゴルの首都ウランバートルで開催された。
フォーラムでは、2つの円卓会議(分科会)が同時進行する形式で議論が進められた。ひとつは、北東アジア非核地帯を確立していく展望に関するもので、南北朝鮮と日本に対するロシア・中国・米国による安全保証、核兵器に依らない抑止、地域安全保障協力の「ポスト冷戦枠組み」の構築、北朝鮮に対する国際的な「ミニ・マーシャルプラン」の提供、北朝鮮の地域経済開発への組み込みといったテーマが話し合われた。
エンクサイハン博士は、「米国による安全の保証は信頼に足るものであり、北東アジア非核兵器地帯が法的にも政治的にも信頼できるものだと北朝鮮に確信させるうえで、ロシアと中国が安全を保証することは重要です。それはまた、非核化による戦争抑止を拘束約定とすることによって、北東アジア地域における核軍拡競争を防ぐことになるでしょう。」と語った。
1994年北朝鮮核危機の際に米政府の交渉団代表を務めたロバート・カルーチ元国務次官補(政治軍事問題担当)は、「もし北東アジア非核兵器地帯が追求されるならば、米国の核からの脅威に対する北朝鮮の懸念の問題と、米国が同盟上負っている義務と安全保障上の利益の問題に対処せねばなりません。」と指摘したうえで、「もしこの問題に関してなんらかの動きを起こすならば、『非核化』という用語の明確な理解や、核分裂性物質の問題、その生産施設などの問題が、適切に対処される必要があります。」と語った。
限定的な北東アジア非核兵器地帯をかつて支持していた又松(ウソン)大学のジョン・エンディコット学長は、北東アジアにおける非核地帯の概念は、「時間をかけて相互の信頼と友好を構築していくプロセスでなければなりません。」と語った。円卓会議の議論では、核保有国の「核先制不使用の公約」や(核兵器の役割を他国からの核攻撃への抑止に限定する)「唯一の目的」論について話し合われた。こうした政策に賛意を示すものもあったが、一方で、核抑止政策の効果を毀損しかねないとする意見もあった。
また、朝鮮半島の非核化に進展をもたらすには、北朝鮮に対するアプローチの大胆な変更と、北東アジア非核兵器地帯を含む信頼に足る地域安全保障メカニズムが必要だとの見解も出された。全体的な安全保障環境を改善するには、現在および将来の感染症の拡大やインフラ開発、微粒子公害、海洋汚染などの共通の非軍事的な安全保障上の問題に共同で対処することが必要だとの指摘もあった。
2つめの円卓会議では、中央統制経済から自由市場へと移行したモンゴルの事例がケーススタディとして取り上げられるなど、北東アジアにおける経済的発展の展望について議論された。またこのセッションでは、ベトナムの事例にも触れられた。ワールド・トレード・パートナーシップのジョン・ディクソン会長は、「政府や大規模な多国間の機関がゆっくりとしか動けないなら、朝鮮半島の経済的統合に関する、お互いの国にとって平和的で生産的な枠組みを可能にするような計画を予備として考えておくようにすることは必須です。」と強調した。
「グローバル平和財団」で北東アジアの平和と開発問題を研究するイエチン・リー上席研究員は、「中国は北朝鮮にとっても韓国にとっても最大の貿易相手であり、インフラや工業、観光、鉱業、サービス部門を発展させ平和的統一を実現していくことは、中国や北東アジアにおける経済成長を考えるならば、『低い位置にぶら下がっている果実』のように大きな努力をしなくても容易に解決できる目標です。」と指摘した。
韓国・中国・日本・イギリス・フィンランド・ロシア・インド・モンゴル・米国からの安全保障問題の専門家、エコノミスト、政治学者ら約35人が、朝鮮半島の74年にも及ぶ分断の終焉に貢献するという文脈の下で、2つの問題について検証した。(原文へ)
INPS Japan
This article was produced as a part of the joint media project between The Non-profit International Press Syndicate Group and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.
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