【国連IPS=ナウリーン・ホセイン】
近年、核保有国の指導者たちは核不拡散に関する規範やルールを無視し、「力の誇示」という名の下に、より公然と核の威力を誇示するようになっている。
先週、米国とロシアは相次いで核兵器に関するメッセージを世界に発した。10月27日、ウラジーミル・プーチン大統領は、従来のミサイルよりもはるかに長時間飛行し、ミサイル防衛システムを回避できる新型の原子力推進ミサイルを公開した。専門家の中には、これは2022年2月のウクライナ侵攻以来、プーチンが依存してきたロシアの核戦力を誇示する意図があると指摘する者もいる。
その2日後の10月29日、ドナルド・トランプ大統領はソーシャルメディア上で「他国の核実験計画に対応するため、我が国も30年ぶりに核実験を再開するよう国防省に指示した」と発表した。この発表が習近平国家主席との会談直前に行われたことから、中国の核戦力拡大がワシントンでの核戦力近代化論を刺激しているとの見方も出ている。主要核保有国による核実験は数十年行われていないが、もし実施されれば三大国間関係を一層複雑化させるだろう。
このような展開は驚くべきことではない。人類は1945年以来、核兵器の危険性を認識してきたにもかかわらず、核保有国は依然として軍拡を続けている。2025年6月時点で、世界には約12,400発の核弾頭が存在し、その90%を米露両国が保有している。両国はいずれも5,000発を超える核弾頭を抱えている。ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)によれば、2024年には9つの核保有国すべてが既存の核兵器の近代化と新型ミサイルの取得を進めた。
地政学的緊張の高まりは不安と不安定を増大させ、各国は国家安全保障を最優先するようになっている。中国は600発の核弾頭を保有していると推定され、英国とフランスも戦略兵器や潜水艦の開発を進めている。北朝鮮は核弾頭増産のための核分裂性物質生産を加速させている。

今年、核兵器の脅威は多くの国際的出来事に影を落とした。5月にインドとパキスタンが空爆と報復攻撃を行った際、二つの核保有国がいかに戦争寸前まで近づくかを世界に示した。一方、ウクライナ戦争とロシアの脅威を受けて、フランスや英国など欧州諸国は抑止力を含む防衛投資を優先している。ドイツ、デンマーク、リトアニアなども核兵器の受け入れを検討している。
ジェームズ・マーティン不拡散研究センターのウィリアム・ポッター所長は、核保有国間に「信頼、尊重、共感が完全に欠如している。」と警鐘を鳴らし、「核兵器が増えれば偶発的使用の危険が高まる。だがさらに危険なのは、真剣な軍備管理・軍縮が進められない政治的環境そのものである。」とIPSの取材に対して語った。
核軍縮の枠組みも揺らいでいる。米露間の最後の軍備管理条約である新START条約は2026年2月に失効予定だが、両国は配備済み戦略核兵器の上限を自主的に1年間維持する意向を示していた。しかしこの約束も最近の動きで崩れつつある。
それでも、非拡散と軍縮を求める声は絶えない。被曝被害や放射能汚染の影響を訴える活動家たちは、国連を中心に世界各地で声を上げている。国連は1945年10月24日の創設以来、軍縮推進のために行動してきた。
その一方で、新たな核軍拡競争の懸念が高まっている。今年9月の「核兵器廃絶に関するハイレベル会合」で、アントニオ・グテーレス国連事務総長を代表して演説したラトレー事務局長官は、世界が「新たな軍拡競争に夢遊病のように突き進んでいる。」と警告した。サイバー空間など新領域を含むこの競争では、「誤算と誤認のリスクが増大している。」と述べた。
AI時代の核抑止をめぐる新たな課題
核保有国が兵器を近代化する中で、新技術がどのように関わるのかも重要な論点である。人工知能(AI)はその最前線にある。各国はAI開発に多大な資源を投じており、その安全なガバナンスに関する国際的合意はいまだ形成途上にある。
AIは急速に進化し、軍事分野にも導入が進んでいるが、従来の抑止理論では説明できない「不安定化効果」が懸念されていると、SIPRI大量破壊兵器プログラムのウィルフレッド・ワン所長は指摘する。彼によれば、AIの軍事利用をめぐる国際的協議が進められており、2024年の「責任ある軍事AIに関する第2回サミット(REAIM)」では、61カ国(米英仏やパキスタンを含む)が非拘束的な行動指針「ブループリント・フォー・アクション」に合意した。さらに、国連総会では「軍事領域におけるAIと国際平和・安全保障への影響」に関する決議79/239も採択された。
ワン氏は「これは軍縮の代替策ではないが、現状では信頼と信念を回復し、軍縮努力を再活性化する手がかりとなる」と語る。ただし、SIPRIの研究によれば、核兵器とAIの交差領域に関するガバナンス枠組みは存在しない。「核分野では、人間による最終判断の保持が主に議論されているが、AIの統合が意思決定環境に与える直接・間接の影響は十分に考慮されていない」とワン氏は説明する。「こうした側面を規制・技術両面から扱う枠組みがない限り、核保有国がAI統合を加速させ、戦略的安定性を脅かし、核使用のリスクを高める危険がある」と警告した。
包摂的対話と教育の重要性
AIガバナンスをめぐる現行のアプローチには、多様な利害関係者の参加と人間による介入能力の保持、安全措置によるエスカレーション防止などの共通点が見られる。核軍縮と不拡散の枠組みは、こうしたAIガバナンスの議論においても有用な示唆を与える可能性がある。政策立案者や非核保有国、専門家、民間セクターなど幅広い主体が対話に参加することが不可欠であり、たとえ核戦力構造への理解が限定的であっても、その関与を確保することが求められる。
核保有国・非保有国の双方は、核不拡散条約(NPT)、核兵器禁止条約(TPNW)、包括的核実験禁止条約(CTBT)など既存の反核合意への再コミットを図らねばならない。ポッター所長は、次世代が「創造的な手法で核の危険を減らす。」力を養えるよう、軍縮・不拡散教育の重要性を強調する。
国連は、総会や軍縮局(UN-ODA)を通じた対話と啓発活動により軍縮を前進させることができる。国連はまた、核戦争の影響を評価する独立科学者パネルと「非核戦争地帯専門家グループ」の設置も発表した。
ポッター氏は最後にこう警告する。「核軍縮は今ほど重要な時代はない。単に核兵器数を減らすだけでは不十分だ。『核使用の禁忌』が浸食され、核兵器使用の議論が常態化している今こそ、政策決定者は脅威に見合う大胆な行動を取るべきだ。」(原文へ)
This article is brought to you by IPS NORAM in collabolation with INPS Japan amd Soka Gakkai International, in consultative status with the UN’s Economic and Social Council (ECOSOC).
INPS Japan
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