【アブダビWAM】
アラブ首長国連邦(UAE)の8月8日付英字日刊紙は、イスラエル軍による大規模な破壊が進行する中、そうでなくても絶望的な貧困状況に追い詰められていたガザ地区のパレスチナ人が疫病の犠牲になる危険性が大いに高まっているとして、国際社会に対してガザ地区への支援の手を差し伸べるよう強く訴えた。また同紙は、疫病発生の危機が高まっていることから、ガザ地区の復興プロセスはより一層困難になるだろうと報じた。
「現在は真夏にあたり、ガザ地区全人口の4分の1が国内難民となる状況に置かれているなかで、イスラエル軍による組織的なインフラ破壊により、元々脆弱な状態にあった電力、上下水道網が寸断されてしまっている。この状況が続けば、疫病が発生するのは時間の問題だ。」とナショナル紙が論説の中で報じた。
また同紙は、「今回の紛争については依然として政治解決の糸口が見つかっておらず、ベンヤミン・ネタニヤフ首相がハマスからのロケット攻撃があればいつでもガザ地区への攻撃を再開すると警告しているなか、国連開発計画(UNDP)ガザ事務所が、各国が次回のイスラエル軍による攻撃で破壊されるリスクが高いとしてインフラ再建への支援を躊躇している現状を明らかにした。」と報じた。
また同紙は、2008年~2009年にかけて勃発した前回のイスラエル軍によるガザ侵攻作戦(「鋳造された鉛」)の際に破壊された施設の中にも未だに修復されていないものがあると報じた。
「イスラエル政府は、ガザ地区の学校や病院を再建するための資材として搬入を許可した建設資材がハマスの地下トンネルに流用されていると主張している。これに対して国連は、ガザ地区への搬入物資は厳しく監視されているとしてイスラエルの主張を強く否定するとともに、ハマスのトンネル資材はエジプト国境から密輸されたものだろうとの見方を示している。それにも関わらず、イスラエル当局がガザ地区への物資搬入規制を緩和する可能性は低い。
また同紙は、人道問題担当国連事務次長補のキュンワ・カン(康京和)氏による以下の警告を引用した。「ガザ地区では、電力不足が病院の機能に深刻な影響を及ぼすとともに、食料生産能力を低下させ、さらには上下水道の流れを停滞させる悪循環を引き起こしています。事実、下水が農作地に溢れだす事態が発生しており、このままでは飲料水を汚染し、疫病が発生する可能性も高まっています。」
「今回のガザ地区の人道的な危機に際して、UAEは最も早期に支援の手を差し伸べた国々の一つであるが、こうした人道支援は湾岸諸国のみならず国際社会全体がもっと積極的に担うべき責任である。米国はイスラエルによる空爆・砲撃を抑え込む努力を殆ど行わなかった。しかし、既に悲惨な状況に置かれている一般のガザ地区住民を人道危機に陥らせる事態を防ぐために、米国はガザ地区への必要物資の搬入をイスラエル軍に緩和させるうえでより一層の努力を傾注できるはずである。」とナショナル紙は結論付けた。(原文へ)
翻訳=IPS Japan
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