地域アジア・太平洋日本の援助機関、中国、韓国との絆を強める

日本の援助機関、中国、韓国との絆を強める

【東京IDN=特派員】

国際協力機構(JICA)は、緒方貞子理事長による4日間にわたる中国、韓国訪問を受けて中韓両国との2国間関係及び両国の主要機関との地球規模の開発協力関係強化に乗り出した。

日本政府は今回の緒方理事長による中国訪問から30年遡る1980年4月、中国に対する初の円借款を実施し、今日までに総計3兆6千億円(約400億ドル)の援助を実施してきた。

日本の対中国援助は当初は鉄道、港湾、発電所などの中国国内におけるインフラ整備に主眼が置かれたものだったが、後に環境保全を促進する援助も実施された。

 しかし日本が中国に対して水質・大気公害管理、気候変動、植林、下水処理、環境教育などのプロジェクトを通じた援助を継続する一方で、中国は国際経済において大きな役割を果たす存在へと成長した。

「従って日中両国は、開発途上国への支援を念頭に協力関係を緊密にしているのです。」と、緒方理事長は、9月3日に上海国際問題研究院(SIIS)で開催された講演会において同研究院の研究者や大学院生に語りかけた。

これは緒方理事長が同研究院で行った、「グローバル化時代のアジアと日中関係の展望」と題する講演会での発言である。

緒方理事長は、李克強国務院常務副総理(第一副首相)が2009年12月に面談した際に、緒方氏に対して、後発開発途上国(LDCs)に対する支援こそが「日中協力における最も重要な挑戦の一つです。」と語ったエピソードを紹介した。

緒方理事長は、その後JICAと中国輸出入銀行は、2010年3月に共同ワークショップを開催し、評価手法や気候変動対策などの重点課題について情報の共有、意見交換を行ったことを披露した。

JICAは中国商務部(MOFCOM)対外援助司(日本の庁に当たる)との協議を開始しており、同司職員を対象とした研修プログラムをホストする予定である。

「私たちはまた、アフリカにおける農業支援能力を高める目的で、日中両国の農業専門家間の会合を開催していく予定です。」と緒方理事長は語った。

また緒方理事長は「私は研究及び政策の分野、とりわけ『包括的で』ダイナミックな経済開発を確保する挑戦に関する分野についてSIISとJICA間の協力関係を一層緊密なものとしていきたい。」と付加えた。

緒方理事長は、上海地域が近年経験した2つの重要な分野(①現在も続く急激な都市化を遂げる地域における環境保護と特に都市部と②農村部の間で拡大を続ける貧富の格差)に関するSIISの経験について特に強い関心を示した。

緒方理事長は、中国訪問前に韓国のソウルにおいて韓国国際協力団(KOICA)のパク・デ・ウォン総裁、韓国輸出入銀行のキム・ドンス総裁、ハン・スンス元首相、その他政府、学術関係者と会談した。

JICAとKOICAは初の日韓協調融資となるモザンビークの道路事業案件について間もなく発表する見込みだが、現在ベトナムにおける案件に関しても協調融資の可能性を協議している。

また10月には中国輸出入銀行も加えた3者会談が予定されている。

KOICAのパク・デ・ウォン総裁は、ラオス、カンボジアなどのアジア諸国において共同プロジェクトを実施していくための年次定期協議の開催を提案した。具体的な日程は事務レベル協議を経て1年以内に決定する予定である。また両者は、米国ブルッキングス研究所と三者共同で行っている開発援助についての研究の成果を、国際社会に向けて広く提示していくことで合意した。

KOICAは、JICAの設立目標と類似した、途上国に対して技術・財政支援を行うことを目的に1991年に設立された。

緒方理事長は、韓国滞在期間中に、KOICAがJICA地球ひろば(JICAの活動紹介や開発協力活動に関するセミナーや広報活動を行う拠点)を参考に最近開設した「地球村体験館」を訪問した。

パク総裁はKOICAが中国にも日韓が持つ援助機関に類似したものを作ってはどうかと提案したことを披露した。

2010年10月1日は「新生JICA」が誕生して2周年の節目となる。新生JICAのもとで、それまで別々の機関が実施していた3つの援助形態(技術協力、譲許的貸付/ODAローン、無償資金援助)は一元的に運営管理されることとなった。

緒方理事長によれば、新生JICAの下での援助の一元化によって、日本は開発途上国に暮らす人々のニーズに対応した高品質の国際協力を実施することが可能となった。

緒方氏は、元国連難民高等弁務官である。

翻訳=IPS Japan浅霧勝浩

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