ニュース|グアテマラ|長年にわたる恐怖の警察活動記録がオンラインに

|グアテマラ|長年にわたる恐怖の警察活動記録がオンラインに

【グアテマラシティ―IPS=ダニーロ・ヴァラダレス】

1960年から96年の内戦期に行われた拷問や強制失踪、殺戮に光をあてることとなる数百万件にのぼる国家警察文書が、米国テキサス大学オースティン校の協力により、まもなくオンラインで利用可能になる。

デジタル文書は、2005年に偶然発見された約8000万件もの膨大な警察管理記録のうち、同大学が修復・整理した約1200万件の資料で、大学構内で12月2日に開催された国際会議(Politics of Memory conference)において初めて公開された。

「グアテマラ国家警察歴史アーカイブ(AHPN)のオンラインデジタル所蔵庫は、まもなく一般の人々に、無条件で利用可能となります。」とAHPNの専門家の一人でもあるアルベルト・フエンテス氏は語った。

 「このオンライン所蔵庫には2種類の情報が収められています。つまり、グアテマラにおける犯罪と暴力関連の事件を記録した資料と、社会統制やとりわけ反体制派政治家を対象とした監視活動の記録です。」とフエンテス氏は説明した。

「私たちは今まで、90万件以上の個人に関する名前や写真、指紋、政治活動を詳細に記録した調査書類を発見しています。」とフエンテス氏は語った。

2005年7月、グアテマラの人権オンブズマン組織「The Procuraduría de los Derechos Humanos」が首都グアテマラシティの北部にある兵器庫で、放棄されていた文書を偶然発見した。記録ファイルは、乱雑に束ねられた状態で、ネズミ、コウモリ、ゴキブリが巣食う何十もの部屋に天井までうず高く積み重ねられていた。そしてその多くが、既に激しく腐敗した状態であった。

この1882年から1997年にわたる警察の管理記録は、左翼反乱勢力と政府軍が36年に亘って戦い25万人の死者を出した内戦において、警察が果たした抑圧的な役割を克明に記録している。

歴史解明委員会によると、これらの資料には治安部隊によって捕えられ、強制的に失踪させられた後、墓標のない墓や秘密墓地(多くの場合、軍事基地内)に遺体を埋められた少なくとも45,000人の記録が含まれている。

国連委任の真実委員会は、内戦で殺害された犠牲者(大半は農村部のマヤ・インディアン)の総数の90%以上がグアテマラ国軍によって殺害されたものと確認した。

2005年に明るみに出た管理記録は、内戦中及び内戦前において国家警察が果たした役割について記録している。AHPNでは、厳重な管理体制を敷いたうえで、2006年から傷んだ記録のクリーニングとデジタル化に取り掛かった。

この管理記録には、逮捕状、調査報告書、身元証明書、尋問記録、無線通信の記録、抑留者とその密告者のスナップ写真、身元不明の遺体の写真、指紋ファイル、さらに日常の品々(交通違反チケット、運転免許証申請書、新制服と職員ファイルの請求書等)や写真と名前を満載した元帳が含まれている。

今までのところ、1300万件の記録がクリーニング、分類の後、デジタル加工されている。

この警察管理記録は、既に内戦中の人権侵害容疑で起訴された元軍関係者を審理しているいくつかの公判で、原則側の証拠として使用されている。

「フェルナンド・ガルシアという労働組合員で学生リーダーに関する公判では、この警察管理記録から667件もの証拠資料が提供されました。」とフエンテス氏は語った。

ガルシア氏は1984年2月18日に失踪した。しかし彼の死に責任がある2人の元警察官に強制失踪の罪で禁固40年の判決が下ったのは、彼が失踪してから実に26年も経過してからのことだった。

フエンテス氏は、AHPNアーカイブの文書はこのほかにも、1978年から85年の間に300人以上の虐殺に関与した疑いがあるエクトール・ロペス退役将軍や、ガルシア氏の失踪に関与した疑いがあるエクトール・ボル元警察署長の逮捕につながる証拠を提供した。

「アーカイブの文書は、司法制度を通じて逮捕状を発行し、容疑者に裁判を受けさせるための証拠品として使われているのです。」とフエンテス氏は語った。

正義が行われることこそが、この窮乏した中米の国に和解をもたらすうえで、極めて重要なことである。

内戦中父を暗殺されたアダ・メルガー氏はIPSの取材に対して「陸軍将校や最高司令部がこの国で行われた数千人もの虐殺や殺人に明らかに関与していたということが証明されてはじめて、私たちはある程度の平和を実感できるのです。」と語った。

虐殺には、軍部が1970年代末から80年代初頭に採用した対ゲリラ焦土作戦の一部としてグアテマラ全国で約440の先住民の村が殲滅させられた事件が含まれている。

「私たちは国を訴えました。なぜなら、父の死は治安部隊による陰謀と確信しているからです。」とメルガー氏は語った。彼女の父ウーゴ・ロナルド・メルガー氏はサン・カルロス大学の法学教授だったが、1980年5月24日にマシンガンで殺害された。

AHPNアーカイブを調べているアダ・メルガー氏は、「この中に当時捕えられて失踪した多くの男女と一致する警察に拘束された人々のリストの存在を証明する貴重な資料が眠っている」と確信している。

また法医学専門家も、AHPNアーカイブの中に失踪者と警察犯罪のミッシングリンクを繋ぐ手がかりを発見している。

「私たちが最初に見た写真は、身元不明の数体の遺体でした。しかしAHPNアーカイブを調べていくうちに、警察はこれらの遺体から採取した指紋も記録していたことが分かったのです。今ではAHPNアーカイブは、内戦中に失踪した人々を捜索する際の、一次情報源となっています。また私たちは、南部のエスクィントラの墓標のない墓に埋められた遺体を特定する多くの記録をアーカイブから発見しています。」とグアテマラ法医学人類学財団(FAFG)のシスタントディレクターであるホセ・スアンスバール氏は語った。

グアテマラ被拘束者・行方不明者家族の会(FAMDEGUA)のアウラ・エレナ・ファルファン氏は、IPSの取材に対して、「AHPNアーカイブは極めて重要な存在です。お蔭で私の家族に関する記録を見つけることができましたし、この件を法廷に訴えるうえで重要な助けとなっています。ただ私たちが心配しているのは、今や調べられる側となった内戦中に抑圧に関与した全ての人々が、このアーカイブの存在を消し去りたいと望んでいることです。」と語った。

しかしAHPNとテキサス大学オースティン校の3機関(Bernard and Audre Rapoport Center for Human Rights、Teresa Lozano Long Institute of Latin American Studies、テキサス大学図書館)の協力のお蔭で、1200万ページに及ぶアーカイブ資料が、今ではオンラインで誰でも閲覧可能になったのである。
同校で開催された国際会議(Politics of Memory conference)によると、このプロジェクトの目的は、グアテマラ国家による抑圧の歴史を既に書き換える助けとなる有力な証拠を提供し始めたこのアーカイブを、世界の研究者、人権活動家、検察官に開放することによって、この歴史的な記録を「グアテマラの歴史の記憶に資する生きたアーカイブ」とすることにある。

「このアーカイブをオンライン化することで、世界中の人々‐失踪した友人や家族を探している人から、国家による抑圧・監視機関について調べている人やグアテマラへの米国の関与について調査している人まで‐この資料を利用して調べることが可能となるのです。」と、フエンテス氏は語った。(原文へ

INPS Japan浅霧勝浩

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