SDGsGoal5(ジェンダー平等を実現しよう)国連報告書、詐欺拠点に人身取引された人々への重大虐待を詳述

国連報告書、詐欺拠点に人身取引された人々への重大虐待を詳述

【ジュネーブIPS=国連人権高等弁務官事務所】

国連人権高等弁務官事務所が2月23日に公表した報告書は、世界各地の数十カ国から、主に東南アジアに定着した詐欺拠点へ人身取引された数十万人の被害実態を、生存者の証言とともに詳細に記録した。詐欺拠点は東南アジアにとどまらず、さらに広い地域へ拡散しているとしている。

報告書は、拷問やその他の虐待、性的虐待・搾取、強制中絶、食料の剥奪、独房拘禁など、重大な人権侵害を列挙した。生存者はまた、国境当局が勧誘に加担した事例や、警察による脅迫・恐喝についても証言している。

Image credit: Ben Buckland | Association for the Prevention of Torture
Image credit: Ben Buckland | Association for the Prevention of Torture

衛星画像と現地報告によれば、詐欺拠点のほぼ4分の3はメコン地域に集中している。活動は太平洋島嶼国の一部や南アジア、湾岸諸国、西アフリカ、米州にも広がっているという。

「詐欺拠点に置かれた人々が受ける扱いは憂慮すべきものだ」と報告書は結論づけた。報告書は、バングラデシュ、中国、インド、ミャンマー、スリランカ、南アフリカ、タイ、ベトナム、ジンバブエ出身の生存者への聞き取りに基づく。生存者は2021年から2025年にかけて、カンボジア、ラオス、ミャンマー、フィリピン、アラブ首長国連邦(UAE)の詐欺拠点へ人身取引された。さらに、警察・国境当局者や市民社会関係者など、実態を把握する立場の関係者にも聞き取りを行った。

被害者は、虚偽の条件で「詐欺の仕事」に誘い込まれた後、なりすまし詐欺、オンライン恐喝、金融詐欺、ロマンス詐欺などのオンライン詐欺を実行するよう強要されたと証言した。

A UN human rights report has found that people trafficked and forced to work at scam centres are subjected to torture, sexual abuse and prison-like conditions. (representational photo). Credit: UNICEF/Ron Haviv
A UN human rights report has found that people trafficked and forced to work at scam centres are subjected to torture, sexual abuse and prison-like conditions. (representational photo). Credit: UNICEF/Ron Haviv

報告書によれば、こうした運営は移転や形態の変更を繰り返すなど拠点は移転し、運営は姿を変えるという。生存者の一部は、500エーカーを超える敷地に要塞化された多層建築が立ち並び、有刺鉄線を張り巡らせた高い塀で囲まれ、武装した制服警備員が巡回する―「自己完結した町」のような巨大複合施設に拘束されていたと語った。

Jail Source:HRW
Jail Source:HRW

報告書は、スリランカ出身の被害者が「月間ノルマを達成できない者は、水を張った容器に何時間も沈められる『水の牢獄(water prisons)』と呼ばれる罰を受けた」と証言したと紹介している。今回の報告書は、国連人権高等弁務官事務所が2023年に公表した報告書の更新版である。

報告書はさらに、服従を確保するため、他者への重大な虐待を目撃させたり、場合によっては虐待を加えるよう命じたりしたとする証言を紹介した。バングラデシュ出身の被害者は、他の労働者を殴るよう命令されたと証言し、ガーナ出身の被害者は、友人が目の前で殴打されるのを強いられたと語った。

脱出を試みて命を落とした例もある。報告書は、複合施設からの逃走中にバルコニーや屋根から転落した事例を挙げている。

救出の試みが失敗した場合の懲罰も苛烈だったという。ベトナム出身の被害者は、姉の逃走を手助けしようとした妹が殴打され、スタンガンで感電させられ、食料のない部屋に7日間閉じ込められたと証言した。

報告書はまた、加害者が家族にビデオ通話をかけ、虐待の様子を見せつけることで、法外な身代金の支払いを迫った事例も確認したとしている。

被害者の多くは「賃金は支払われた」と述べたが、聞き取り対象者全員が、さまざまな名目で控除が段階的に増やされたと証言し、約束された給与を全額受け取った者はいなかった。タイ出身の被害者は、罰金や暴行、さらにはより過酷な環境の別拠点へ「売られる」ことを避けるため、1日あたり約9,500米ドルという高額な詐欺ノルマを課されたと証言した。

Volker Türk, United Nations High Commissioner for Human Rights, in Helsinki © Lauri Heikkinen, valtioneuvoston kanslia - FinnishGovernment, CC BY 2.0
Volker Türk, United Nations High Commissioner for Human Rights, in Helsinki © Lauri Heikkinen, valtioneuvoston kanslia – FinnishGovernment, CC BY 2.0

国連人権高等弁務官のフォルカー・テュルク氏は、「虐待の実態は衝撃的で、胸が痛む」と述べた。そのうえで、「本来保障されるべき保護、ケア、リハビリテーション、そして正義と救済への道筋が与えられるどころか、被害者はしばしば疑われ、烙印を押され、さらなる処罰に直面している。」と強調した。

テュルク氏は、対策は人権法と国際基準に基づくべきだとしたうえで、「とりわけ、人身取引対策法制の中で『強制された犯罪行為(forced criminality)』を明確に認識し、人身取引被害者に対する『不処罰原則(non-punishment principle)』を保障することが決定的に重要だ」と述べた。

またテュルク氏は、被害者には「連携の取れた、迅速で、安全かつ効果的な救出作戦」が必要だとし、送還禁止原則(ノン・ルフールマン)の尊重に加え、拷問やトラウマのリハビリテーション、報復や再被害(再度の人身取引)のリスクに対処する支援体制の整備も求めた。

報告書は、行動科学とシステム分析を独自に適用し、なぜ人々が詐欺拠点への詐欺的な勧誘に繰り返し巻き込まれるのかを検討するとともに、人権に根ざした実効的な予防策を提案している。

テュルク氏は、安全な労働移住のルートをより利用しやすくする必要があると述べ、オンライン求人情報の検証や、疑わしい勧誘パターンの把握など、募集過程に対する実効的な監督を求めた。

さらに同氏は、各国政府や関係主体は、被害リスクが高いとみられる人々への働きかけにあたり、生存者主導のグループなど、信頼される地域に根差した主体と連携すべきだとした。啓発活動は、具体的で分かりやすく、信頼できるメディアを通じて提供される必要があるという。

テュルク氏はまた、巨額の利益を生む詐欺産業に深く根付いた腐敗に対し、各国と地域機関が実効的に取り組み、背後で動く犯罪シンジケートを訴追するよう促した。併せて、独立メディア、人権擁護者、市民社会組織が妨害を受けることなく人身取引対策に取り組める環境の重要性も改めて強調した。(原文へ

INPS Japan/IPS UN Bureau Report

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