ニュース|メキシコ|移住は生物圏保護区への恵みか

|メキシコ|移住は生物圏保護区への恵みか

【シエラゴルダIPS=ディエゴ・セバージョス】

メキシコ・ケレタロ州シエラ・ゴルダ生物圏保護区の自然資源や生物多様性への環境負荷が、住民半数(約5万人)の米国への移住で低減している。38万4,000haに及ぶ保護区当局もこの事実を認めている。

ユネスコの世界生物圏保護区の認定も受けているこの保護区は、乾燥地帯から亜熱帯、低山岳地帯の生態系が広がり、多数の固有種が生息する。

住民は、自給的農業や一部商業で生計を立てているが、移住の増加に伴い、農業、放牧、伐採などの活動が減少した。しかし移住者からの家族への送金で、派手な新築の家や米国のナンバープレートを付けたトラックの増加など、地域の景観が変わったことも事実だ。

とりわけ26歳以下の若者をはじめとする移住は、昔からのことだが、調査によれば1990年代から急増している。保護区の住民の月収が平均240ドルであるのに対し、移住して米国の農場や建設現場で働けば1,000ドルから2,000ドルもの月収となる。

シエラ・ゴルダでは、保護区の価値を伝え、保全を教える環境教育を実施しており、およそ16,000人の中学生が環境教育授業を受けている。しかし、こうした取り組みも、若者の米国への移住を食い止めるに至っていない。大半は、米国の移民書類もないまま、人身売買業者に2,000~3,000ドル支払って国境を越える。

シエラ・ゴルダの移民問題は矛盾した状況にある。保護区の責任者マーサ・ルイス氏は「移民が止むことになれば、森林地帯に深刻な負荷がかかることになる」と述べ、「10年間のうちに、森林や重要な地区の所有者に補償金や奨励金を支払って、子どもたちが将来保護区を離れる必要を感じないようにしたいと考えている」という。

この4年間に当局は、政府や民間基金から、また国連開発計画(UNDP)を通じて地球環境ファシリティから支援を得て、環境保全活動に努めた土地所有者およそ215人に、1ha当たり年間18~27ドルを支払った。保護地区は連邦法と州法の下保護されているが、97%は個人やコミュニティの所有であり、保全・再生プログラムはすべて、そうした個人やコミュニティと合意され、策定されている。

NGOや国連機関はもとより、多国籍企業なども支援の手を差し伸べ始めたメキシコの生物圏保護区について報告する。

翻訳/サマリー=IPS Japan 

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