ニュースアフリカ開発支援における日本の重要な役割

アフリカ開発支援における日本の重要な役割

【IPSコラム=緒方貞子】

今アフリカは、開発支援の主要なフロンティアとなっている。最近のアフリカ大陸の経済的、民主的、社会的な前進を確固たるものとし、さらに強化していくことには、大きなチャンスとともに課題もある。

今年日本はアフリカの検討課題を策定する上で重要な意味を持つ2つのイベントを主催する。5月28~30日に開催されるアフリカ開発会議(TICAD)と、その後7月に行われアフリカ大陸の問題が注目されるG8サミットである。

最近まで、日本の多くの領域にとってアフリカは常に遠い問題だと思われていたが、TICADプロセスにより、アフリカ大陸が日本政府の外交政策の主流にしっかりと組み込まれた。簡単にいえば、アフリカは急速に日本にとって重要性をもつ存在となっている。

Sadako Ogata

 
5月のTICAD会議は、アフリカに関する一連の会議の中で4回目のものであり、これらの会議はアフリカ大陸への国際的な対応と措置の立案を支援してきた。第1回TICAD会議は1993年に開催され、もっぱら経済問題に集中した。その後は、紛争防止、平和の構築、住民と地域社会のための「人間の安全保障」、さらに最近では気候変動や環境にも取り組んでいる。

2000年に日本で開催された沖縄G8サミットの際に、アフリカの4カ国が初めて招待され、ようやくアフリカ自らがTICADプロセスに直接かかわることになった。対照的に、今回のTICAD会議にはアフリカから40人の国家および政府の首脳が出席する予定となっている。

5月の会議は進展状況を見直すとともに、今後の課題に取り掛かる機会となる。経済的には、アフリカは近年、5%という堅調な年間成長率を享受しており、2008年の主要目標のひとつはこの発展を加速することになる。その一環として、農業および工業の拡大を促進する、全国的、地域的、および大陸間を結ぶ道路網など、大規模なインフラ整備プロジェクト支援が検討されるだろう。

一方、私が理事長を務める独立行政法人国際協力機構(JICA)は、開発支援には十分に統合された取り組みが不可欠だと考えている。したがって、経済的拡大を支援しながらも、草の根の活動、「人間の安全保障」という概念にもさらに大きな関心を払っており、生活に直接的にかかわる医療や教育などの分野で地域社会と個人がより大きな役割を果たすべきだということを重視している。

日本国内の発展が、アフリカの開発支援に影響するのはもちろんである。JICA独自のアフリカ大陸向けの事業予算は、2008年度に15%増額し、およそ2億6,000万ドルとなった。これは心強いが、政府開発援助(ODA)が同時期に減少しているのが気になる。

日本は世界第2位の経済大国であり続けながらも、政府は国内で財政上の大きな制約に直面しており、この困難な環境の中で私たちは開発支援の減少傾向を食い止めていかなければならない。2007年のODAは76億9,000万ドルだった。

この予算を増やすことは難しいだろうが、増やしてほしいというにとどまらず、増やすべきだと主張する。

日本のODA制度全体の複数年点検の一環として、JICAと国際協力銀行(JBIC)の長期低利貸付部門が年内に合併する。この合併はアフリカにとって朗報であり、おそらくまず、経済基盤を拡大するために長期低利貸付を求めるアフリカ諸国が、そうした貸付をより容易に迅速に得られるようになるという効果を上げると思われる。

アフリカ諸国はココアやコーヒーの栽培だけにとどまらず、科学、情報技術の専門知識、工業に進出し、発展させていきたいと考えている。現代社会では国が農業だけに頼っていては生活水準を向上させられず、新たな収益源となる商品も生産していかなければならない。

TICADの代表者たちはふたつの比較的最近の重大局面についても検証する予定である。

ここ数カ月、一連の要因による世界規模の食糧価格高騰が、政治不安、栄養不良の増加、貧困を引き起こしている。コートジボワール、カメルーン、エジプト、モーリタニア、モザンビークおよびその他のアフリカ諸国では、暴動や抗議運動が起きている。

数万人のアフリカの人々がすでに十分な食料を得られていない状況であり、短期的にはアフリカの苦しみは続くだろう。食糧価格を下げるための一連の緊急支援機構が必要である。長期的には、たとえば10年を考えると、生産方法の改善と民間への投資により、アフリカは農業において莫大な利益を上げることも可能である。たとえばJICAは現在、ネリカと呼ばれる新しい品種の米の開発に関与していて、ネリカ米は特にアフリカ大陸に適したものであり、収穫量を大幅に高めると思われる。

気候変動については、おそらくアフリカが直面している危機の中でもっとも予想のつかないものである。

開発の専門家は長い間、教育、健康、紛争後の復興に携わってきたが、地球温暖化、海水面の上昇、その他の関連する現象の長期的影響は、まったく新たな課題となっている。

アフリカは大きく前進し始めている。世界の他の国々に追い付くための「時間との競走」と表現されたレースで、アフリカはその差を縮め始めたものの、すべきことはまだ山積している。2008年に実現しつつある進展から、アフリカと日本の双方が恩恵を得られることを期待する。相互依存の時代である今日、日本を含め、どんな国も一国だけで繁栄はできない。(原文へ

翻訳=IPS Japan
 

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