地域アジア・太平洋軍事的緊張を高める北朝鮮の核実験

軍事的緊張を高める北朝鮮の核実験

【国連IDN=ロドニー・レイノルズ】

世界の二大核兵器国である米国とロシアの間の軍事的緊張が強まり続ける中、国連は「核兵器なき世界」という長期的な目標のひとつに強くコミットしてきた。

しかし、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)が1月6日に初の水爆実験を行ったと発表し、核の難題は以前にもまして厳しくなってきている。

193か国から成る国連総会は、軍備管理・軍縮関連の57本の決議案を採択して、昨12月に2015年の会期を閉じた。そのうち、23本が核兵器関連であった。

核爆発実験を行わないようすべての加盟国に求めたある決議には181か国が賛成したが、北朝鮮だけが反対していた。

潘基文国連事務総長は1月6日の声明で、北朝鮮が6日に発表した地下核実験に対する深い遺憾の意を示した。

「この実験は、そうした行為をやめるよう国際社会が一致して求めていたにも関わらず、数多くの安保理決議にふたたび違反するものです。また、核実験を否定する国際的規範にも強く違反するものです。」

潘事務総長は、「(北朝鮮の)この行為は地域の安全保障を著しく不安定化させるものであり、国際的な核不拡散の取組みを損なうものです。私はこの実験を明確に非難します。そして、北朝鮮に対して、さらなる核活動を停止し、検証可能な非核化に向けてその義務を果たすよう要求します。」と語った。

「私たちは、包括的核実験禁止条約機関準備委員会CTBTO)などの関連国際機関や関連主体との緊密な連携の下、状況を監視し査定しています。」と潘事務総長は付け加えた。

これらの決議に政治的影響力はあったのかというIDNからの質問に対して、NGO「リーチング・クリティカル・ウィル」のレイ・アチソン代表は、「多くの国連総会決議は繰り返しが多く、具体的な進展を求めるというよりも共通の立場の再確認を指向することが多い。」と語った。

アチソン氏によれば、国連総会は一方で、新機軸となる重要な文書をいくつか採択したという。

アチソン氏が指摘したのは、すべての国に対して開かれているがどの国も拒否権を持たない核軍縮に関する公開作業部会に138か国が賛成した決議だ。

「今年この作業部会に参加する国々は、核兵器を禁止する新たな法的文書の要素を検討するためにこの場を活用すべきです。この決議への支持は、この点に関する明確な進展を各国が求めている明白な表れです。」と、アチソン氏は語った。

アチソン氏はまた、核兵器の人道的影響、核兵器の禁止と廃絶に向けた法的ギャップを埋めることを約束した「人道の誓約(=オーストリアの誓約を改称)」、核兵器なき世界への倫理的要請の各決議もまた、単純過半数ではなく、国連加盟国の3分の2以上の支持を得て可決した点を指摘した。

軍縮・軍備管理に関連した国際プロセスを監視・分析しているアチソン氏は、大多数の国々が、核武装国及びその核同盟国に対してついに立ち上がり、核軍縮に向けた協調的な行動に打って出たように見えると語った。

しかし、反核活動家らが高まる核の脅威について警告する中、北朝鮮は「米国による核の脅威と威嚇に直面した我々の生存権を守り、朝鮮半島の安全を確保する自衛策として」水素爆弾を爆発させたと正当化した。

核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)のベアトリス・フィン事務局長は北朝鮮の核実験に関して、「核保有国間の緊張の高まりが、新たな軍拡競争への懸念を強めています。」と語った。

「しかし、冷戦期とは異なり今日では、(核軍拡競争に)関与する主体の数が増えていますし、政治的に不安定な地域も絡んできますので、核兵器が使用されたり偶発的な事故が起こるリスクは高まっています。」とフィン事務局長は語った。

ICANは6日に発した声明の中で、「核兵器は戦争の無責任な手段であり、その使用および保有は、国際社会全体が非難すべき無謀な行為である。」と述べた。

非難に続いて国際社会が行わなければならないのは、化学生物兵器の場合と同く、核兵器を国際的に禁止することである。

今年2月には、加盟国がジュネーブに集まって、核兵器に関するあらたな法の策定についての協議を行う予定だ。

「すべての責任ある国家は、核兵器に関するあらたな法を協議し、この大量破壊兵器を保有しそれに依存することに明確に反対の立場を採り、核兵器を明白に禁止していくべきです。」とフィン事務局長は語った。

アチソン氏は、先月採択された国連決議に言及して、「132か国が、核兵器なき世界に向けた倫理的要請に関する決議への賛成にあたって、核兵器は『集合的安全保障を損ない、核の惨禍のリスクを高め、国際的緊張を悪化させ、紛争をより危険なものにする』という見方で一致しました。」と指摘した。

A view of the General Assembly Hall as Deputy Secretary-General Jan Eliasson (shown on screens) addresses the opening of the 2015 Review Conference of the Parties to the Treaty on the Non-Proliferation of Nuclear Weapons (NPT). The Review Conference is taking place at UN headquarters from 27 April to 22 May 2015. Credit: UN Photo/Loey Felipe
A view of the General Assembly Hall as Deputy Secretary-General Jan Eliasson (shown on screens) addresses the opening of the 2015 Review Conference of the Parties to the Treaty on the Non-Proliferation of Nuclear Weapons (NPT). The Review Conference is taking place at UN headquarters from 27 April to 22 May 2015. Credit: UN Photo/Loey Felipe

核兵器の禁止・廃絶に向けた人道の誓約を反映した別の決議での投票では、139か国が全ての関連する利害関係者に対して「核兵器のもたらす容認しがたい人道的影響やそれに伴うリスクに鑑みて、核兵器を絶対悪とみなし、禁止し、廃絶する」ことを求めている。

「これは、国々が国連総会で採るべき重要な立場です。」とアチソン氏は付け加えた。(原文へ

翻訳=IPS Japan

This article was produced as a part of the joint media project between The Non-profit International Press Syndicate Group and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

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