【マナグアIPS=ホセ・アダン・シルヴァ】
ニカラグアの議会は、10月23日、治療的流産を合法とする1893年の刑法第165条を廃止する法案を可決した。法案が大統領によって法制化されれば、治療的流産の手術を受ける者も施す者も4~8年の懲役刑を受けることになる。11月5日の大統領選を控え激化する選挙キャンペーンの最中に執り行われたこの決定に、医師、男女同権論者、活動家、外交官および保健相をも含む政府高官が一様に驚愕している。
治療的流産の非犯罪化運動を展開する「女性自立運動」のコーディネーター、フアナ・ヒメネス氏は、「女性の権利が中世の時代に逆戻りした」と述べている。
刑法は、治療的流産について、少なくとも医師3名の証明をもって母親の健康が危険な状態にあるまたはレイプによる妊娠であるために精神的苦痛を負う危険にある場合に妊娠の終了を手助けするものと定義していた。MAMによれば、ニカラグアでは年間800~1,000件の治療的流産が行われている。
ヒメネス氏は、10月初頭にカトリック教会および福音派教会の代表によって議会に提出された第165条の廃止を求める20万人の署名に言及し、「彼らは300万人以上のニカラグアの女性の命と引き換えに20万票を買った」と述べている。
ニカラグア産婦人科協会のアナ・マリア・ピサロ医師は、法律は「もっとも貧しい女性に対する犯罪であり、普遍的人権の侵害であり、憲法違反にほかならない」と述べている。
この法律により、ミレニアム開発目標のうちの2つの目標に掲げられている妊産婦と乳幼児の死亡率が増大することが懸念される。
国連のグリンスパン事務次長補をはじめ多くが、中絶はデリケートな問題であり、選挙戦の最中に議論すべきものではないとして、議会での議論の延期を求めていた。
ラテンアメリカ諸国医師会、国連諸機関、欧州連合、世界保健機構、全米保健機構、セーブ・ザ・チルドレン、国際女性保険連合、ヒューマン・ライツ・ウォッチなどからも抗議の声が上がっている治療的流産禁止の決定について報告する。(原文へ)
翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩