SDGsGoal4(質の高い教育をみんなに)|アフリカ|人材育成に乗り出すインド

|アフリカ|人材育成に乗り出すインド

【ニューデリーIPS=ランジット・デブラジ】

インドのマンモハン・シン首相が5月24日にエチオピアの首都アジスアベバで発表した構想の中で、インド・アフリカバーチャル大学(IAVU)の計画は際立っていた。第2回アフリカ・インドフォーラムサミットで演説したシン首相は、アフリカの開発のために今後3年間で50億ドルを拠出すると約束した。

IAVU構想は、既に大きな成功を収めた「パンアフリカe-ネットワーク」(衛星回線でつないで通信教育を行ったり、遠隔地からの医療行為を行ったりしている)に続くもので、シン首相は「このイニシャチブは、アフリカにおいてインド系高等教育機関への需要に拍車をかけるだろう。」と語った。

インド政府のウェブサイトによると、アフリカで人材育成と様々な新施設を建設するためにインドはさらに7億ドルを投じる予定だという。

Tata scholars at the University of Witwatersrand, Johannesburg Credit: Tata Holdings Africa
Tata scholars at the University of Witwatersrand, Johannesburg Credit: Tata Holdings Africa

 
シン首相は、「インド政府は、技術経済協力プログラム等のスキームを活用して、奨学金の数とアフリカからの学生、専門家を対象とした留学生受入件数枠を大幅に拡充しています。こうした支援を通じて、インドの教育機関における留学経験を豊かなものにしていただきたいと望んでいます。」と語った。シン首相は、IAVUで学ぶ学生1万人にも奨学金を支給する計画についても発表した。

アフリカ各国で大使を歴任したH.H.S.ヴィスワナタン氏は、こうしたシン首相のアフリカ支援戦略について、「明らかにインドは、中国が断然優位にあるインフラ開発の分野に(アフリカ支援の)重点を置くわけにはいきません。しかしインドは情報技術(IT)大国であることから、この分野を基軸に据えることでアフリカ諸国への影響力を拡大していけると考えているのです。」と語った。

またヴィスワナタン氏は、「一般にはあまり知られていませんが、1970~80年代には多くのインド人教師・医師が政府のプログラムでインドからアフリカに渡りました。今日のアフリカ諸国の指導者世代は、このことをよく認識しており、高く評価しているのです。また、2008年にインドの首都ニューデリーで開催された第一回インド-アフリカサミットの直後からインド政府は人材開発部門に焦点をあててきました。従って、今日このアプローチを強化しているのは必然的な流れなのです。」と語った。

今回のシン首相による発表によると、インド-アフリカ生命地球科学大学並びにアフリカ農業・農村開発研究所の設立が計画されている。また、インド-アフリカ中期気象予想センター構想では、人工衛星技術を農業、漁業部門のほか、災害対策、天然資源管理にも活用していく予定である。

また、近い将来完成するインド-アフリカ食品加工物流施設やインド-アフリカ総合繊維パークは、いずれも、アフリカ製品の域内及び海外における輸出市場を創出する助けとなるだろう。

シン首相の人材育成に主眼を置いた構想は、経済界にも歓迎されている。インド産業連盟アフリカ委員会(CII)のサンジェイ・キルロスカル委員長は、「インドの産業界は、こうした能力開発プログラムを通じて、「即戦力」となる人材をアフリカにおいて求めている。」と語った。

キルロスカル委員長は、「インド企業が提供している各種訓練プログラムは、現地のビジネス展開に即したもので、アフリカの研修生は仕事を通じて学び、やがては事業展開を彼ら自身が動かしていけるように構成されています。」と語った。また、インド企業が奨学制度や企業開発スキームを通じて立ち上げた教育、訓練プログラムは、幅広い社会的ニーズを取り扱う内容となっており、「これこそが南南協力(途上国間協力)の真髄なのです。」と語った。

インドの巨大財閥タタグループのヴィカス・ガドレ新規事業担当副社長も同じような見方を示している。タタ社はアフリカ各国において製鉄、車、情報技術、通信など幅広い分野で事業展開しているほか、いくつかの能力開発プログラムを実施していることで知られている。同副社長はIPSの取材に応じ、「わが社は、アフリカ人の技術、管理スタッフに権限を委譲して社の運営を任せられるような大規模な熟練労働力を育てることが現実的かつ収益を生むものだと理解しています。このようなイニシャチブこそが、アフリカ諸国の指導者が、わが社並びにインド政府に対するクレジットとして高い評価しているものなのです。」と語った。

ヴィシュワナサン氏は、「民間部門の参画は、インド政府がアフリカ諸国と政治的、経済的関係を構築していくうえで一助となるものです。」と語り、アフリカ諸国の大半が多党制民主主義体制に移行している現状を考えれば、民間部門の参画は重要であると指摘している。

インド・アフリカ間の貿易実績は昨年で460億ドル。2015年には700億ドルまで伸びると予測されている。インドの民間企業はアフリカ主要国の情報技術、農業器具、車、農業等の部門に対して、今日までに250億ドルを上回る投資を行っている。

インドにおけるアフリカの人材育成戦略について報告する。(原文へ

翻訳=山口響/IPS Japan戸田千鶴

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