ニュース中東非大量破壊兵器地帯実現の見通しは未だ不透明

中東非大量破壊兵器地帯実現の見通しは未だ不透明

【ベルリンIDN=ラメシュ・ジャウラ

5年に一度の核不拡散条約(NPT)運用検討会議が4週間にわたって間もなく開催されるが、大量破壊兵器(WMD)その運搬手段を中東地域から廃絶するという目標は、依然として遠い夢のままだ。そして、2012年12月にヘルシンキで招集される予定だった「中東非核・非大量破壊兵器地帯化に関する会議」(中東会議)もまた然りである。

G7(カナダ、フランス、ドイツ、英国、イタリア、日本、米国)外相会合もまた、この中東会議構想の行く末に一条の光を見出すことはできなかった。G7外相会合は、6月7日・8日にドイツ南部のエルマウで開催されるG7首脳会会議に先立って開かれたものである。

G7外相らは、4月15日に発表した共同声明のなかで「G7は、ファシリテーター及び1995年中東決議の共同提案国(ロシア、英国、米国)によって現在行われている努力、特に地域国の間で5回も開催された協議を歓迎する。」としたうえで、「これらの努力に関わらず、中東会議がこれまで開催されていない事を遺憾に思う」と述べている。

ドイツ北部の港町リューベックで開催されたG7外相会合で出された共同声明は、さらに、「地域の関係国は、可及的速やかに中東会議開催の日付及びアジェンダについてコンセンサスに至るよう相互に活発に取り組まなければならない。私たちは、すべての参加国の利害が考慮された場合にのみ,本会議は意味あるプロセスに通ずることを強調する。」と述べている。

NPT運用検討会議で採択された1995年の中東決議は、「大量破壊兵器、すなわち、核兵器、化学兵器、生物兵器、並びに、それらの運搬手段を効果的に検証可能な形で中東から廃絶した地帯を創設すること」を呼びかけている。

NPTは1970年に発効し、190か国が加盟している。

中東における非大量破壊兵器地帯(WMDFZ)は、1990年にエジプトが初めて提案した。それは、中東非核兵器地帯(NWFZ)を創設すべきとの長年に及ぶ提案を基礎としたものである。並行して追求されることを意図したこれら2つの構想には広範な国際的支持が集まったが、実際の進展をどう評価するかは難しい。

実際、[2012年]11月23日、米国は同年12月が期限であった中東会議を延期するとの声明を発している。会議の日程は改めて設定されていない。会議の共同招集者らは、いつ会議を開くべきか、遅延の理由は何かといった点について、意見が食い違っている。

先の米国による声明は、延期の理由として「中東の政治状況」と、「中東会議に関して容認可能な条件について参加国間の合意がないこと」を挙げている。

一方ロシアは、2012年11月24日の声明で、会議に向けた準備は既に「かなりの段階」に達しており、(米国による)延期理由は、「『中東の全ての国家が会議参加を了承したわけではない』というものにすぎない」として、2013年4月よりも前に会議を開催すべきだと呼びかけた。

この発表の時点で、フィンランドの外交官で会議のファシリテーターであるヤッコ・ラーヤバ氏は、イスラエルの参加確約を取り付けていなかった。イランは[12年]11月7日に参加を発表したが、会議でイスラエルと関わり合いになるつもりはないとも述べていた。イランは、中東会議が12年12月には開催されないであろうことを見越して会議参加を発表したのではないかという識者もいた。

こうしたなか、エジプトは長らく待ち望まれていた中東会議の延期に抗議して、13年4月29日、ジュネーブで開かれていたNPT運用検討会議準備委員会会合をボイコットし、中東会議の日程をできるだけ早く決めることを要求した。

米国の「軍備管理協会」がファクトシートで指摘しているように、NPT条約加盟国は2010年のNPT運用検討会議で初めて、1995年運用検討会議中東決議の履行に向けた進展をもたらすための5つの実際的措置に合意することに成功した。

具体的には、①NPTの寄託国でかつ中東決議の提案者である米国・ロシア・英国が、潘基文国連事務総長と協力して、「中東非核兵器地帯の創設について議論する国際会議」を2012年に開催すること、②「中東非核兵器地帯を創設するための国際会議」のファシリテーターを任命すること、③同国際会議の主催国となる政府を選定すること等が合意された。NPT加盟国は、来る2015年運用検討会議でこれらの合意事項に関する履行状況について取り上げることになるだろう。しかし、G7外相会合共同声明が示唆するように、中東会議の開催日程が改めて見直される可能性は低い。

にもかかわらず、国連安保理常任理事国のメンバーでもあるフランス・英国・米国を含むG7の外相らは、「我々は、国際社会の安定を推進する形で、すべての人にとってより安全な世界を追求し、核兵器のない世界に向けた環境を醸成することにコミットしており、この目的を達成するために、不拡散が極めて重要であることを強調する。」と述べている。

さらに共同声明は、「大量破壊兵器及びその運搬手段の拡散防止は、それが国際社会の平和と安全に対する主要な脅威を与えるものであることから、最優先課題であり続けている。制御されていない通常兵器の拡散が世界のいくつかの地域の安定を弱体化させている事実は、G7 がこの分野においても行動を取るための強い理由である。」と述べている。

NPT発効から45年、そして広島・長崎への原爆投下と第二次世界大戦終結から70年となる2015年に開催される第9回NPT運用検討会議に関してG7は、「核軍縮」「不拡散」「原子力の平和利用」という「相互に補強し合うNPTの三本柱への無条件の支持」を「再確認」した。

G7の外相らはこう指摘する。「NPTは核不拡散体制の礎石であり、第6条に従った核軍縮と、原子力の平和利用を追求するうえでの根本的な土台である。NPTは、世界をより安全な場所にするための死活的で永続的な貢献をなしている。NPTは加盟国の人々に日々利益を与えている。」(原文へ

翻訳=IPS Japan

関連記事:

非核中東への努力を続けるエジプト

中東非核化会議へのいばらの道

脱核兵器への支持、高まる

最新情報

中央アジア地域会議(カザフスタン)

アジア太平洋女性連盟(FAWA)日本大会

2026年NPT運用検討会議第1回準備委員会 

パートナー

client-image
client-image
client-image
client-image
Toda Peace Institute
IPS Logo
The Nepali Times
London Post News
ATN

書籍紹介

client-image
client-image
seijikanojoken