ニュース|米国|ゲスト労働者に奴隷のような扱い

|米国|ゲスト労働者に奴隷のような扱い

【ワシントンIPS=エリ・クリフトン】

3月12日ワシントンで発表された報告書によると、米国の所謂ゲスト労働者は、仕事斡旋業者に不動産証書を渡すことを強要されたり、雇用主にパスポートやビザなどを取り上げられ捕囚状態に置かれたり、基本的な生活/保健レベルに満たない扱いを受けているという。 

南部貧困法律センター(Southern Poverty Law Center:SPLC)は、「奴隷状態:米国のゲスト労働者プログラム」と題された報告書の中で、米労働省が管理するH-2ゲスト労働者ビザは、母国および米国内で移民労働者を搾取するシステムを作り上げた」と述べている。

同報告書の著者でSPLCの移民正義プロジェクトのメアリー・バウアー部長は、「議会は滅茶苦茶な移民制度の改革を行うべきだが、それを広大な新ゲスト労働者プログラムに頼ってはいけない。現行プログラムの実態は恥じ入るばかりであり、労働者の権利保護は殆ど行われていない」と言う。 

48ページの同報告書は、H-2ビザで入国したゲスト労働者に対する虐待の詳細を明らかにしている。同ビザは、砂糖業界に外国人労働者使用を認めるため1943年に導入され、議会は1986年、適用を非農業労働者に拡大した。 

2005年には、H-2のゲスト労働者12万1000人が米人雇用主により“輸入”されている。(H-2Aの農業労働者は3万2000人。森林、海草加工、造園、建設その他非農業作業に従事するH-2B労働者は8万9000人) 

これら労働者に対する搾取は、母国にいた彼等が、米国内での高賃金、住宅購入の可能性を謳った宣伝にのった時点から始まる。 

これらの民間労働斡旋業者は、労働者に対し時に数千ドルに及ぶ金の支払いを要求する。多くの労働者は、この金を月20%という高利で金貸しから借りるのだ。 

また、労働斡旋業者は時として、労働契約を満了できないことを見越して労働者に家や車の譲渡証書を担保として残すことを要求する。 

H-2ビザを取得し米国に到着した時点で既に大きな負債を抱えている労働者は、約束された賃金が嘘であったことを知るのである。報告書によれば、例えば松植樹業界では、労働者の月収は1,000ドル以下という。 

米国内のゲスト労働者虐待は、雇用主が彼等のパスポート、社会保険カードを取り上げることから発生する。もし強制退去に直面した場合、これら書類は彼等にとって非常に重要となる。 

労働者達は、書類は、彼等が契約の途中で逃げ出すことを防ぐため取り上げられるのだと言う。 

SPLCは、これら書類の返還を拒み、労働者を不法労働者とするためパスポートを破り捨てたケースを報告している。 

不法労働者となれば、労働者は司法当局への訴えはできず、雇用主が当局に通報した場合、強制送還を避ける法的手段がなくなる。 

報告書は、雇用主は労働者に対する圧倒的力により、約束を裏切り、賃金を引き下げ、労働時間をごまかしていると述べている。 

酷使、虐待、不法な取り扱いに抗議した労働者は、暴力や強制送還をちらつかせるなどの“脅迫作戦”に会う。 

H-2ビザ雇用主による虐待に抗議し法的手続きを取る者に暴力が加えられるのは珍しくない。 

ゲスト労働者ヒューゴ・マーチン・レシノス・レシノスは、最低賃金および超過勤務規則違反を理由にExpress Forestry社に対する集団訴訟を起こし、自宅で数人の男から暴力を振るわれた。 

報告書は、ゲスト労働者を虐待から守る現行の連邦法および規則、またH-2ビザ制度により保証されているゲスト労働者の保護に関する連邦機関の強制執行力を強化すべきと提案している。 

SPLCは、議会はゲスト労働者に対し、司法システム/裁判所への意味あるアクセスを保証する必要があるとしている。 

報告書は、移民手続きは今後変更されるが、移民労働者の権利に対する保証条項を保護、強化する必要があると述べている。 

ニューヨーク移民連合で労働者権利支援を担当しているミラン・バット部長は、IPSのインタビューに応え、「経済格差は搾取の段階に来ていることから、今後の米国への移民流入は、国際的移動を考慮したより現実的な対処が必要」と語っている。 

米議会両院は非公開で包括的移民改正法案を議論しているが、SPLC報告書はそのような動きの中で公表された。 

殆どのアナリストは、同法案には現在国内に居住する不法労働者に市民権を認める何らの条項が盛り込まれると見ているが、投票は、早くても2008年11月の大統領選挙後になるだろう。 (原文へ

翻訳=IPS Japan浅霧勝浩 

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