SDGsGoal16(平和と公正を全ての人に)フランス、核軍縮に関する立場は曖昧

フランス、核軍縮に関する立場は曖昧

【パリIPS=アレシア・D・マッケンジー】

北朝鮮が米国に対して自国の「核抑止力」を強化すると威嚇する中、核開発を巡る国際的な論戦に拍車がかかっている。その中にあってフランスのような国々がとっている立場は、一部の専門家達の間で「曖昧」で「偽善的」とみられている。

フランスと英国は、西ヨーロッパにおける核保有国である。フランスの公式な立場は核兵器の備蓄量を削減し核実験は停止すべきというものだが、ニコラ・サルコジ政権は、未だ核廃絶を目指すとの公約は行っていない。

しかし一方で、サルコジ大統領は外国の特定の国々が核兵器を開発することについては認めない立場をとっている。彼は6月に米国のバラク・オバマ大統領と行った共同記者会見の中で、北朝鮮とイランに対して核兵器開発をしないよう警告を発した。

サルコジ大統領は、5月の北朝鮮による核実験を非難した後、「イランには、民生用に原子力エネルギーを活用する権利があるが、それを転換して核武装する能力を獲得することは認められない。」と語った。

しかし専門家の中には、このようなフランスの立場を、表裏のある偽善的なものとみている人々もいる。

「こうした主張は全て偽善的です。」とフランスの主要反核連合Sortir du Nucleaire Network(841団体が加盟)のスポークスマン、ピエール・エマニュエル・ベック氏は語った。

 
「民生用核開発計画を核兵器から切り離すことはできません。例えばフランスがリビアのような国々に原発施設を売却した段階で、核爆弾開発がそう遠くない未来に続くであろうということは、誰もが知っていることです。」と、ベック氏はIPSに対して語った。

「フランスは『曖昧な』立場をとっている。」と、ベック氏は付け加えた。サルコジ大統領はフランスの核弾頭を削減したいと考えているが、フランス政府は、米ロ両国が膨大な核兵器の備蓄を維持し続け、一方でイランや北朝鮮のような「政情不安」な国々からの脅威が存在する中で、核軍縮に踏み切ることに慎重な態度を示している。

フランスは、昨年9月までに空中発射の武器を全体の3分の1削減し、保有する核弾頭数を約300発までに減らしたと主張している。

サルコジ大統領は、世界の軍縮は、相手方が兵器を削減すれば自らも兵器の削減に応じるとする「相互主義」に基づいて行われるべきと述べているが、専門家の中にはこの考え方を「受け入れられない」として批判するものもいる。

またフランス政府は、同国は当初の5大核保有国の中で唯一、核実験場と核分裂性物質製造施設を自ら放棄した国だと主張している。この点について他の核保有国は具体的な対応を明らかにしておらず、来年5月に開催予定の核不拡散条約(NPT)運用検討会議を前に状況は益々不透明となっている。2010年NPT運用検討会議は、前回の5年前の会議と同様、核軍縮を求める人々にとって失望に終わる可能性がある。

「議論が現在のようなレベルで留まっている限り、核軍縮は近い将来実現しそうにない。核兵器保有能力を持つということは力の象徴であり、各国は経済援助を含む多くの要求事項を満たす交渉手段として核カードを行使しているのです。」と、ベック氏は語った。

「北朝鮮、イラン、イスラエル、インド、パキスタンといった『新核保有国』は、今後も核開発計画を推進する権利を主張し続けるとみられるが、これらの動きに対する当初の5大核保有国(フランス、英国、中国、米国、ロシア)の態度は不十分な点が多い。」と専門家達はみている。

「北大西洋条約機構(NATO)加盟国の殆どの国民は、自らの政府が引き続き核兵器の使用を容認しているという現実を理解していないのです。」と、核軍縮・不拡散議員連盟(PNND)の共同議長であるウタ・ツァプフ氏は語った。PNNDは、核兵器政策に関する最新の情報を政策責任者に提供している国際ネットワーク組織である。

またツァプフ氏は、「NATO加盟国の国民はまた、ベルギー、ドイツ、イタリア、オランダ、トルコといった加盟国は今でも米国の核兵器を有事には使用する目的で配備し続けている現実を理解していない。」と語った(フランスは今年になってNATOに43年ぶりに復帰した)。

「核兵器は地雷やクラスター爆弾と同様、無差別、非人道的、不道徳且つ非合法なものです。全ての核兵器は禁止され破棄されなければなりません。」とツァプフ氏は付け加えた。

Sortir du Nucleaire Networkによると、フランスの団体の中にも、政府が民生用原発事業を縮小し、より多くの資金を再生可能エネルギーに投資すべきと考えているところがいくつかある。フランスでは消費エネルギーの約80%を国中に建設された59の原発施設から得ている。

ジャンルイ・ボルロー(Jean-Louis Borloo)エコロジー・エネルギー・持続的開発相によると、フランス政府は2011年までに国内各県に太陽エネルギー発電施設を建設予定である。しかし、この計画が同国の原発政策にどのような影響を与えるかは今のところ未定である。 

 フランス政府は、189カ国が締結しているNPT運用検討会議に向けた準備段階で、自国及び欧州パートナー諸国の核政策に関する原則の輪郭を描こうとしている。 
 
サルコジ大統領は、6カ月毎に交代する欧州連合の議長国をフランスが務めた際、核軍縮に向けた欧州連合提案をまとめた書簡を潘基文国連事務総長に送った。

昨年12月に記されたその書簡には、「欧州は、それがたとえテロとの戦いであれ、大量破壊兵器の拡散防止や方向性を是正するためであれ、或いは危機管理のためであれ、平和のために行動することを望んでいます。そしてそれが軍縮問題、とりわけ核軍縮の問題であっても欧州の姿勢は変わりません。欧州諸国は、その内2カ国の主要加盟国が核兵器所有国であることから、核軍縮の問題に対して特別な関心を持っています。」また、「欧州提案には、包括的核実験禁止条約(CTBT)の締結と検証体制の確立、そして透明性を確保し国際社会に開かれた形での核実験施設の一刻も早い放棄が含まれている。」と記されている。

サルコジ大統領は、「欧州連合は、放射性物質の生産を即時一時停止すると共に、核兵器製造のための放射性物質生産を禁止するための交渉を開始することを要求している。」と語った。

6月、サルコジ大統領はイランについて言及した中で、「私達はイランとの平和と対話を望んでいます。また私達はイランの開発を支援したいとも思っています。しかし、私達は核兵器の拡散は望みません。」と語った。

翻訳=IPS Japan浅霧勝浩

This article was produced as a part of the joint media project between Inter Press Service(IPS) and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

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