【東京IDN=浅霧勝浩】
「日本は米国との緊密で信頼の置ける同盟関係を損なうことなく、『核なき世界』の実現を積極的に後押ししていく役割を果たすべきだ」と、公明党の山口那津男代表は語る。公明党は日本の第三党。1964年の結党以来、平和をより強固なものにしていくため、また社会的弱者を守るための取り組みを率先して進めてきた。
また、山口代表は「日本には30年以上前から、米国との緊密で“不可欠な”同盟関係を維持しながら、中国への理解も深めてきたという背景がある。日本は、米中間の信頼を醸成するための橋渡し役となれる可能性を秘めている」と主張する。要旨は次の通り。
IDN:「核なき世界」の展望について、どのように考えているか。
山口那津男代表:
米国の呼び掛けにより、核兵器保有国の間で、核兵器廃絶に向けた機運が高まっているのを目の当たりにでき嬉しく思う。公明党は一貫して核兵器の廃絶を訴えてきた。しかし、冷戦のさなか、もしくは冷戦終結直後に、特に核兵器保有国の間で合意が形成されることはなかった。
核兵器廃絶に向けた機運が高まっている今こそ、日本は唯一の被爆国としてこの機会をとらえ、(1)核兵器保有国の核兵器の数をゼロにしていく核軍縮の推進(2)核拡散の防止(3)日本の技術提供による核エネルギーの平和利用の促進――に向けた具体的な取り組みに着手し、積極的な役割を果たしていかなければならない。日本には建設的な役割を果たす権利があり責務もある。こうした取り組みを進めることこそ日本にとって最もふさわしい行為だと信じている。公明党は、こうした取り組みの先頭に立っていきたい。
IDN:核廃絶について日本は、国家の安全保障上の懸念と「核なき世界」を求める願望との間で板挟みになっているように見える。
山口代表:
日本はこれまで、国家の安全保障の考え方の基礎を、核抑止力も視野に入れている日米安全保障条約に置いてきた。従来の考え方を見直すには、慎重な配慮が求められるだろう。(見直しが)他国との関係にどういう影響を与えるのか考慮する必要もある。同時に、核抑止論が今後も有力な考え方であり続けるのかどうか、しっかりと見極めていくことが重要だと思う。
個人の意見としては、核抑止力や、国家間関係に悪影響を及ぼすような安全保障政策に頼るのではなく、文化的・経済的側面も含む幅広い協力関係に基づいた2国間関係を積み上げていけば、やがては大多数の国が集まる多国間関係を築くことができると考えている。そうした信頼の置ける、かつ、確かな基礎を持つ多国間関係があってはじめて、これまでの国家の安全保障の考え方を見直すことができるし、安全保障上の懸念に配慮した既存の凝り固まった考え方の転換さえも促していくことができるのではないだろうか。
『憲法、国連決議、日米安保を基礎にアジアの安定に貢献』
IDN:日本と北東アジア諸国との関係、また米国との関係を考えたとき、日本に期待されている役割は何か。
山口代表:
まず、日米関係は日本にとって最も基本的で、かつ最も重要な外交関係であり、今後もそれは変わらないだろう。
この日米の信頼の置ける関係に疑問を投げ掛けるようなことがあれば、日米関係だけでなく、アジアも含む国際関係全体に不安定な要素をもたらしかねない。だからこそ、日米関係を維持し、日米相互の信頼をさらに深めていくことが重要だと思う。
日本が、将来進むべき道について考えるとき、日本は憲法と国連決議、日米安全保障条約の三つをよりどころとすべきだろう。これら三つの規範を基礎に、中国や韓国のようなアジアで台頭している近隣諸国と協力しながら、アジアの安定と繁栄のために貢献していくべきだ。
『日中の良好な関係は国際社会に良い影響を与える』
IDN:中国については。
山口代表:
1972年に日中国交正常化が実現する前から、公明党は日中の関係改善に大きな役割を果たしてきた。公明党は今も、日中の信頼関係をさらに深めていこうと努めているし、党と中国との関係も非常に大切にしている。今後も、日中関係がより緊密で、安定したものになるように努力していくべきだと考えている。日中の良好な関係は、アジアと国際社会によい影響を与えていくことになるはずだ。
また、周知のように、米中関係がかなり重要になってきている。米中関係は今後、経済的な理由ばかりでなく、政治的にも、また安全保障上も、さらに重要になっていくと思う。ここで日本は、米国と中国との関係を橋渡しするという重要な役割を果たすことができるのではないか。政治や経済、文化、そして安全保障など、あらゆる側面から信頼を基礎とした緊密な関係を育てていくことは、重大な政治課題であり、公明党はこうした観点から、主導的な役割を果たしていきたい。
『公明党は地雷除去に日本の技術を活用する道を開いた』
IDN:アフガニスタンについて、日本の役割をどう考えるか。
山口代表:
私は先ほど、日本は三つの規範を基礎に行動すべきだと述べた。日本は今のところ、三つの規範のすべてに慎重に配慮した上で、インド洋で給油活動を行うという形で国際社会に協力している。
日本が武力行使に参加することは憲法で禁じられているが、給油活動を行うことで、インド洋でテロリストの移動や武器の移転、麻薬の密輸などを阻止するために必要な役割を担うことができた。インド洋での給油活動は、今後も継続すべきだと思う。
私は2004年にアフガニスタンの視察に行った。地雷除去機の運用試験に立ち会うためだった。地雷除去機は日本企業が開発したものだ。公明党は、紛争が終結した地域での地雷除去活動を支援するため、地雷除去機の開発の必要性を強く訴えてきた。
公明党は、紛争後の支援として最初に行われる地雷除去活動に、日本の技術を活用できるようにするための道を切り開いた党だ。日本は、カンボジアのように木が多く、湿った地域でも使える地雷除去機も開発している。
私はカンボジアにも視察に行き、この地雷除去機の運用試験に立ち会っている。今ではこの地雷除去機の運用可能性も証明され、アフリカやラテンアメリカなどの地域でも使われるようになっている。
カンボジアでは地雷除去がかなり進み、住宅地や農地が復興されていった。ニカラグアにも日本の地雷除去機を3台提供し、対人地雷が敷設されていた地帯から地雷を取り除いた後、そこにバナナやオレンジの木を植えた。その結果、農家がそこで育てた作物を輸出し、お金が稼げるようになった。
地雷除去支援における日本の貢献は高く評価されている。日本政府は現在、内戦が終わり、地雷除去と難民の再定住支援が求められているスリランカで行う支援の計画を立てているところだ。
日本は、紛争終結後の地域で平和を創出し、人間の安全保障を確保するため、援助が必要な初期の段階から復興の最終段階に至るまで、さまざまな支援を行えるはずだ。(原文へ)
翻訳=IPS Japan浅霧勝浩
This article was produced as a part of the joint media project between Inter Press Service(IPS) and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.
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