【ラマラ(ウエストバンク)IPS=メル・フリクバーグ】
イスラエル海兵隊は最近、ガザ沿岸7海里で操業していたパレスチナ漁船から国際平和活動家3人を連れ去った。彼らは、漁師がイスラエル海軍の銃撃や逮捕を受けずに1日の仕事に従事できるよう、パレスチナ漁師15人に付き添っていたのだ。
パレスチナ人の権利擁護団体「国際連帯運動」(ISM)のメンバーである米国人のダーレーン・ワレック(57)、英国人のアンドリュー・マンシー(34)、イタリア人のヴィットリオ・アリッゴニ(33)の3人は、漁民に付き添っている際イスラエルの砲艦2隻と小型海軍船5隻に包囲されてしまった。
20人の海兵隊員が漁船に乗り移り、ティーザーや銃を突きつけてISMメンバーとパレスチナ漁師を海軍船に移動させた。イスラエルの領海から遥か離れたパレスチナの領海であったにも拘わらず、連帯の活動家はテルアビブのベングリオン国際空港にある拘置所に移送され、そこから強制送還された。パレスチナの漁師たちは、取り調べの後ガザへ送り返された。
ガサの漁師たちが、命と財産の危険をも顧みず日々の生活のためイスラエル海軍に追われながら操業しているのを知り、活動家たちは最近数カ月間、彼らの毎日の漁に付き添っていたのである。
1994年のオスロ合意の下では、ガザの漁師は沖合20海里の出漁を認められていた。2000年の第2抵抗運動、インティファーダの勃発、イスラエル兵士の拘束、イスラム抵抗組織ハマスの領土奪取後、イスラエルは治安を理由にこれを6海里に短縮した。
イスラエルの規制線を乗り越えたとして過去2年間に3人のパレスチナ人漁師が射殺されたが、例え制限内に留まっていても銃撃は避けられない。多くの漁師が怪我をし、漁船を没収され、返還された時には漁に必要な機材は無くなっている。
イスラエルの人道団体「ベツレム」は、報告書の中で、イスラエル海軍は逮捕された漁師の多くに屈辱や虐待を加えていると述べている。
国際活動家とともに逮捕された漁師の1人、カレド・アル・ハビール氏は、「通常、イスラエル兵は自動火器で漁船および漁船周辺を撃ってくる。そして高圧水砲で漁船に水をかける。逮捕すると、下着姿にして海に飛び込ませ、冬でも泳いで彼らの船まで行かせるのだ。そこで手錠されイスラエルの尋問センターに連れていかれる」と語る。
国連は、採算性の高い大型魚群に近づくためには、ガザから少なくとも12-15海里の沖合に出る必要があると予測する。
浅瀬の乱獲により沿岸付近の小型魚群は殆ど獲りつくされ、回復の可能性はない。更に沖に出れば、より採算性の高いマグロもいるのだが。
1回の漁のコストは、漁船、魚網/乗組員のサイズにより125ドルから625ドルかかる。多くの漁師はコストを賄うだけの魚を獲ることができないが、漁に出る以外の選択肢はない。
国連によれば、パレスチナの月間漁獲総量は、2000年6月の823トンから2006年後半には50トンに減少したという。
90年代末には、ガザの漁業は年間1千万ドル、国内総生産の4パーセントの収入をあげ、魚の一部は輸出され、残りは国内市場を満たしていた。
2001年から2006年の間に、この収入は半減した。栄養失調に苦しみ必要な医療サービスも受けられず貧困、失業に苦しむガザ市民は、現在イスラエルから魚を輸入しなければならない状態だ。
ガザで約10年活動を行っているデンマーク国際開発支援(DANIDA)のフィン・エッベセン氏は、「市場は魚に餓えているが、彼らを養うに十分な漁獲はない」と語る。
国連食糧機関(WFP)パレスチナ領土オペレーションのジャン・ルーク・シブロ元代表は、「これがすべてを失った人々の状況であり、彼らの食糧安全保障は極めて不安定だ」と語る。
漁民支援のため、WFPは数年前、実施機関のDANIDAと共に漁民1,470世帯あるいは最も深刻な紛争被害を受けている8,820人を対象に「仕事のための食糧・訓練のための食糧」プロジェクトを開始した。
シブロ氏は、「家庭にとって最も大切なのは、彼らが直面している人道危機の影響を緩和するためのクッションとなる生活費獲得の代替方法を探すことである。食糧支援物資を提供することで、WFPは彼らがそうできるよう支援していこうとしている」と語る。
漁船と魚網の保全用にガザの漁民は、WFPから毎月小麦粉、砂糖、オリーブ油、レンズ豆の配給を受けている。
しかし、イスラエルは、ガザに対する輸出入禁止策を取っており、2007年6月にハマスが政権を取って(2006年の選挙で合法的に政権を樹立)以来、国境を閉鎖。時々最低量の支援物資輸送のため気まぐれ的な国境開放を行うのみだ。
最近数週間は殆ど完全封鎖状態で、1回2-3時間の開放を時々行っているだけだ。これによりガザへの人道支援物資は極度に制限され、ガザ市民生き残りのための支援プロジェクトも機能しない状況だ。(原文へ)
翻訳=IPS Japan浅霧勝浩
関連記事:
|イスラエル-パレスチナ|古い対立をかき消す新たなメッセージ