地域アジア・太平洋北朝鮮、3回目の核実験で国連に反抗

北朝鮮、3回目の核実験で国連に反抗

【国連IPS=タリフ・ディーン

[ニューヨーク時間で]2月11日に3回目の核実験を行った北朝鮮は、国連安保理決議を無視し国際社会に反抗している、世界で最も頑強な国のひとつであるイスラエルのたどった道をそのまま歩もうとしている。 

中東のある外交官は、「イスラエルには米国という後ろ盾があり、北朝鮮は揺るぎなき盾としての中国からの保護を受けている」と匿名を条件に語った。

Photo: The writer addressing UN Open-ended working group on nuclear disarmament on May 2, 2016 in Geneva. Credit: Acronym Institute for Disarmament Diplomacy.
Photo: The writer addressing UN Open-ended working group on nuclear disarmament on May 2, 2016 in Geneva. Credit: Acronym Institute for Disarmament Diplomacy.

 それでもなお、北朝鮮の核開発を非難し制裁を強化した、2006年、2009年、2013年の3本の安保理決議は、拒否権を持つ常任理事国である中国の支持を受けている。 

しかし、海軍による封鎖や石油禁輸、中国からの経済援助の打ち切りなどのもっとも厳しい制裁は、これまでのところ安保理決議に盛り込まれていない。 

15の安保理理事国は12日に緊急の会合を開き、予想どおり、核実験を過去3本の決議への「重大な違反」と非難し、北朝鮮を「国際の平和と安全に対する明確な脅威」と断じる声明を発表した。 

安保理は、この1月に3本目の決議を採択した際、北朝鮮がさらなる核実験を行った場合には「重大な行動」をとるとの決意を表明していた。 

しかし、この「重大な行動」がとられるまでには、もう少し時間がかかりそうだ。 

安保理は12日、今後予定される、おそらくはトーンダウンした新決議において「適切な措置に関する作業を即時に開始するであろう」と主張した。 

現在、国連安保理の常任理事国(P5)である米国、英国、ロシア、フランス、中国が公的な核兵器国であり、インド、パキスタン、イスラエルが3つの非公式な核兵器国である。 

3つの非公式核兵器国は、5つの公式核兵器国とはちがい、核不拡散条約(NPT)への署名を拒否している。 

 核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)のレベッカ・ジョンソン共同代表は、IPSの取材に対して、「核抑止の論理と視点から言えば、北朝鮮の核実験は、(少なくとも)米国に対して、北朝鮮が核弾頭を製造し運搬する能力があることを示す意図でなされたものです。」と語った。 

またジョンソン氏は、「核実験を行ったり核兵器を配備したりする国家を『核兵器国』として扱うのは、まったくの逆効果です。包括的核実験禁止条約(CTBT)やNPTのような集団的安全保障に関わる世界的な条約に従わない国に地位を与えることは、核兵器と核実験を放棄し法律を遵守している180以上の大多数の国々を侮辱するようなものです。」と指摘したうえで、「NPT上の核兵器国であれ、北朝鮮のようにNPT外で核を持とうとする国であれ、核武装国の存在は世界にとって安全保障上の問題に他なりません。」と語った。 

国連が2009年に発行したCTBTに関する権威ある書物『終わらぬ任務』の著者であるジョンソン氏は、核兵器は、弱小国の指導者が自国の経済・社会政策の失敗から国民の目をそらせるために必要なものだと考えていることを、北朝鮮はあらためて示した、という。 

(正式には朝鮮民主主義人民共和国[DPRK]として知られる)北朝鮮が核武装化することを今回の実験は示しているのかという点について、ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)の核兵器プロジェクト、軍備管理・不拡散プログラムの研究員であるフィリップ・シェル氏は、この実験によって、北朝鮮がP5と同じような完全なる核兵器国になる瀬戸際にまで到達しているとは言えない、と語った。 

 しかし、3回の核実験(1回目は失敗に終わったと見られている)は、北朝鮮の核開発が確実に進展していることを示している、とシェル氏はいう。 

同時に、北朝鮮の最終目標は弾道ミサイルに搭載できる小型核弾頭の開発にあるとみられるが、これまでに実験した核装置の「兵器化」に実際に成功した証拠はまだない。 

またシェル氏は、北朝鮮が長距離ミサイル技術を現在保有しているかどうかは疑わしいと見ている。しかし、先般の多段ロケットの発射成功は、そうした技術習得が少しずつ進みつつあることを示唆している。 

シェル氏はまた、北朝鮮がNPTから脱退した事実を指摘した(一部の加盟国は脱退の事実を認めていないが)。さらに、北朝鮮は、CTBTには署名も批准もしていない。 

しかし、国連安保理決議1718、1874、2087は、北朝鮮に対して、さらなる核実験を行ったり、弾道ミサイル技術を含んだ発射を行ったりすることを禁じている。シェル氏によれば、これらの決議は事実上、法的拘束力があるものである。他方で、北朝鮮はこれらの国連安保理決議を差別的なものだとみている。 

ジョンソン氏は、P5がこれまで行ってきたすべての核実験に比べれば、自国が行った核実験など取るに足らないものだという北朝鮮の主張について、「もっともらしく聞こえるがナンセンスです。連続殺人犯やその他の犯罪者が行ってきた大量殺人と比べると、自分がしていることは、時々人を殺しているに過ぎないと主張する殺人者を許すことがあるでしょうか?もちろんそんなことはありません。」と語った。 

ジョンソン氏は、「それぞれの殺人行為が犯罪であるように、それぞれの核実験もまた、国際条約や国際法、また、世界の安全保障を確立するために集団的になされた合意に違反するものなのです。」と語った。 

「国際社会が核実験禁止条約を制定できていない段階で他国が行った犯罪行為(=核実験)が免罪になっているからといって、同じことを繰り返してよいという言い訳にはなりません。」とジョンソン氏は語った。(原文へ) 

翻訳=IPS Japan 
 
関連記事: 
核軍縮達成に向けたゲーム・チェンジ(レベッカ・ジョンソン核兵器廃絶国際キャンペーン〈ICAN〉副議長) 
|北東アジア|変化が望まれる対北朝鮮政策

最新情報

中央アジア地域会議(カザフスタン)

アジア太平洋女性連盟(FAWA)日本大会

2026年NPT運用検討会議第1回準備委員会 

パートナー

client-image
client-image
client-image
client-image
Toda Peace Institute
IPS Logo
The Nepali Times
London Post News
ATN

書籍紹介

client-image
client-image
seijikanojoken