【マナグアIPS=ホセ・アダン・シルヴァ】
中央アメリカ議会(PARLACEN)のブリジット・ブディエ・ブリアン議員の異議申し立てによりニカラグアで初めて行われた人種差別裁判で、同国沿岸地域に住む先住民族およびアフリカ系住民、特に女性に対する差別的扱いが明らかになった。
ブリアン議員のティーンエージャーの娘が白人の友達数人とディスコへ行き、一人だけ入場を拒否されたことが事件の発端となった。議員は調査を開始。首都マナグアのナイトクラブでも先住民族あるいはアフリカ系住民、特に女性が入場を拒否されている事実が明らかになったのだ。
ニカラグアカリビアン沿岸自治区大学(URACCAN)のアルタ・フーカー学長は、これは単にナイトクラブの問題ではないと言う。
URACCANの統計では、先住民族の人口は、ニカラグア総人口570万の10から12パーセントを占めるという。しかし、アフリカ系住民の数についてははっきりしない。
アフリカ系市民は英国の奴隷船で現在のニカラグア、ホンジュラスのカリブ海沿岸へ連れて来られた奴隷の子孫である。これら地域は、植民地時代には欧州列強の紛争が絶えなかった所で、スペインが支配する中央高原と太平洋側平地はスペイン語を話す白人と混血のメソティゾの居住地となった。そして、アフリカ人の子孫は、先住民族居住地のカリブ海沿岸地域で暮らすことになったのだ。
カリブ海沿岸地域は、ニカラグアの他の地域と異なり多様な言語、文化が残っている。フーカー学長は、「スペイン語を話すことが就職のための必須条件となっている。白人でスペイン語を話す太平洋岸地域の出身ならば、職はすぐに見つかり給料も高い」と語る。
社会学者で「ニカラグア大西洋沿岸の正義と人権センター」(CEJUDHCAN)のロティー・カニングハム所長は「雇用者は、大西洋側の大学よりもマナグアおよび中央地域の大学を出た女性を好んで採用する。銀行融資にも同様の差別がある」と語る。
公共機関が差別撤廃の努力を行っていない訳ではないが、「大西洋沿岸の人道・市民・自治権センター」(CEDEHCA)のミリアム・フーカー会長は「人種差別は国の組織に深く根付いている。国はカリブ海沿岸地域の投資、交通インフラ、生活インフラなどを蔑にしており、これが地域の社会/経済面に大きく影響している」と語る。
国連開発計画(UNDP)の2005年報告によれば、ニカラグアの貧困率は47パーセントであるのに対し、大西洋岸の2自治区の貧困率は79パーセントに達するという。
歴史的背景に負うところの大きいニカラグアの人種差別について報告する。(原文へ)
翻訳/サマリー=IPS Japan 浅霧勝浩