【カトマンズIPS=マーティ・ローガン】
ネパール共産党毛沢東派(マオイスト)の10年余にわたる反政府武力闘争の中で、富裕層への恐喝や貧困層に対する強制的動員などマオイストの活動から逃れようと、25万人とも35万人とも言われる国内避難民が生まれた。
こうした避難民が今、故郷への帰還を考えている。しかしその道は険しい。帰還を支援する政府のプログラムもなく、家々は修理が必要であり、長年放置した畑はまず手当を要する。そしてなによりも、自治を享受している各地のマオイストとの交渉が必要、とこれまで数百人の国内避難民の定住を支援してきたNGO「インフォーマル・セクター・サービス・センター(INSEC)」のルペシュ・ネパール氏は指摘する。
国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)ネパール事務所のビョルン・ペテルソン氏によれば、地方司令官は(国内避難民を安全に帰還させるという)党の公約を承知しているが、現実には、人民裁判の必要性や強制労働を要求する等さまざまな条件を突きつけ、犯罪容疑者の殺害まで行なっている。
新政権は、議会財務委員会のメンバーであるDiliraj Khanal議員を通じて、7月の予算編成に先駆け国内避難民援助を計画していることを明らかにしている。Khanal議員は、IPSの取材に応えて、避難民それぞれの状況に応じて対応するとともに、救援・復興に当たる組織も、援助機関あるいは政府が状況に応じて主導することとなると述べている。
問題のひとつは、この10年間に治安部隊による拷問や強制失踪など重大な人権侵害によって避難民となった人々の扱いである。Khanal議員はそうした人々の人数も、帰還に必要な費用も明らかにしていない。
ペテルソン氏は、帰還民の現地登録や住宅の修理・農具の支給等物的支援を含む包括的な政策が必要と指摘する。さらに所有者が避難したあと再配分された土地を巡る紛争の解決も重要な問題となるだろう。
4月24日に国王が実権を返還し、民主化実現となったネパールの国内避難民問題について報告する。(原文へ)
翻訳/サマリー:IPS Japan