【ブルックリン・カナダIPS=スティブン・リーヒ】
1月29日、インド政府とスイスの大手製薬約会社Novartis AGの医薬品パテント(特許)を巡る裁判が、インド最高裁判所で開始された。
「国境なき医師団」(MSF)基本医薬品アクセス・キャンペーン担当のTido von Schoen-Angerer部長は、「インドは世界の貧しい人々のための製薬会社となった。開発途上国のHIV/ AIDS患者の半数強は、インドが供給する低コストのジェネリック医薬品に依存している。しかし、Novartisが勝利すれば、インドのジェネリック医薬品産業は消滅する」と語る。
同氏によれば、 UNAIDS3x5や米国際開発局の大統領エイズ救援緊急計画といった多数の国際保健プログラムもインドのジェネリック医薬品を使用し、数百万ドルのコスト削減を行っているという。
WTOは、2001年のドーハ会議で、公衆衛生の危機に当たってはパテントを無視し、開発途上国に対しジェネリック医薬品の製造および輸出を認めると宣言した。しかし、大手製薬会社はドーハ宣言を無視し、自由貿易合意と法的手段により知的所有権(IP)の強化を図っている。カイロを拠とする保健活動家の国際連合組織「 People’s Health Movement 」の共同主催者であるアミト・セン・グプタ氏は、「我々はインド政府に対し、パテントや利益よりも人々の健康を優先する法律を制定するよう強く働きかけてきたが、Novartisはこのパテント法を覆そうとしている」と言う。
Novartisのスポークスマンはニューヨークにおいて、「当社は、医薬品を必要としている人々の99%に薬を無料配布する。今回の裁判の争点はパテント保護であり、生命維持に必要な薬のアクセスは問題ではない」と語っている。Novartisは、強力なパテント保護がなければ、企業は新たな薬の開発に投資する意欲を失ってしまうと主張しているのである。
MSFの政策担当エレン・ホーエン部長は、「製薬産業は年間6千億の大産業であり、利益獲得の機会は多いはずだ。我々は、新たなそして手頃な費用の医薬品開発/製造を必要としている」と語っている。(原文へ)
翻訳/サマリー=IPS Japan