【アブダビWAM】
「暴力が続き、先が見えない現在のシリア情勢は憂慮すべき事態である。」とアラブ首長国連邦(UAE)の英字日刊紙は報じた。
ドバイに本拠を置く「ガルフ・ニュース」紙は、5月18日付の論説の中で、「内戦と秩序崩壊の様相が益々濃くなってきているシリア情勢については、明らかに再検討と対策が講じられなければならない。」と報じた。シリアでは、政府軍によって一般市民が即決で処刑されたという報道や、その前日には、同じく政府軍が葬儀の列に発砲し、20人を殺害したという報道が表面化している。また、政府軍が難民キャンプに向けて発砲し、子どもを含む少なくとも3名が死亡したという報道もなされている。
このような報道が伝える殺人、暴行、暴力は今日のシリアでは日常茶飯事であり、現政権が人命を全く意に介していない明白な証拠である。また、現政権が今日の危機を平和的に解決することに関心を持っていないことは明らかである。
バシャール・アル・アサド大統領は今年初めて応じたメディアのインタビューの中で、こうして報じられている政権側の行為について「でっちあげられたものだ」と断言するとともに、誤った情報を意図的に流しているとして西側諸国を非難した。またアサド大統領は、「我々は(西側が仕掛けている)情報戦には勝てない…しかし重要ことは現実の世界で勝利を収めることだ。シリア国民は、我が国の選挙を台無しにし、あらたな選挙をも妨害しようとしているテロリスト達の脅しを恐れてはいない。」と語った。
「アサド大統領が語っている世界は、どうも彼が作り出した空想の世界、ないしは幻覚の産物のようだ。現実に国民の大半が攻撃に晒されている状況の中で、どうやって選挙を実施し、その結果を正当なものとすることができるだろうか?驚くほど多い市民の死者数は、(アサド大統領が言うところの)単なる情報ではなく、政権の残忍性を示す証拠である。アサド大統領のコメントは、改めて現政権の基本認識を反映したものであり、そこからは平和的な解決を志向する姿勢は全く見られない。シリア危機の解決には、新たなアプローチを模索しなければならない。」とガルフ・ニュース紙は報じた。(原文へ)
翻訳=IPS Japan戸田千鶴
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