【ワシントンIPS=ジム・ローブ、アリ・ガリブ】
新聞・テレビを含む米主流メディアは、11月4日の米大統領選挙の報道に全精力を注ぎ、同日のイスラエルによるハマス攻撃に関する報道は極めて限られたものだった。
しかしこのイスラエルによる軍事行動は、エジプトの仲介により2008年6月19日に発効、以来およそ4カ月半にわたってほぼ維持されてきた停戦に致命的な打撃を与えたようである。
ハマスはこのイスラエル側の攻撃に報復して、翌5日イスラエル領に35発余のロケット弾を撃ち込み、イスラエルは過去17カ月間の対パレスチナ経済封鎖をさらに強化する事態となった。
「両者ともに停戦協定を完全に遵守していたわけではないものの、イスラエルによるこの襲撃が最大の協定違反だ」とサンフランシスコ大学のスティーヴン・ズーンズ教授は指摘する。「あの襲撃は大変大きな挑発であり、今から考えればハマスの停戦破棄を誘い出すことを意図したものであったと思う」と述べている。
12月27日にイスラエルがハマス支配のガザ地区空爆を開始した際には、とりわけテレビ・新聞のコメンテーターをはじめ米主要メディアは、停戦違反の責任について、イスラエル領に対するロケット・迫撃砲攻撃を継続し、12月19日に期限が切れる停戦協定の延長を拒否したハマス批判に終始した。
こうしたメディアの論評は、政府高官が米国内のネットワークおよびケーブルテレビのニュース番組に出演するなどイスラエル側の広報戦略に一致するものである。たとえば、イスラエルのリブニ外相はNBCの日曜日政治対談番組「ミート・ザ・プレス」に出演し、ハマス側の停戦違反を主張。11月4日のイスラエル側の攻撃には一切触れずに終わるとともに、番組にはその発言に反論するパレスチナ側のゲストの出演はなかった。
メディア監視団体FAIR(公正で正確な報道)の理事ピーター・ハート氏は「11月4日の襲撃は本質的に、主流メディアの集合的記憶にほとんど存在していない」と述べ、大統領選の報道で賑わうなかイスラエル側の襲撃に関する報道は限られるだろうことをイスラエルは承知していたかもしれないと指摘している。
米主流メディアにおけるイスラエル・ガザ攻撃報道の欠落について報告する。(原文へ)
翻訳/サマリ=IPS Japan浅霧勝浩