【ナイロビIDN=ジャスタス・ワンザラ】
ケニアの首都ナイロビで11月12日~14日の日程で開催されたナイロビ・サミット(ICPD+25)は、1994年の初の国際人口開発会議(ICPD:カイロ会議)が開催されてから25周年の節目となるもので、女性・女児の人権擁護に向けた大胆な公約が採択されて、幕を閉じた。
世界各地から首脳や学者、人権活動家、宗教者ら6000人以上が集ったこの会議では、パートナーらが、2030年までに、妊婦の死亡をなくし、家族計画に関するニーズを満たし、ジェンダーを基礎とした暴力や女性・女児に対する有害な行為をなくすことを誓った。
国連人口基金がデンマーク、ケニア両政府とともに招集したナイロビ・サミットは、包摂的なプラットフォームを提示し、政府や国連機関、市民社会、民間部門、女性団体や若者のネットワークなど幅広いステークホールダーが参加した。
参加者らは、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の達成は、女性や女児、若者が自らの体と命をコントロールでき、暴力のない生活を送れない限り難しいと主張した。
国連人口基金のナタリア・カネム事務局長は、「ナイロビ・サミットは、刷新され一層エネルギーを得たビジョンと、行動し成果をもたらす協働コミュニティーの有り様を映し出したものです。」と指摘したうえで、「共に手を携えていけば、今後の10年を、女性と女児のために具体的な行動を起こし結果を生み出せる10年にすることが可能です。」と語った。
サミットではまた、設定された目標を達成するために必要なコストに関する新たなデータも示された。国連人口基金とジョンズ・ホプキンズ大学がビクトリア大学、ワシントン大学、アヴェニール・ヘルスと協力して行った分析によると、これらの目標を達成するために世界が必要とする額は全体で2640億ドルであるという。
カネム事務局長は記者会見で、こうした投資は3つの目標達成に寄与すると語った。①妊娠するか、するとすればいつか、子どもを何人産むかということに関して女性や思春期の少女が決定するための避妊という、未だに満たされていない目標を満たすこと、②予防可能な妊婦の死亡を防いで、リプロダクティブヘルス/ライツ(女性個人やカップルが子どもを、いつ、何人産むかを主体的に選択する権利)の欠如のために女性が命を失わないようにすること、③ジェンダーを基盤とした暴力と、女性器切除、児童の婚姻及び強制的な婚姻を完全になくすこと。
カネム事務局長はまた、「2640億ドルを『コスト』とは呼びたくありません。むしろ、人類への投資と捉えるべきです。それは、人類が負担を避けられないコストなのです。」と語った。この額には、ナイロビ公約の達成に向けて、今後数年における新規の投資750万ドルと、イノベーションをもたらす投資、民間部門の活性化が含まれる。
カネム事務局長は、「ICPDは包摂的で、レズビアン・ゲイ・バイセクシャル・トランスジェンダー(LGBT)などの社会の片隅に追いやられたいかなる集団も排除されていない。」と強調した。
今回の会議は、若者や草の根活動家といった社会に無視されてきた集団に対して、いかにしてすべての人々の権利と健康を実現するのかという点に関して国家元首や政策決定者と共に取り組む機会を提供した。
カネム事務局長は、これまでの足跡を振り返りつつ、将来も見据えて、「これからの道のりは長いが、カイロ会議以来25年の間に進歩はみられた。」「妊婦死亡率は世界全体で44%も下がりました。つまり、妊娠や出産時に亡くなっていたかもしれない400万人の女性が、現在生きているということです。」「しかし、前進は十分ではありません。女児や女性、あらゆる人々に対してなされた約束が、果たされなければなりません。」と語った。
拠出金については、様々な国々―たとえば、オーストリア・カナダ・デンマーク・フィンランド・フランス・ドイツ・アイスランド・イタリア・オランダ・ノルウェー・スウェーデン・英国に加え欧州委員会―が10億ドルの拠出を公約した。またフォード財団、ジョンソン&ジョンソン、フィリップス、ワールド・ビジョン等の民間部門も、合計で約80億ドルの支出を約束した。
ケニアのウフル・ケニヤッタ大統領は会議で演説して、人口と開発の分野において世界は1994年以来大きく変わりました。」「国家内でも国家間でも不平等は増加し、人口学的には多様性が増しました。一部の国は急速な高齢化を経験しつつあり、また別の国では若者層が史上最大に膨らみつつあります。」と語った。
性の人権を損なうような慣行や政策、法をなくすべきと呼びかけたケニヤッタ大統領は、女性・女児に対する最悪の人権侵害であり続けている女性性器切除をなくす必要性を訴えるとともに、「この4月、ケニア・ウガンダ・タンザニア・ソマリア・エチオピア政府間で、女性性器切除の問題に対して共同で対処する画期的な宣言を行いました。」と語った。
ケニヤッタ大統領は、ジェンダー暴力や差別、虐待の被害者を念頭に、この場にいることができない「最も重要な参加者」のことを心に留めるべきだと訴えた。「私が言っているのは、おそらく最も近しい人からのジェンダーに基づく暴力に苦しむ世界のあらゆる場所の女性の5人に1人のことだ。また、妊娠や出産の際に毎日800人の割合で亡くなっている女性のこと、そして女性器切除のトラウマに苦しんでいる400万人の女性のことだ。」と語った。また、「今回参加していないが重要な人々には、18歳を待たずして婚姻させられている、一日あたり3万3000人以上の女児や、将来に展望を持つことのできない数多くの失業した若者も含まれる。」と語った。
デンマークのICPD25特別大使であるイブ・ピーターセン氏は、「この先ICPD50周年会議などというものは開催されないだろう。といのも、世界の女性と女児は自らの権利と選択肢を与えられるのを十分待ったので、もう待ちきれないからだ。」と指摘したうえで、「2030年を見据えて、私たちは今、ナイロビ・サミットでの公約を、責任をもって実行すべき10年に足を踏み込んだのです。」と語った。
「女性と女児こそが自らの身体の真の所有者であるべきだ。」デンマークのラスマス・プレーン開発協力相は、女性・女児へのさらなる支援を呼びかけ、「彼女らは持続可能な開発の中心に立つ存在だ。」と述べた。
国連のアミナ・モハマド副事務総長も同じ見方を示した。「数多くの女性や女児が、約束が果たされるのを待っています。彼女たちはあまりにも長く待ち続けています。」そのうえで事務次長は、「SDGsは、女性や若者が自らの体や命をコントロールでき、暴力のない生活を送ることができなければ、達成できません。」と付け加えた。
ケニア外務省首席秘書官であるカマウ・マチャリア大使は、「途上国として、低開発がもたらす代償、つまり、若すぎる結婚や、望まない妊娠をしたあげく危険な方法で中絶し、母親が命を落とし、孤児が生まれる、また、ジェンダー暴力により家庭が崩壊する等の問題に対処するコストが2640億という膨大な額になっているのです。」
マチャリア大使は、「前進している国々は、自ら資金を動員してグローバル・アジェンダの枠組みの中で独自のプロジェクトを遂行しています。」と述べ、途上国はドナーからの支援を待っているのではなく、自ら資金を動員して問題に取り組むべきだと主張した。(原文へ)
INPS Japan
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