ニュースブラックリストに載ったシリアが被災を機にカムバックを果たす

ブラックリストに載ったシリアが被災を機にカムバックを果たす

【国連IDN=タリフ・ディーン】

人権侵害、戦争犯罪、化学兵器の使用で告発されたシリアのバシャール・アル・アサド大統領は、国連総会で演説したことも、国連に足を踏み入れたこともない権威主義的な中東の指導者の一人である。

12年にわたる内戦で国民を残虐に弾圧してきたことで、米国や西側諸国からブラックリストに載せられたアサド大統領は、国連を軽視していたか、或いは本国を離れたら政権を追われることを恐れてシリアに留まったのだろう。

A poster of Syria's president at a checkpoint on the outskirts of Damascus, Jan. 14 2012./By Elizabeth Arrott - A View of Syria, Under Government Crackdown. VOA News photo gallery, Public Domain
A poster of Syria’s president at a checkpoint on the outskirts of Damascus, Jan. 14 2012./By Elizabeth Arrott – A View of Syria, Under Government Crackdown. VOA News photo gallery, Public Domain

2月6日の地震では、主に反政府勢力が支配するシリア北西部で、数千人のシリア人が死傷したと伝えられている。

皮肉なことに、この地震はアサド大統領にとって不幸中の幸いだった。彼は、サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)など、かつてシリアに対して非友好的だった国々から数百万ドルの財政・人道支援を受けているのである。

アラブ諸国では、UAEが約1億ドルを寄付したとされ、また、シリアを22カ国からなるアラブ連盟(現在21カ国)に復帰させようという動きも報じられている。

ロイターの報道によると、サウジアラビアのファイサル・ビン・ファルハン外相は、先日のミュンヘン安全保障会議で、アラブ諸国ではシリアを孤立させても効果がなく、少なくとも難民の帰還を含む人道問題に取り組むために「ある時点で」シリア政府との対話が必要だというコンセンサスが形成されている、と述べたという。

2月17日付のニューヨークタイムズの記事の見出し「シリアの地震は、のけ者国家が再び世界の舞台に這い戻る助けとなった。」は、的を射ていた。

U.N. spokesperson Stephane Dujarric/ UN Photo
U.N. spokesperson Stephane Dujarric/ UN Photo

2月22日、記者会見したステファンドゥジャリク国連報道官は、「17台のトラックが、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)、WFP(世界食糧計画)、WHO(世界保健機関)が提供する援助物資を積んでバブ・アルハワとバブ・アル・サラームの国境検問所を通過した。」と語った。

2月9日以降、合計282台の国連トラックが3つの国境検問所を通過してシリア入りした。

「同僚によると、今回の地震で特に大きな被害を受けたのは保健セクターで、シリア北西部だけで47の保健施設が被害を受けたと報告されている。12の医療施設は業務を停止し、18は部分的にしか機能していない。」とデュジャリック報道官は語った。

国連とパートナー(主に人道支援団体)は、トルコからシリア北西部への国境を越えた支援活動の規模を拡大している。

現在、シリアでは、55名の国際要員と810名の国内要員が活動している。

先週、国際移住機関(IOM)からのシェルターなどを積んだトラック10台が、アルラエ国境検問所を通過してアレッポ北部に入った。

デュジャリック報道官は、「シリア政府が援助物資の輸送にこの国境検問所を利用することに合意して以来、国連輸送チームがここを通過したのは初めてであり、これで国連が全面的に利用している国境検問所は3カ所になった。」と語った。

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)、国連開発計画(UNDP)、国際連合人間居住計画は、建物の構造的被害状況を評価するための支援を行っている。これらの評価は、被災者が安全に自宅に帰宅できるかどうかの判断材料になっている。

デュジャリック報道官は、「より広範な地震対応に資金が不可欠であることに変わりはない。」と語った。2月20日現在、シリア・フラッシュ・アピールは、3億2910万ドルの計画に対して6850万ドルを受け取り、17%の資金を調達している。

米国国務省のファクトシートによると、2月6日にトルコ南東部とシリア北部を襲った地震は、数百万人の人々に壊滅的な打撃を与えたという。

最初の地震から数時間以内に、米国はジョー・バイデン大統領の指示のもと、連邦政府機関やパートナーを迅速に動員し、NATO同盟国のトルコやシリアのパートナー組織と緊密に連携して、緊急救命支援を提供した。

バイデン大統領は、「トルコとシリアで発生した未曾有の大地震に対応するため」、緊急難民移住支援基金(ERMA)に5000万ドルを承認する意向である。

さらに、米国は国務省とUSAIDを通じて5,000万ドルの人道支援を行っている。これにより、トルコとシリアの地震対応を支援するための米国の人道支援総額は、現在までに1億8500万ドルに達している。

米国は、「シリアのすべての被災地に対する人道的アクセスを拡大することにコミットしており、国連がバブ・アル・サラマ国境検問所へのアクセスを再開し、援助がシリア北西部に届くように計らったトルコ政府に感謝している。また、トルコとシリアの被災地に支援が届くよう、より多くの国境検問所を持続的に開放するよう働きかけている国連の取り組みを支持している。」としている。

© UNOCHA/Madevi Sun Suon UN agencies are transporting earthquake relief items from Türkiye to northwestern Syria.
© UNOCHA/Madevi Sun Suon UN agencies are transporting earthquake relief items from Türkiye to northwestern Syria.

米国財務省は、米国による制裁がシリアにおける人道支援の提供を妨げたり抑制したりしないことを強調するために、現行の制裁を回避してシリアの人々への災害救援支援のための追加的な権限を提供する広範な許可書を発行している。(原文へ

INPS Japan

関連記事:

減災には弱者に配慮した救援計画が不可欠

|シリア|教育を受けるために地下に潜ることを強いられる子どもたち

震災から10年のハイチに国連が懸念

最新情報

中央アジア地域会議(カザフスタン)

アジア太平洋女性連盟(FAWA)日本大会

2026年NPT運用検討会議第1回準備委員会 

「G7広島サミットにおける安全保障と持続可能性の推進」国際会議

パートナー

client-image
client-image
IDN Logo
client-image
client-image
client-image
Toda Peace Institute
IPS Logo
Kazinform

書籍紹介

client-image
client-image
seijikanojoken