SDGsGoal7(エネルギーを皆にそしてクリーンに)|カザフスタン|IAEAの低濃縮ウラン(LEU)備蓄バンクが運営開始

|カザフスタン|IAEAの低濃縮ウラン(LEU)備蓄バンクが運営開始

【ウィーンIDN=ラインハルト・ヤコブセン】

国際原子力機関(IAEA)は、カザフスタンに設置した「低濃縮ウラン(LEU)備蓄バンク」が運営可能になったと発表した。低濃縮ウラン(LEU)バンクは、ウラン濃縮能力のない国々が安定した核燃料提供を受けられるようにすることで、核不拡散条約が加盟国に認めている「核の平和利用」を保障すると同時に、核不拡散の強化に貢献することを目的としている。

IAEAは10月17日に最初の核燃料の納入を受け、正式に運用可能になったと発表した。IAEAが保有しカザフスタンが管理する同バンクは10月17日に最初の核燃料の納入を受け、正式に運営を開始した。IAEAは1957年の創立以来、最も意欲的かつ挑戦的なプロジェクトが本格的に始動したとしている。

「最初の納入を得て、IAEA低濃縮ウランバンクは開設され運営可能となりました。法律、運営、ロジスティクスの面でこれほど複雑な事業にIAEAが取組むのは初めてのケースとなります。」と、コルネル・フェルータIAEA事務局長代行は語った。

設立経費とその後20年間の運営費については、IAEA加盟国および、米国の民間団体「核脅威イニシアチブ(NTI)」、米国、欧州連合(EU)、アラブ首長国連邦(UAE)、クウェート、ノルウェー、カザフスタンから合計約1億5,000万ドルが拠出されている。さらにカザフスタン政府は、低濃縮ウラン(LEU)備蓄バンクをホストすることで現物出資を行っている。

「このプロジェクトを実現するために寛大な貢献をしてくれた拠出国・団体と貴重な協力の手を差し伸べてくれたカザフスタン、中国、ロシア政府に感謝したい。」とフェルータ事務局長代理は語った。

NTI Co-Chair and CEO Ernest J. Moniz./Photo by Katshiro Asagiri
NTI Co-Chair and CEO Ernest J. Moniz./Photo by Katshiro Asagiri

「これはIAEAとカザフスタン政府にとって歴史的な偉業であるとともに、LEU備蓄バンクを実現するためにあてられた尽力に感謝したい。」「故天野IAEA事務局長が、彼の功績の主要な部分をなすこのプロジェクトが成就したこの瞬間に一緒にいられないのは残念だ。」とNTIのアーネスト・モニツ共同議長兼CEOは語った。

このプロジェクトを結実されるにはIAEAの活動が網羅する多くの分野において協調した取り組みが必要だった。プロジェクトには以下の内容が含まれる:

・IAEA低濃縮ウランバンクの法的な枠組みについて、カザフスタン政府及び施設の運用主体となるオスケメン市にあるウルバ冶金工場(UMP)との交渉。

・IAEAの安全基準及びセキュリティ保障に沿って低濃縮ウラン貯蔵施設を設計及び建設。

・カザフスタン政府と協力して関連の法律や規制の枠組みを強化する作業

・低濃縮ウランの同施設への搬出及び同施設からの搬入について、中国及びロシアと運搬物の国内通過に関する最終合意の締結、また、カザフスタンのKTZ Express JSK社やロシアのTENEX JSC社との運搬契約の締結。

・ IAEAが入手する量としては史上最大規模となる90トンを2社から調達。

今回、オラノ・サイクル社から出荷されたシリンダー32本分のLEU(=典型的な100万kW級軽水炉に装荷される1回分の取替用燃料に十分な量)は、まずフランスの港までトラックで輸送され、その後海路でロシアに到着。そこから列車により、カザフスタン北東部オスケメン市にあるウルバ冶金工場(UMP)の特設貯蔵施設に運ばれ、現地でIAEAの専門家らによる検査を受けた。IAEAは今年末までには、カザフの国営原子力企業カザトムプロムから2回目の積荷を受け取ることになっている。

IAEA Director-General Yukiya Amano (left) with Kazakh President Nursultan Nazarbayev with the symbolic key to the IAEA-LEU Bank. Credit: Official Site of the President of the Republic of Kazakhstan
IAEA Director-General Yukiya Amano (left) with Kazakh President Nursultan Nazarbayev with the symbolic key to the IAEA-LEU Bank. Credit: Official Site of the President of the Republic of Kazakhstan

現地で核燃料の引き渡しを監督し関連書類の署名したIAEAのマルタ・フェラーリ氏は、「運搬距離が膨大なことから、LEUを貯蔵施設まで運ぶのに4週間かかりました。これを成し遂げるには、このプロジェクトに参画している多くのパートナー間の調整が必要でした。今回の経験を通じて、実際に加盟国からLEUの提供要請があった場合、今回の運搬ルートを活用できるという自信と貴重な経験を得ることができた。」と語った。

このプロジェクトは今回の低濃縮ウラン搬入をもってようやく運営に漕ぎ着けたが、貯蔵施設そのものは2017年8月に故天野之弥IAEA事務局長(当時)とヌルスルタン・ナザルバエフ大統領(当時)が正式に開設していた。(開会式典をIDN/INPSが取材した映像はこちらへ

IAEA理事会は2010年12月に、核燃料供給について予測不能で経済的事情とは関係のない問題が発生した場合でも、安定的にLEUを取得できるようIAEA加盟各国に保障を与える最終的なメカニズムとして、IAEA低濃縮ウランバンクの設立を決定した。一般的な軽水炉の燃料製造に適した低濃縮ウランを最大90トン(=大都市の電力を約3年間賄う量に相当)備蓄する予定だ。(IDN/INPSがIAEA低濃縮ウランバンクを取材した映像はこちらへ

IAEAの承認の下で設置された他の核燃料供給メカニズムとしては、ロシア・アンガルスク国際ウラン濃縮センターで同国がIAEAの監視下で運営するLEU備蓄や、英国によるLEU濃縮作業の提供保証などがある。

今日世界では約450基の原子炉が稼働しており、世界の電力需要の10%(低炭素発電の3分の1)を供給している。(原文へ

INPS Japan

Video documentary filmed by Katsuhiro Asagiri, President of INPS Japan

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