【ニューヨークIPS=ミレラ・ザンサキ】
父親の育児休業について数十年の実績を持つスカンジナビア諸国には到底及ばないが、米国でも父親が育児休業をとり、母親が働き続けるケースが増えている。とはいえ、いくら稼ぐかで男性の価値が従来決まっていた米国の文化においては、伝統的に女性が果たすと見られてきた役割を担う父親に対する社会的偏見は依然根強い。
米国国勢調査局によると、15歳未満の子供の育児に専念する父親の数は2006年においておよそ15万9000人。しかし育児に専念する親の数が580万人とされていることから、依然大半が母親ということになる。
ニューヨークを本拠に仕事と家庭の問題に取り組む法的権利擁護団体A Better Balanceのスタッフ弁護士フォエーブ・トーブマン氏は「有給・無給各12週間の育児休業を認めている企業でさえ、書類上に終わっていることが多い。問題は、男性がそれだけの休業を取れると思っているかどうか、そして実際に多くの男性が育児休業を取っているかどうかだ」と指摘している。
Flex-Time Lawyers and Working Mothers Magazineの2008年の調査では、育児休業が設けられている場合休業を取った父親は62%であったが、今年の調査では83%に増加した。
ある概算によると米国の企業のうちおよそ13%しか有給育児休業を認めていないが、母親が働き、父親が育児を担当する専業主夫が増え続けているのも事実であるようだ。
権利擁護団体National Fatherhood Initiativeのローランド・ワレン会長は「今回の金融危機では、雇用削減の対象となる仕事の性格上、女性よりも男性に影響が多く及んでいる。好むと好まざるにより、子供と充実した時間を過ごしている男性が増えている」と述べている。
CareerBuilder.comの調査によれば、配偶者の収入が十分であれば仕事を辞めると答えた父親は37%に上る。また選択できるのであれば、給料が減っても子供と過ごす時間を増やしたいと38%が回答している。
この調査では、働く父親の24%が、子供との関係に仕事が悪影響を及ぼしていると感じていることが明らかとなった。仕事と家庭のバランスを図るために選択肢を設けている企業は増えているものの、働く父親の3分の1以上が、在宅勤務やワークシェアリングなど雇用主側の柔軟な制度の不足を指摘している。たとえ上司に理解があっても、友人やコミュニティに理解がない場合も多く見られる。
父親業に関するベストセラー作家で、男性の仕事と家庭の両立を助ける企業Fathers at Workの創始者アーミン・ブロット氏は、父親に優しい職場政策を支持することによって、仕事に満足し、長く企業に留まりかつ生産性の高い従業員を確保することができるということを企業は理解すべきだと説いている。
米国における男性の育児休業の問題について報告する。 (原文へ)
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