ニュース2020年核不拡散条約運用討会議に備える

2020年核不拡散条約運用討会議に備える

【ベルリン/ニューヨークIDN=ラメシュ・ジャウラ】

核不拡散条約(NPT)の締約国は5年に1度集まり、3回の会期にわたってこの核軍縮体制の履行状況を検討する。2020年NPT運用検討会議に向けて、その準備委員会の第1回会合がウィーンで5月2日から12日に開催される。

国連事務局及び一部関連機関の本部としても機能しているこのオーストリアの首都は、非核世界を導く条約実現に向けた国連の取り組みにおいて、歴史的な役割を果たしてきた。2014年12月にはウィーンが、(2013年3月のオスロ会議、2014年2月のナヤリット会議に続く)第3回「核兵器の人道的影響に関する国際会議(非人道性会議)の舞台となり、「核兵器を絶対悪とし、禁止し廃絶する」ことを目指す「オーストリアの誓約」(「人道の誓約」としても知られる)への道を切り開いた。

UN General Assembly approves historic resolution on December 23, 2016. /ICAN
UN General Assembly approves historic resolution on December 23, 2016. /ICAN

国連総会は2016年12月23日、「核兵器を禁止しその完全廃絶につなげるような法的拘束力のある文書」を交渉するすべての加盟国に開かれた会議を今年3月と6・7月に開くことを決めた決議71/258という形で、この誓約を採択した。

2020年NPT運用検討会議第1回準備委員会は、世界全体で1万4900発の核兵器(米国科学者連盟[FAS]による)のうち合計で93%を保有する米国とロシアの間の緊張が高まる中で開かれようとしている。残りの核兵器は、英国・フランス・中国・インド・パキスタン・イスラエル・北朝鮮の7カ国が保有している。

北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)が次第に爆発力を強めながら核爆発装置の実験を継続するなか、北朝鮮以外の核武装国は、核軍縮ではなく「永久に大きな核戦力を保持し続ける意向のようだ。」と、FASは警告している。

オランダのヘンク・コル・ファンデルクワスト軍縮大使を議長とした今回の準備委員会の重要性は、核兵器を禁止しその完全廃絶を導く法的拘束力のある文書を交渉するための国連会議の第1会期から1カ月後に開催される事実によっても明らかだ。同会議の第2会期は約1カ月後の6月15日から7月7日にかけて開かれる。

今回の準備委員会が重要であるもう一つの理由は、2005年と同様に2015年にニューヨークで開かれた運用検討会議(2015年4月27日~5月22日)もまた、実質的な成果文書に関する合意に達することができなかったことだ。米国・英国・カナダの3つの締約国が、非締約国であるイスラエルが合意に反対したことを理由として、会議を頓挫させてしまった。

これら3か国は、中東非核兵器地帯創設への呼びかけを運用検討会議の最終文書で繰り返すべきだと主張したエジプトの要求が会議を失敗に終わらせたと非難した。

しかし、中東非核兵器地帯は、2010年運用検討会議でもすでに想定されていたものであった。同年の運用検討会議では、核軍縮、核不拡散、原子力の平和利用、中東問題(とりわけ中東に関する1995年決議の履行)の領域におけるフォローアップ(行動計画)について合意に達していた。

Map of the Middle East between Africa, Europe, and South Asia/ Public Domain
Map of the Middle East between Africa, Europe, and South Asia/ Public Domain

それ以前の2000年運用検討会議では、核軍縮について規定した第6条の履行に向けた体系的かつ漸進的な努力に関する実際的な措置などについて実質的内容を持った最終文書に合意していた。

NPTは1970年に発効し、1995年に無期限延長された。NPTは、グローバルな核不拡散体制の要であり、核軍縮追求の不可欠な基礎だとみなされている。

国連軍縮部(UNODA)のウェブサイトにあるように、NPTは、核兵器の拡散を防ぎ、核軍縮及び一般的かつ完全な軍縮の目標に向かって前進し、原子力の平和利用分野における協力を促進することを目的としたものだ。

NPTの下では、核兵器国は核兵器やその他の核爆発装置の保有または管理をいかなる受領国に対しても移譲せず、同兵器や装置の製造、取得、あるいは管理を行うよう非核兵器国を援助、奨励、あるいは勧誘しないことが義務づけられている。

一方、非核兵器国は、核兵器やその他の核爆発装置の移譲あるいは管理を受領しないこと、同兵器や装置の製造や取得を行わないこと、加えて、こうした点に関していかなる援助を求めたり受け取ったりしないことが義務づけられている。

非核兵器国はさらに、国際原子力機関(IAEA)による保障措置を受けることが義務付けられている。これは、核エネルギーが平和利用から核兵器やその他の核爆発装置に転用されることを阻止するために、領土内あるいはその管轄下にあるすべての平和のための原子力活動について実施する査察を含む検認制度である。

またNPTは、核エネルギーの平和的目的のための研究・生産・利用を行う権利を、すべての締約国に保証している。

NPT第6条は、核軍縮に関連した効果的措置を誠実に追求することを締約国に求めた、唯一の法的拘束力ある義務を含んでいる。

NPT第8条は、前文の目的および同条約の条項が実現されるようにするため、この条約の運用を検討するために5年毎に条約の締約国会議を招集すると規定している。

1995年、条約の無期限延長の決定に関連して、締約国は、運用検討プロセスを強化し、運用検討会議を5年に1度開催していくことに合意した。準備委員会は通常、運用検討会議に先立つ3年間の時点から3期にわたって毎年10日間の会合を開くことになっている。

2000年に締約国が決定したように、準備委員会は、最初の2期(=第1回と第2回準備委員会)においては、条約の全面履行とその普遍性を推進するための原則、目標および方途を検討することになっている。 

そして第3回準備委員会では、先の2回の会期における審議と結果を踏まえた上で、運用検討会議に対する勧告を含む合意報告書の作成に向け、全力を尽くすことを期待されている。

NPTの文脈の下では、2020年NPT運用検討会議に向けた3期にわたる準備委員会の中で、サイクルの最初にあたる第1回準備委員会に特に重要性があることには別の理由もある。

United Nations Office at Vienna/ Wikimedia Commons
United Nations Office at Vienna/ Wikimedia Commons

2010年運用検討会議の行動計画はごく部分的にしか履行されなかった。もっともひどかったのは軍縮関連の行動で、22項目の行動計画のうち実質的な前進を見たのは僅か5項目に過ぎなかった。2010年以前に合意を得た2000年運用検討会議では『13項目の実際的措置』の合意があったが、その履行状況もまた無残なものであった。」と指摘しているのは、婦人国際自由平和連盟(WILPF)の発行した『2017NPTブリーフィング・ブック』である。WILPFの軍縮関連事業は、レイ・アチソン氏が責任者を務め、「リーチング・クリティカル・ウィル」と呼ばれている。

2017NPTブリーフィング・ブックは、「NPTの外におけるより広範な状況はさらに危機的なものだ。」と警告し、現在の状況は「より多くのプレーヤーが参入し、さらなる資金が投入され、『殺戮力』が以前よりも増した新たな核軍拡競争」として特徴づけられると指摘している。

WILPFは「一方では、核軍縮に対する口先だけのコミットメント(そんなものがまだ存在すればの話だが)すら怪しくなっている。」と述べている。2009年4月にプラハでバラク・オバマ大統領が提示した「核兵器なき世界」のビジョンから遠く離れて、ドナルド・トランプ政権は核軍縮が「現実的な目標」であることに疑問を呈している。同政権が核爆発実験を再開するのではないかとの警戒感すらある。

ウラジーミル・プーチン大統領が支配するロシアとの緊張が強まり、北朝鮮が脅威を感じた場合米国への核使用も辞さないと威嚇するなかで進行する米政府の政策見直しで、あらたな核態勢が提示されるものと見られている。(原文へ

翻訳=INPS Japan

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