ニュース米移民法改正に新たなはずみ

米移民法改正に新たなはずみ

【シアトルIPS=ピーター・コンスタンチーニ】

1月4日、第110連邦議会が開会。民主党が両院を支配するなか、移民をめぐる議論で風向きが変化している。

議会開会を前にアリゾナ州の共和党ジョン・マケイン上院議員とマサチューセッツ州民主党エドワード・ケネディ上院議員をはじめとする超党派議員団が、新しい移民法案の策定を開始。不法滞在者が市民権を得るまでの滞在期間の短縮、臨時雇用制度などを策定中である。

 民主党指導部は包括的移民法改正を視野に入れ、最低賃金の引き上げを最初に実行するだろう。

米移民局弁護士協会は、米国土安全保障省傘下の移民税関執行局(ICE)が12月中旬にスイフト社の精肉工場で一斉捜査を行った見せしめ的摘発を批判。低賃金の未熟練労働者の需要は年間50万人であるのに、現行法では毎年5,000人にしか永住ビザを発給していないと指摘した。

IPSは2人の専門家に意見を聞いた。
 
 グアダラハラ大学のデュランド(Jorge Durand)博士は、プリンストン大学と共同でメキシコ移民プロジェクトを実施。過去20年間のメキシコ移民6,000人の追跡調査を行っている。

デュランド博士は、メキシコの労働者は従来アメリカとメキシコを頻繁に往来していたが、国境警備が厳しくなり、不法入国の金銭報酬と危険性が増し、アメリカに入国後は長く留まることになったと指摘。米政府は不法移民にビザを提供するなどの見返りを与えて帰国を促す策を講じたほうがよい。あと20年もすればメキシコ経済も堅調に転じ、人口増加に歯止めがかかって出国者が減少するだろう。アメリカの移民問題の中心は中国、バングラデシュ、アフリカ諸国に変わっていくだろうと述べた。

アメリカ唯一のナショナルセンター、 AFL-CIO (アメリカ労働総同盟・産業別組合会議)の移民労働者プログラム担当のアヴェンダノ(Ana Avendaňo)氏は、労働者と地域社会に利する「フェアな移民」が必要と指摘。移民には賃金や保障を与えずに働かせるなど、不正なシステムから利益を上げる雇用者を厳格に取り締まるべきだと述べた。

AFL-CIOは、移民に米国人労働者と同一の権利を認めない臨時雇用制度には反対し、他の労組、NGOと協力して議会でロビー活動を行っている。しかし、移民法関係者の意識も足並みが揃っていないという。

議会多数派を民主党が占めるなかで、風向きが変わった移民法改正議論ついて報告する。

翻訳/サマリー=IPS Japan 

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