【アブダビWAM】
「リビアの反政府勢力支援に外国軍を派遣するのは重大な過ちとなるだろう。」とアラブ首長国連邦(UAE)の英字日刊紙「ガルフニュース」が報じた。
同紙は「カダフィ大佐は反乱軍の鎮圧を許されないだろう」と題した論説の中で、「たとえ人々が、カダフィ政権なきリビアの方が望ましいという点で意見が一致していたとしても、もしNATOが地上軍を投入すれば当初のミッション(リビア民間人の保護)に反して取り返しがつかない事態を招くこととなるだろう。リビアにおける闘争はリビア人自身によって勝ち取られることが重要だ。」と報じた。
内戦が勃発してほぼ2か月が経過するが、反カダフィ勢力であるリビア国民評議会を支援するNATO連合軍は、現在の戦術的な行き詰まりを打開すべく、地上軍の投入に傾きつつある。フランスと英国が主導するNATO連合軍は、当初の意図に反してカダフィ政権が頑強に抵抗を継続し崩壊の兆しも見せていないことに焦燥感を募らせている。
英国のジェームズ・キャメロン首相は4月21日、地上軍投入という選択は誤りであるとの見解を示したものの、ウィリアム・ヘイグ外相は反政府軍勢力の体制強化支援のために20名の軍事顧問団を派遣することを発表した。
「従って、反政府勢力には、厳密には戦闘戦力とは定義されないものの最終的に数百人の外国軍が支援に派遣される可能性が高い。」
例えば、欧州連合は、リビアにおける人道支援活動をエスコートするために地上軍を配備する意向を表明している。一方、カダフィ政権はそうした兵士を軍事作戦に従事している勢力として見做すと警告している。
「リビア情勢は近い将来反乱軍の勝利に終わる目算はない。しかし国際社会はカダフィ大佐に反乱軍の鎮圧を許さないだろう。」と同紙は見通しを述べた。
「従ってNATO同盟国は、リビアが事実上2つに分裂し、地上軍は展開できないものの反乱勢力を支援し続けるという事態に備える必要がある。」
「事態は混迷を極めているが、NATO同盟国はリビア介入が『ミッション・クリープ』に陥らないよう慎重に対処していくべきである。」とガルフニュースは報じた。
翻訳=IPS Japan戸田千鶴
*ミッション・クリープとは、終わりの見えない展開という意味。本来は米軍事用語で任務を遂行する上で目標設定が明確でなく当初対象としていた範囲を拡大したり、いつ終わるか見通しが立たないまま人や物の投入を続けていかなくてはならなくなった政策を意味し批判的に使われる言葉である。