【ブエノスアイレスIPS=マルセラ・バレンテ】
アルゼンチン北部のサンチアゴ・デルエステロ州で、小農に対する地主の嫌がらせに対抗して、新しい新聞が創刊された。
サンチアゴ・デルエステロ小農運動(MOCASE)が10月に創刊したこの新聞の題名は『El Ashupulitu』といい、先住民族のケチュア語で「地球に満たされて」を意味する。約4000部発行。MOCASEは約9000世帯の小農の権利擁護のために闘っている。
新聞では、水不足の問題や、土地からの追い出し、地主が派遣した民間警備業者・ヤクザ者や警察による不当逮捕などが報告されている。
非番の警官や武装した民間人は、農家に突然やってくる。そして、家人を殴ったり、物を盗んだり、農民たちを拘置所に引っ張っていったりするのである。
MOCASEのリーダーであるエンジェル・ストラパッソンによると、この数ヶ月間地主からの攻撃が激しく、すでに50人以上の小農が不当逮捕されているという。
しかし、小農運動による抗議活動が功を奏して、逮捕されていた人々はすでに釈放されている。それでもなお、運動関係者150人以上が、起訴されているか、逮捕状を発行されているという。
この背景にあるのは、大豆の大規模輸出を狙う地主たちの動きである。公的な統計によると、2002年から06年の間に、50万ヘクタール以上の森林が遺伝子組み換え大豆の生産のために農地に変えられた。
アルゼンチンの法律では、ある農地に20年以上住んでいるか、あるいは営農していた場合に、その土地の権利を主張できることになっている。地元の人権団体「法律・社会問題センター」によると、サンチアゴ・デルエステロ州の小農のうち実に73%が、すでに同じ土地で20年以上営農しているという。
しかし、小農たちを取り巻く環境は厳しい。3月から7月にかけて、アルゼンチン全土で農民たちがストライキや交通封鎖などを行った。彼らの要求は、大豆輸出にかかる税金の引き下げだ。交通は寸断され、食料危機が引き起こされた。しかし、主要なメディアはこの動きを支持している。MOCASEなどのように、地場での小規模農業を守りたい勢力にとっては逆風だ。
こうした流れを受けて、9月は地主らによる攻勢が激しい。MOCASEは、新聞が少なくとも地主らによる人権侵害に目を向けてくれれば、と願っている。
アルゼンチンの小農と地主の闘いについて報告する。(原文へ)
翻訳/サマリ=IPS Japan