【アブダビWAM】
「元大統領が一般法廷で裁かれ在任中の業績について一般市民が判定を下すことを許されるというのは中東アラブ諸国では前代未聞のことである。」とアラブ首長首長国連邦(UAE)の日刊紙が報じた。
ガルフ・ニュースは「ムバラク氏の公開審問は開放的な経験である」と題した論説の中で、「30年にわたってエジプトを圧政的に支配してきた人物が法の裁きを受けるために出廷するのを目撃することは開放的な極めて痛快である。」と報じた。
「世界各地のアラブ人にとって、カイロの法廷に出廷したホスニ・ムバラク前大統領が格子越しに映し出される映像はショッキングであるとともに気分を高揚させる出来事であった。ムバラク前大統領は中東の権力構造の中枢に君臨してきた人物だけに、彼がかつて捏造の嫌疑をかけて政敵を裁いていったと同じ檻に覆われた被告席に出廷を余儀なくさせられる光景はトラウマにも似た複雑な印象を想起させるものであった。」と同紙は報じた。
「ムバラク前大統領と2人の息子は、かつて彼の政敵たちがそうしたように、自らにかけられた嫌疑を全て否定した。しかし少なくとも彼らは法廷に出廷させられ、一般民衆は彼らに対してかけられた嫌疑に関する様々な証拠について裁判での議論を目の当たりにしていくことになるのである。」と同紙は付加えた。
ムバラク裁判は現代アラブの指導者が完全な形で法定の裁きを受けた最初の事例である。ちなみにこれに最も近いケースがサダム・フセインの裁判だが、この場合フセインは2003年に米軍に捕えられ、裁判は米国が実効支配する当時のイラク政権との密接な相談の下に開設されたものであった。チュニジアのザイン・アル=アービディーン・ベンアリ前大統領も今年になって裁判にかけられ有罪を宣告されたが、同紙はサウジアラビアに亡命しているため事実上欠席裁判であった。
ガルフ・ニュースは、8月3日のカイロ法定からの映像は全アラブ世界に強烈なメッセージを発することとなったと強調した。
「そして今回の出来事はアラブ世界をより良きものとした。」と同紙は締めくくった。(原文へ)
翻訳=IPS Japan戸田千鶴