【ニューデリーIPS=ランジット・デブラジ】
インド政府が設立した高官レベルの委員会は、先物取引が食糧価格高騰の引き金になっているかどうかを明確にしようとせず、この問題についての深刻な対立を示している。
委員のほとんどはシン首相の新自由主義政策を支持している。21日に発表された中間報告書では「先物取引が農産物価格の変動を助長すると断言はできない。適切に機能する先物市場は中長期的に価格安定をもたらす可能性がある」とされた。
委員会の結論がどうであれ、農民組織や食糧確保の専門家は、野放しの貿易と投機が農業国インドで主要穀物価格を急騰させていると考えている。委員会の中間報告を受けて、農民の権利の活動家であるK.B.チョウドリー氏は「農民ではなく輸出入業者や企業ばかりが利益を得る新自由主義政策を転換して、先物取引を禁止すべきだ」と述べた。
インドは2007~08年に記録的な穀物生産高を達成したが、その価格は際限なく跳ね上がり、インド国民の大半には手が届かなくなった。「それでも政府は新自由主義経済全体を見直すことなく、断片的な対策しか行っていない」とチョウドリー氏はいう。
国際的に著名な食糧確保の専門家であるV.シバ氏も「食糧価格の歯止めなき高騰は政府の経済政策が招いたもの」とする。シバ氏によると、開発のための農業科学技術国際評価(IAASTD)の新たな報告書は、東南アジア・太平洋地域で農村の貧困、飢餓と栄養不良、農村と都市の格差などが広がっていると指摘しており、インドもこれに当てはまる。
インドの食糧価格高騰は、世界貿易機関(WTO)の圧力によりインドの食糧経済が世界貿易に組み込まれたせいだとシバ氏はみている。さらに米国との二国間農業協定によりインドの農業が企業化したことも要因となっている。
バイオ燃料の生産、輸出用穀物の大規模生産も、国内で消費される食糧を減らしている。チョウドリー氏は「企業の圧力を受けているために政府は先物取引を禁止しようとしない」という。インドの食糧価格高騰問題について報告する。(原文へ)
翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩